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■【寄稿】国内外の各分野で活躍されている獣医師(27)エキゾチック動物診療 鳥と小動物の病院 リトル・バード 小嶋篤史先生:後編

2026-03-26 16:32 掲載 | 前の記事 | 次の記事

写真8 小嶋篤史先生の著書『コンパニオンバードの病気百科』(誠文堂新光社)

写真9・写真10・写真11

写真12 『珍獣のお医者さん』第4巻(KADOKAWA)j

記事提供:動物医療発明研究会

インタビュアー・構成・執筆 伊藤 隆

動物医療発明研究会 広報部長/獣医師

(取材日:2026年1月16日)

前編はこちら

Q15.来院される主な鳥類(例:セキセイインコ、カナリア、ブンチョウ、インコ、オウム)の主な疾患を教えてください。

よく問われるのですが「主な疾患は無い」と回答しています。自著を開き「ここに書いてある病気は比較的よくみるかな」と話しています。

他のエキゾチック動物や犬、猫と違うところでしょうか。パターンでこなせる症例がほとんどありません。

食欲不振のウサギは大抵は臼歯が伸びてるか胃のうっ滞と判断できますが、鳥の場合、すべてを疑わなければならないですし、その種類もけた違いに多いです。

Q16.小嶋先生の著書『コンパニオンバードの病気百科』(写真8)では、AGY(マクロラブダス・写真9)の疾患数がセキセイインコでは89、オカメインコが29、カナリアとフィンチが26となっています。一方、神経節炎(PDD・写真10)はコンゴウインコが174、ヨウムが115、バタンが72、コニュアが60となっています。どちらも胃の疾患でありながら、罹患しやすい鳥種が異なるのは何故でしょうか?

各疾患に対し、鳥の種類で病原性に対する感受性が異なるためではないかと思います。すなわち、AGYに関してはセキセイインコが一番感受性が強いことを意味します。

Q17.コンパニオンバードを診療する上で参考にされている国内外の本や学術誌を教えてください。

現在は、それを記載したり学術誌を刊行する側なので、他書籍を参考にして診療するということはなくなりました。

論文は毎日目を通すようにしていますし、国内外の先生たちと常にディスカッションしてズレがないか新しいアイデアがないか確認するようには注意しています。

若手に「どれを読んだらよいか」と聞かれた場合、「現存する教科書や雑誌はできる限りすべて目を通しなさい」と伝えています。

Q18.論文は毎日目を通されるとのことですが、具体的にどのような論文でしょうか?鳥関連の論文でしょうか?

鳥や犬・猫関連の論文ではなく、人の医学に関する論文を読んでいます。人の医学は動物の医学と比較して最先端の治療を行っているので参考になるからです。

Q19.日々診療されている中でコンパニオンバードに関する思い出深い症例や手術例は何でしょうか?

記憶としては残して参照しますが、感情(想い出)として残さないようにしています。バイアスがかかりますので。

Q20.勤務されている獣医師スタッフにどのような指導をされていますか?またチームワークを図るために実施されていることがございましたら教えてください。

とても難しく、まったく正解がわかりません。

ひとりひとりがまったく異なるので、教育も仕事の割り振りも個々にあわせるしかありません。

とにかく愛情をもって労力を惜しまず個々にコミュニケーションをとりながら、全員が動きやすいシステムを構築するよう日々臨機応変に対応するしかないかなと思っています。

Q21.勤務されている獣医師スタッフに期待することは何でしょうか?

立派な獣医師になって鳥をたくさん助けてほしいし、そういった人たちを増やしてほしいです。

哲学と正義感は強く持ってほしいです。

Q22.その「哲学」とはどのようなものか、具体的に教えてください。

常に物事を深く考えたりすることです。未来に対してどのようにしていくべきかを自分なりに導くことができるためには、思慮深くあることが重要ではないかと思います。

例えばなぜ鳥は飛ぶのかなど、素朴な疑問についても興味を持ち自分なりに結論を出して、ブレないことが重要です。

この考えのベースになっているのは、母校である北里大学の建学の精神のひとつである「叡智と実践」からきているのではないかと思います。「叡智と実践」の意味するものは、学んで得た知識と技術を実践の場に活かし社会に還元することです。

Q23.鳥と小動物の病院 リトル・バードで実施されていることや小嶋先生自身が社会貢献されていることを教えてください。

東京都獣医師会および世田谷支部では学校飼育動物関連で小学校への授業や体験指導を行っています。

最近は、文部科学省、環境省、農林水産省などの各省庁や地方自治体からの仕事も多く承っています。

社会貢献かどうかわかりませんが、大半の時間を学会運営や雑誌刊行、セミナー開催など、学術発展や若手育成に費やしています。むろんボランティアです。

Q24.小嶋先生は2022年東京農工大学で獣医学博士の学位を取得されていますが、学位を取得した研究論文のテーマと何故、獣医学博士の学位を取得されようと思われたのかを教えてください。

テーマはマクロラブダス症(写真11)についてです。

学位を取得しようと思ったわけではなく、より良い治療を求め研究を持ち込んだら、大学院に入学するのがよいということでしたので。

Q25.海外から「鳥と小動物の病院 リトル・バード」の見学にこられることがありますか?また、見学された方の反響はいかがでしょうか?

はい。たまに見学を受けます。感銘をうけた獣医師が、韓国にリトルバードソウルを開業しました。

Q26.小嶋先生が大切にされていることは何でしようか?

哲学を持つことです。

Q27.今後、小嶋先生がチャレンジしたいことは何でしょうか?

毎日さまざまなことにチャレンジし続けることです。日々新しいよりよい治療法を探し続けています。

Q28.コンパニオンバードを診療する上で小嶋先生が開発されたものを教えてください。

開発したアイデアに関する記事を紹介させていただきます(参考文献:「エキゾチック診療 21 Vol.6 No.4 2014 エキゾチック臨床の工夫とアイデア」)。

Q29.小嶋先生が加盟や参加されている国内外の学会を教えてください。

鳥類臨床研究会 もう15年以上副会長、編集長です。

日本獣医エキゾチック動物学会(理事)、Association of Avian Veterinarians(AAV、世界的な鳥類医学会)、獣医師会、日本獣医学会、鳥類学会、鶏病研究会です。

Q30.日本獣医エキゾチック動物学会の理事として今後目指されることは何でしょうか?

「目指す」ということではありませんが、常に他の理事とは違う角度で物事を見て、批判的立場であろうと思っています。

矛盾するようですが、多様性を重視していますので、みんな仲良く、とりこぼされる人がいないようにとも思っています。

Q31.コンパニオンバードの診療を希望される獣医学生さんへのメッセージをお願いします。

鳥の医療は獣医師の仕事の中でももっともしんどい分野のひとつだと思います。その分、もっともやりがいのある仕事でもあると思います。獣医師として、その知力をもって命を助ける仕事がしたいということであれば是非に。

編集後記

今回、エキゾチック動物診療の第4回目として、日本獣医エキゾチック動物学会理事で、鳥と小動物の病院 リトル・バードの院長である小嶋篤史先生にお話をうかがいました。

エキゾチック動物診療をシリーズにしているのは、犬や猫に比較して取り扱いが難しいからであり、鳥はなお一層難しいものです。その例として、今回、麻酔のリスクの話題が出て、鳥の場合は犬、猫の10~20倍くらいも高いことを解説いただきました。鳥類は飛ぶために代謝が速い構造となっていることや、衝撃に対して損傷しやすいことを、携帯電話や車で例えて特徴を簡明にわかりやすく表現いただきました。

小嶋先生の知識の集積や考え方が、コンパニオンバードを診療する上でのアイデアや数々の開発につながるのだなと感じました。

鳥と小動物の病院 リトル・バードは、全国の動物病院から紹介される2次診療施設、エキゾチック動物や鳥の専門病院から検査や外科などを紹介される3次診療施設として機能し、いわゆるセンター病院として存在していることは、社会にとって貴重で意義のあることだと思いました。

さらに地域の学校飼育動物への関わりが、全国的な広がりをみせているという小嶋先生の社会貢献もも、とても素晴らしいことだと思います。コミック『珍獣のお医者さん』(株式会社KADOKAWA)の第4巻(写真12)の鳥の診療部分は、小嶋先生が監修・取材協力をされており、これも一つの社会貢献でしょう。

最後に、飼い主向けの著作『コンパニオンバードの病気百科』は、鳥の医学書として獣医師にとっても大変参考になる一冊と申し添えておきます。

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シリーズ「国内外の各分野で活躍されている獣医師」