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■【寄稿】国内外の各分野で活躍されている獣医師(7)~ベ-リンガーインゲルハイム アニマルヘルス ジャパン株式会社 大槻朋子先生
記事提供:動物医療発明研究会
インタビュアー・構成・執筆 伊藤 隆
動物医療発明研究会 広報部長/獣医師
国内外の各分野で活躍されている獣医師へのインタビューを開始し、第1回目と第2回目は、米国ニューヨーク州で活躍されている五十嵐和恵先生の記事、第3回目は、「JAVS(日本獣医学生協会)コラボレーション-獣医師による獣医大学訪問」の取材において学生さんから記事掲載の希望が多かった動物用医薬品メーカー勤務の獣医師として、ゾエティス・ジャパン株式会社の鍵和田哲史先生の記事、第4回目はVMATについて紹介し、第5回目は動物用医薬品メーカー勤務獣医師の第2弾としてエランコジャパン株式会社の福本一夫先生の記事、第6回目は帯広畜産大学のEAEVE認証システムを活用して初めて英国獣医師免許を取得した篠崎夏歩先生の記事を掲載しました。
今回は、動物用医薬品メーカーに勤務されている獣医師の第3弾としてベ-リンガーインゲルハイム アニマルヘルス ジャパン株式会社 開発・薬事部長 大槻朋子先生(写真1)にお話をうかがいました。
(取材日:2024年10月16日)
Q1.ベーリンガーインゲルハイム社の社名の由来と、主なビジネスを教えてください。
社名は、創業者のアルベルト・ベーリンガー博士の名前と創業の地ドイツ インゲルハイムにちなんでいます。1885年の創業から今年で140周年を迎え、ベーリンガーインゲルハイム社は、130ヵ国以上で事業を展開する製薬企業として、ヒト用の医療用医薬品、アニマルヘルス(動物用医薬品)を主軸に活動しています。
Q2.ベーリンガーインゲルハイム社のロゴの由来も教えてください。
ヨ-ロッパの父と言われたフランク王国・カール大帝の王宮がインゲルハイムの近くにあったことから、王宮をイメージしたロゴとなっています(写真2)。
Q3.ベーリンガーインゲルハイムアニマルヘルス ジャパン株式会社の売上金額、動物種別の売上割合、小動物関連、大動物関連の主力製品を教えてください。
当社には、ペットの疾病予防と治療に注力するコンパニオンアニマル部門と、安全で健康な食肉を持続可能かつ経済的に飼育生産することに寄与する産業動物部門(牛・豚・鶏)があり、全体の売上は2023年の卸出荷ベースで200億円超でした。コンパニオンアニマルが売上の80%を占めており、残り20%は産業動物となります。なお、コンパニオンアニマル部門には犬と猫の他に馬も含まれます。
主力分野は、駆虫薬やワクチンなど「予防」、そして「疾病の治療」です。中でも、コンパニオンアニマル部門の駆虫薬(ネクスガードシリーズ等)、産業動物部門の豚用ワクチン(インゲルバックシリーズ等)は長年にわたる信頼をいただいており、日本ではそれぞれの領域市場でNo.1、No.2となっています。
さらに今後を見据えて、コンパニオンアニマル部門においては、ペットの寿命が延び高齢化も進んでいることから年齢とともに罹患率が上がる慢性疾患治療を見据えて関連医薬品の品揃えを図っています。
Q4.ベーリンガーインゲルハイム社のセールスポイントを教えてください。
ベーリンガーインゲルハイムは、まず、株式を公開しない独立した企業であることが大きな特徴です。そのため、短期的な視点と中長期的な視点とを複眼的に持ち合わせて決定や業務遂行ができます。短期的な売上や収益だけでなく、長期的な展望で取り組むべきこと、例えばパイプラインなど新規医薬品の開発や、人財や組織の育成についてもバランスをとってビジネスを行っています。
当社には、医療用医薬品分野と動物用医薬品分野があり、研究開発において、疾病の機序、化合物、最先端のテクノロジー技術などに関する知識を共有し、協働していることが大きな特徴で、これによりイノベーションの創出をしているのが強みです。その結果として、コンパニオンアニマル部門と産業動物部門の双方で、人と動物の健康に寄与しています。
また人と動物の健康は相互に深く関連し合っていると考えており、深いつながりに重きを置き、人と動物、社会に違いをもたらすべく日々邁進しているところも強調できるポイントだと思います。
Q5.医療用医薬品分野と動物用医薬品分野の両方を持っているのが強みとのことですが、医療用医薬品から動物用医薬品に開発された製品がありますか?
2024年9月に発売した猫用糖尿病治療薬「センベルゴ」は、糖尿病治療におけるSGLT2阻害剤の知見の共有から生まれた革新的な製品です。医療用医薬品のジャディアンス(成分名:エンパグリフロジン)での技術や知見をふまえ、動物用として最適な物質(一般名 ベラグリフロジン L-プロリン一水和物)を有効成分として開発・製品化されました。
他には、ヒト用の高血圧治療薬である「ミカルディス」(成分名:テルミサルタン)から開発された猫用の慢性腎臓病治療薬「セミントラ」があります。加えて、ヒト用の非ステロイド性消炎鎮痛剤である「モービック」(成分名:メロキシカム)から開発された犬、猫及び牛用の「メタカム」もあります。
Q6.ペットの高齢化が進んでいく中で、慢性疾患治療薬の品揃えを図って行くとのことですが、具体的にどのような疾患をターゲットに考えていますか?
糖尿病、がん、猫の慢性腎臓病などはターゲットの一部になると考えています。これらの慢性疾患領域は、当社が医療用医薬品ビジネスにおいても豊富な知見と経験を有しており、研究開発において社内での協働からイノベーションや開発の加速が期待できると考えています。
Q7.慢性疾患の治療薬として、現段階で御社が販売されている関連製品をご紹介ください。
主な治療薬として、糖尿病領域では、先ほど申し上げた日本初の猫の経口剤として2024年9月に発売されたSGLT2阻害剤の「センベルゴ」(写真3)、国内唯一の動物用(犬・猫)インスリン製剤である「プロジンク」(写真4)、猫の慢性腎臓病では「セミントラ」(写真5)、がん領域では犬の口腔内メラノーマに対するDNAワクチン「オンセプトメラノーマ」(写真6)があります。
Q8.猫の糖尿病治療薬「センベルゴ」の特長を教えてください。
「センベルゴ」は、ナトリウム‐グルコース共輸送体(SGLT)2阻害剤で、1日1回の経口投与により効果を発揮する液剤です。
製品特長は3つのS、すなわち「SIMPLE」、「SAFE」及び「STRONG」に集約されます。1日1回、食事にかけるなどして投与できる経口液剤です。用量の調整が不要なため、獣医師による血糖曲線の作成も不要です。また、臨床試験では、投与後30日時点での糖尿病猫に対する有効率は約90%で、初回投与から約1週間後にはほとんどの猫で血糖コントロールが可能であること、臨床的な低血糖のリスクが低いことも示されました。なお、海外での臨床試験結果は論文発表されています。
- 米国での臨床試験
- Velagliflozin, a once-daily, liquid, oral SGLT2 inhibitor, is effective as a stand-alone therapy for feline diabetes mellitus.
- Journal of the American Veterinary Medical Association 2024. 262(10),1343-1353.
- ヨーロッパでの臨床試験
- Efficacy and safety of once daily oral administration of sodium‐glucose cotransporter‐2 inhibitor velagliflozin compared with twice daily insulin injection in diabetic cats.
- Journal of Veterinary Internal Medicine 2024. 38(4), 2099-2119.
Q9.「センベルゴ」と従来のインスリン製剤との違いは何ですか?
従来のインスリンによる治療では、1日2回、約12時間間隔でインスリン注射をしなくてはならず、猫オーナーさんにとって大きな負担となっていました。「センベルゴ」は経口の液剤で投与しやすく、また1日1回で効果を期待でき、糖尿病治療薬として新たな選択肢を提供できたと考えています。
実際、先行して発売されている海外でも多くの獣医師や猫オーナーさんから、投薬に関する負担の軽減を含め喜びのお声をいただいています。猫にとっても猫オーナーさんにとっても負担が減ることからQOLの改善が期待でき、そして、適切な処方指示や使用により、獣医師の負担も軽減できうる薬剤だと期待しています。
Q10.センベルゴの剤形は、なぜ、錠剤でなく液剤なのでしょうか?
猫に錠剤を飲ませるのに苦労している猫オーナーさんが多いと聞いています。センベルゴは、投与しやすい経口の液剤として開発されました。専用のシリンジで直接猫の口にセンベルゴを入れるほか、少量の食事にかけて一緒に投与することも可能です。
また、猫の嗜好性への配慮という点では、ハニーフレーバーを添加しています。猫にとって飲みやすく、オーナーさんにとっても投与しやすいことを大事に考えています。
Q11.センベルゴの名前の由来を教えてください。
英文ではSenvelgoと表記されます。Senはsensitive、velは薬効成分であるvelagliflozin、goはlet's goに由来し、糖尿病治療の新しい選択肢を提供する当社の意気込みをこめています。
Q12.2024年3月に東京で開催された世界がん学会において製品展示をされていた「オンセプトメラノーマ」の製品特長を教えてください。
「オンセプトメラノーマ」は日本で初めてかつ唯一の犬の腫瘍に対するDNAワクチンです。腫瘍が適切に外科切除されたステージⅡまたはⅢの口腔内メラノーマの犬に、専用の針無し注射器ベットジェットを用いて経皮的に筋肉内に投与することで、生存期間の延長が期待できます。2024年3月から腫瘍の専門医の先生が所属する施設などで使用いただいています。
Q13.犬の口腔内メラノーマについて教えてください。
口腔内メラノーマは最も一般的に発生する犬の口腔内腫瘍です。しかし犬の口腔内メラノーマは、急速に進行する転移性の高い腫瘍です。これまでは外科手術、放射線療法や化学療法による治療が一般的でしたが、再発や転移により比較的短期間で亡くなってしまうことが多く、有効な治療法が確立されていません。こうした背景から新しい選択肢となる治療方法が強く望まれてきました。オンセプトメラノーマは、既存の治療法に加え、生存期間の延長を期待できうる新たな補助療法オプションを提供するものです。
Q14.コンパニオンアニマル部門の中に馬が含まれていますが、どのような製品が海外を含めて販売されていますか?
日本では馬というと競走馬のイメージがあるかもしれませんが、海外では競走馬以外にもペットとして、つまり家族の一員として馬を飼育しているケースが多いです。
馬製品としては、日本でも以前から展開している駆虫薬などのほか、日本では未承認ですが、幹細胞技術を用いた運動器疾患の治療薬として、「RenuTend」と「Arti-Cell FORTE」の2製品があります。
「RenuTend」は、欧州で馬の腱や懸靭帯損傷の治癒改善の治療薬として承認されています。
また、「Arti-Cell FORTE」は、英国などでの馬における関節の非感染性の炎症に関連する低~中程度の跛行に対する治療薬として承認されています。
Q15.画期的な混合プラットフォーム技術を使用した新容器TwistPakを採用した豚用混合ワクチン「インゲルバック フレックスコンボミックス」の特徴を教えてください。
「インゲルバック フレックスコンボミックス」は、豚サーコウイルス2型感染症ワクチンである「インゲルバックサーコフレックス」と豚マイコプラズマ・ハイオニューモ二エ感染症ワクチンである「インゲルバック マイコレックス」を同時に投与できる豚用2価混合ワクチンで、日本では2014年1月から販売していますが、2023年からTwistPak(ツイストパック)を採用した革新的なボトル容器を採用し、従来のように連結針を使わずに2つの抗原を衛生的かつ安全に混合投与できるようになりました。
従来は、サーコ抗原とマイコ抗原の入ったそれぞれのボトルに連結針を刺して結合し、抗原を混合していました。しかしTwistPakは、サーコ抗原とマイコ抗原2本の各ボトルの底部に、独自のインターロック機構が施されており、混合時に2本のボトルの底面を接続して、各ボトルを逆方向に回すことで2つのボトルが連結されます。この時にボトル底面のロック機能が外れ、2剤が混合されます。連結したボトルをゆっくりと反転させ、混合液の色が均一になるまでしっかり混合してから豚に投与します(写真7)。
Q16.牛ウイルス性下痢(BVD)生ワクチン「ボベラ」を2023年11月に発売されましたが、その特徴を教えてください。
「ボベラ」(写真8)は、1年に1回の投与でBVDウイルス感染による臨床症状を軽減し、白血球減少を抑制します。母牛から胎子への垂直感染を防止し、持続感染(PI)牛の出生を予防できる日本で唯一の生ワクチンであり、妊娠牛にも安全に使用できる日本初のBVDワクチンです。BVDは牛群全体の生産性を大きく低下させるだけでなく、家畜伝染病予防法で届出伝染病に指定されており、公衆衛生の観点からも対策が重要です。海外では国を挙げてBVDの清浄化プログラムを推進している事例があり、ボベラはそのなかで重要なツールとして大きく貢献していると聞いています。
Q17.英国では、「メロキシカム」0.5mg/mL oral suspensionの対象動物として「モルモットで効能」を取得しています。日本におけるエキゾチックアニマル分野の市場展開を考えていますか?
現段階では、市場性が小さいので参入するのは厳しいと考えています。また日本においては、エキゾチックアニマルに関するガイドラインがないのも、参入が容易でないひとつの要因ではないかと考えています。
Q18.大槻先生のご担当されている仕事について教えてください。
私のポジションは開発・薬事部長です。開発と聞くと、治験を含む新製品の開発をイメージされると思いますが、私の部門の業務はそれだけでなく、製品を継続的に販売できるように、市販後調査、変更管理、安全性情報管理や薬事コンプライアンスレビューなどの幅広い業務も行っています。
ドイツの本社などの研究開発拠点に赴き、日本の要件や開発状況の情報共有を行い、ベーリンガーインゲルハイム アニマルヘルスにおける開発として日本のプレゼンスや優先順位を上げることも重要な業務の一つです。
また、自部門で業務を担っていく次世代の開発マン(=開発に携わる研究者)の育成やチーム力の強化にも注力しています。加えて、日本のベーリンガーインゲルハイム全体でも、医療用医薬品ビジネスとアニマルヘルスビジネスの間での人財交流などにも前向きに取り組んでいます。
Q19.人財や開発マンの育成とおっしゃいましたが、具体的にどのような支援を行い、あるいは優れた開発マンとはどのような人物を考えているのでしょうか?
ベーリンガーインゲルハイムでは、個々のキャリア目標に基づき、研修やトレーニングの機会を提供しています。それ以外にも開発マン育成の1つとして、新しい知見を学ぶ機会に、獣医関連学会への積極的な参加も推進しています。また、当社で働きながら大学などの研究や勉強を続けたいという要望も前向きに応援しています。
私が動物用医薬品で仕事をするようになった時に、恩師から「業界から欲しがられる人材になりなさい。」と言われたことを鮮明に覚えています。優秀な開発マンとは結果としてそのような人物になることではないかと思います。
Q20.開発マンにとって必要な資質は何だとお考えですか?
幅広い視野を持っていること、好奇心や探求心が旺盛なこと、新しいことに対して自分で調査するという知的探求心のあること、またパーパスを自分なりに持っていることなどではないかと考えています。例えば、動物のために良い薬を1日も早く開発したいというパッションなどがある人は真摯に開発業務に向き合えると思います。
Q21.仕事のなかで思い出に残ることを教えてください。
開発にかかわった動物用医薬品が承認を取得し、動物病院でその製品が薬品棚に陳列されているのを見た時に、動物の健康に貢献できていることを感じることができ嬉しく思ったことを覚えています。
Q22.今後、チャレンジしたいことは何ですか?
動物と人間がその絆を大事にしながら、より健康で長生きできるように動物薬業界全体をもっと盛り上げて行きたいと考えています。
家族の一員としてペットへの関心は高まっていると感じていますが、日本ではペットの飼育頭数は犬で減少傾向にあります。猫の飼育頭数は横ばいですが、犬と違い、動物病院に来院すること自体が難しく、定期健診や定期的なワクチン接種などが習慣化していないケースもあり、重篤な症状がみられるようになって初めて病気に気づくことが多いのが実態です。ペットの高齢化も進んでおり、高齢化に伴う慢性疾患(心臓・腎代謝・がん・認知症など)がだんだん顕在化し始めています。動物が健康であれば人も健康になれると考えていますので、ぺットの定期健診を促進し、普段から予防、早期発見を目指せる環境ができればと考えています。
Q23.御社が取り組んでおられる「セーブペットプロジェクト」の概要を教えてください。
セーブペットプロジェクトは、当社と、当社のペット用製品の流通におけるパートナーである日本全薬工業株式会社が、犬や猫の殺処分削減および保護犬・保護猫の支援のため、2010年から行っている共同プロジェクトです。
飼い主のいない 動物たちへの愛情の証をキーワードに、病院で処方あるいは販売されるベーリンガーインゲルハイム アニマルヘルス ジャパンの犬猫用寄生虫駆除薬「ネクスガード」シリーズや「フロントライン」シリーズ、犬用デンタルガム「オーラベット」の売り上げの一部を、毎年、公益社団法人日本獣医師会と公益社団法人アニマル・ドネーションに寄付しています。
Q24.ほかに、獣医学部の学生さんの支援をされていると聞きましたが、具体的に教えてください。支援をする目的についても教えてください。
「ベーリンガーインゲルハイム 獣医学奨学プログラム(Boehringer Ingelheim Veterinary Scholars Program、以下獣医学奨学プログラム)」を行っています。
これは、獣医学生に対して、主に北米の獣医大学を夏季約3ヵ月間の留学をサポートするプログラムです。海外の獣医大学の研究室において、実践的なバイオメディカルの研究に触れる機会を提供します。
この留学経験により、獣医学生に獣医学サイエンスへの関心を深めていただくと同時に、将来の可能性や選択肢を広げてもらうことを目的としています。
Q25.獣医学奨学プログラムはいつ頃から実施されているのでしょうか?現在までの状況も教えてください。
ベーリンガーインゲルハイムがグローバル規模で行っているもので1989年に設立されました。
内容や対象は年々拡充し、現在は、北米の約40の獣医大学が夏季留学を受け入れ、米国、カナダ、フランス、オランダ、ドイツ、西インド諸島など9ヵ国の獣医大学が学生を送り出すまでに進化しています。なお、米国の獣医学生が米国内の別の獣医大学に夏季短期留学するケースも支援しています。
これまでに当プログラムを通じて支援した獣医学生は累計4,000名以上にのぼります。
Q26.獣医学奨学プログラムの日本での状況も教えてください。
日本では、2023年にパイロット導入し、2024年度より正式に導入しました。
案内や募集は毎年秋に、全国17の全ての獣医大学を通じて行い、プログラムに参加する学生の選考と留学に関する支援を行っています。2025年度については、昨秋に募集を行い参加する学生が決定しました。現在留学に向けて準備を進めていただいているところです。
Q27.日本で導入研修に参加された学生さんから何か反響はありましたでしょうか?
2023年に参加された1名と、2024年に参加された2名の学生さんに、プログラムを通じた体験やそこから得られたことについてお話をうかがいました。様々な経験や交流を通じて発見があり、研究の面白さに気づいたり、視野が広がって自分がやりたいことや進みたい道を考えるきっかけにつながったようです。
体験レポートをWebサイトに掲載しています。
Q28.動物用医薬品メーカーに就職を希望される学生さんにメッセージやアドバイスをお願いします。
動物用医薬品メーカーに勤務することにより、様々な動物種、多種多様な専門領域や製品カテゴリーが対象となるため、より幅広い活動ができるのが魅力だと思っています。
自分が学生時代に研究室の教授から、コミュニケーションが苦手な学生が多いのでアルバイトをして、よりコミュニケーション能力の向上や世間の常識を身に着けた方が良いと言われました。今振り返ると、とても良いアドバイスになりました。学生のうちに、学生ならではの好奇心をもって様々なことにチャレンジして、またいろいろな人との交流の機会を大事にしてほしいと思います。
Q29.最後に、日本の開業獣医師へのメッセージをお願いします。
第一線の臨床現場で働かれている先生方に、今後も革新的な医薬品を提供していきたいと考えています。それにより、日々動物の命と向き合っていらっしゃる先生方のサポートができれば幸いです。
編集後記
動物用医薬品メーカーで活躍されている獣医師の第3弾として大槻朋子先生にお話をうかがいました。第1弾のゾエティス・ジャパン株式会社、第2弾のエランコジャパン株式会社と同じく外資系企業ですが、両社とは異なる点を2つ感じました。
1つは、ベーリンガーインゲルハイム社は医療用医薬品分野と動物用医薬品分野の2つの部門を持っていることです。このことにより、Q5でも記載いたしましたが、両分野を持つことを生かした動物用医薬品が発売できたのではないかと思います。また、ベーリンガーインゲルハイム社は、人と動物の健康は相互に深く関連し合っていると考えており、深いつながりに重きを置き、人と動物、社会に違いをもたらすべく日々邁進しているところも、強調すべき点だと思います。
2つ目は、ベーリンガーインゲルハイム社が株式を公開していない会社であることです。株式を公開していることは良い点もありますが、時には発言力のある株主からの影響を受ける可能性もあるかもしれません。その点、株式非公開の会社ですと、本当に会社として実施すべき事項や新たな分野への製品開発などのチャレンジがよりできやすい環境と、可能性があるのではないかと思いました。
製品群の品揃えを見ると、産業動物部門とコンパニオンアニマル部門共にユニークな製品が販売されています。養豚農家の利便性を追求し画期的な混合プラットフォーム技術を使用した新容器TwistPakを採用した豚用混合ワクチン「インゲルバック フレックスコンボミックス」、妊娠牛に対しても安全に使用できる日本初のBVDワクチンの「ボベラ」、グローバルでは幹細胞技術を活用した馬用製品、剤形にもこだわり液剤タイプの製品である「センベルゴ」、「セミントラ」などです。
今年ベーリンガーインゲルハイム社は、140周年というひとつの節目を迎える年となりますが、ますますのご発展を祈念いたします。
動物用医薬品メーカーで活躍されている獣医師へのインタビュー記事はこれまで3回とも外資系企業でしたが、国内メーカーについても、例えば日本全薬工業株式会社(ゼノアック)や共立製薬株式会社についても今後紹介していきたいと思います。
動物医療発明研究会は、会員を募集しています。入会を希望される方は、「動物医療発明研究会」まで。
シリーズ「国内外の各分野で活躍されている獣医師」