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■【寄稿】国内外の各分野で活躍されている獣医師(20)厚生労働省 健康・生活衛生局 食品監視安全課 乳肉安全係 高橋真央先生:後編

2026-01-06 16:30 掲載 ・2026-01-07 13:43 更新 | 前の記事 | 次の記事

写真7 学内サークルにて、宮崎大学の留学生と地域の高校生との交流イベントを開催し、学内で発表した際の写真(写真提供:高橋真央先生)

記事提供:動物医療発明研究会

インタビュアー・構成・執筆 伊藤 隆

動物医療発明研究会 広報部長/獣医師

(取材日:2025年5月21日)

<前編はこちら>

Q11.高橋先生はどんな学生時代を過ごされたのでしょうか?

大学では自分の殻を破ることを目的に、いろいろな活動に参加するよう心掛けていました。

特に、特定のコミュニティだけに依存しないよう、他学科の同級生や社会人の方々と接する機会を積極的に活用していました。

具体的には、日本獣医学生協会(JAVS)の中でも、海外の獣医学生さんとの交流等を行う局であるIVSA(International Veterinary Students'Association)に所属したり、大学では日本人学生と留学生との交流を行うサークルに所属して定期的にイベントを開催していた(写真7)他、スキューバダイビングサークルに所属して他学科の同級生と海に潜ったりしていました。

アルバイトもいくつか経験していますが、その中ではホテルのフロント業務を担当したことが、自身のコミュニケーション能力向上に役立ったと思っています。

なお、大学の研究室は「獣医機能生化学研究室」という、動物の多能性幹細胞(iPS細胞)、間葉系幹細胞、遺伝子工学を用いた獣医再生医療へ向け研究を行っている研究室に所属していました。卒業論文のテーマは「ヒト多能性幹細胞における未分化状態維持機構の解明」で、公衆衛生には直接関連のない分野ではありますが、社会人になってからは接する機会がなさそうな分野を学ぶ、貴重な時間となりました。

Q12.獣医大学で学んだことが今の仕事に役立っていることは何かありますか?

大学で学んだことは基本的に全て仕事に役立っていると考えていますが、研究室で身につけた情報収集能力や論理的思考能力は特に仕事をするにあたってプラスになっていると感じます。

Q13.高橋先生が厚生労働省獣医系技官を含む公衆衛生獣医師の確保に向けて今後チャレンジしたいことは何ですか?

今後は、より地方自治体の実情を把握した上で、成り手不足の改善に向けた業務を行っていきたいです。具体的なイメージはまだつけられていませんが、厚生労働省という立場を活かすことで、全国的な観点で根本的な成り手不足の改善に取り組んでいきたいと考えています。

Q14.厚生労働省の獣医系技官として必要な資質は何だと考えますか?

働く中で自分もまだまだだと痛感していますが、第一には、コミュニケーション能力と調整能力が挙げられると考えます。

厚生労働省の獣医系技官の特徴として、獣医学以外のバックグラウンドをもつ方々との関わりが多い点が挙げられますが、それにあたっては広い視野をもち、ちょうど良いバランス感覚で人と接することができる能力が重要だと感じます。

Q15.現在の仕事をしていく上で参考にされている獣医系の書籍は何かありますか?

獣医系に限ったものではありませんが、食品衛生法やと畜場法等の公衆衛生分野に関連する法律や通知が掲載されている、『食品衛生小六法』はよく参考にしています。

Q16.現在の厚生労働省獣医系技官を含む公衆衛生獣医師確保業務において、他の省庁や地方自治体との連携はございますか?

公衆衛生獣医師確保は厚生労働省のみの課題ではないため、地方自治体と連携した取り組みを複数行っています。

例として、令和3年度及び令和5年度には各自治体における公衆衛生獣医師確保に資する先行事例についてアンケート調査を実施し、その結果を各自治体へ共有しました。

Q17.厚生労働省獣医系技官の職種は女性に取ってどのような雰囲気の職場と感じられますか?

厚生労働省の獣医系技官は、それほど男女の割合に差がなく、働きやすい雰囲気の職場であると感じています。

また、時短勤務やフレックスタイム制(職員の申告を考慮して1日の勤務時間を決める制度)、テレワーク制度は整っていますので、小さいお子さんがいる職員の方々は特にそれらを活用されていることが多い印象です。

厚生労働省獣医系技官のWebサイトにも、「ワークライフバランス」について紹介しています。

Q18.高橋先生が今後、厚生労働省の中でスキルアップしていく上で、今後希望される部署や国はございますか?またそう思われた理由を教えてください。

一度、本省以外の部署を経験したいです。

入省して4年目になりましたが、今までは本省の食品監視安全課内のみでの異動しか経験しておらず、実際に自分が携わってきた法律やガイドラインが運用されている現場で働いたことがないため、やや頭でっかちになってしまっている部分があると感じるためです。

本省以外の部署で働くことで、より広い視野、本省と現場間のバランス感覚を身につけ、また国という立場で働くにあたっての課題意識を持つことができると考えています。

Q19.オフの日は何をされていますか?

インドア派なので、基本は家でゆっくりしていますが、時々遠方にいる友達に会いに行ったり、1人で出かけたりすることもあります。

また、昨年度までは英語を使う機会も多かったため、英会話教室に通っていた時期もありました。

Q20.厚生労働省獣医系技官の採用試験2次試験の科目である「政策課題討議試験」にはどのような対策をされましたか?また、アドバイスは何かございますか?

まずは政策課題討議が一体どういうものなのかについて、市販の参考書やインターネットを利用して情報収集しました。

その上で、過去に出題された「採用試験問題」(現時点で過去4年分が掲載されている)を確認し、討議の一連の流れを自分の中でイメージできるようにしました。最終的に複数名での事前の実践練習はしませんでしたが、厚生労働省が実施している施策等が記載されている厚生労働白書やネットニュースの記事を読み、それらに対して自分の意見をわかりやすく一定時間内にまとめる練習をしていました。

アドバイスですが、当日は政策課題討議前の待機時間で他の受験者と話す時間があったため、そこで軽く自己紹介をしたり、司会やタイムキーパー等の討議時の役割分担を行ったりすることで、かなり進めやすくなったと感じたため、その点は心がけられると良いのかなと思います。

Q21.厚生労働省獣医系技官を目指す学生さんにアドバイス、メッセージをお願いいたします。

厚生労働省に入省して4年目となりましたが、若手のうちから大きいスケールの業務を担当させてもらい、その経験を次に活かして還元することができる業務に日々やりがいを感じています。

厚生労働省の獣医系技官を目指す学生さんには、試験勉強等辛いと感じる瞬間もあるかもしれませんが、ぜひ自分の気持ちを信じて頑張って欲しいと思います。

入省した後、一緒に働けることを楽しみにしています!

編集後記

今回、厚生労働省の獣医系技官の方々にお話をうかがいました。

まずはそのお1人目、高橋真央先生です。高橋先生は入省1年目から厚生労働省獣医系技官の採用担当と食品監視安全課の輸入食品安全対策室に配属され、2つの業務を担当されていました。

輸入食品安全対策室では、その名のとおり輸入食品の安全確保や、牛肉等の日本への輸入条件に係る外国との協議等を担当されており、実際、海外に出張に行かれ、牛肉等を輸出する国の食肉処理場を実際視察するなど国を代表する仕事に携われていたとのことです。

さぞかし初めての海外出張で高橋先生も、プレッシャーを感じられたのではないかと推察します。

また、厚生労働省も若手の起用を積極的に行いスケールの大きい仕事を与えるなど、さすがに懐が深いなと思いました。

このように優秀な若手を積極的に起用する上でも、厚生労働省獣医系技官の採用試験2次試験の科目である「政策課題討議試験」という課題で人物評価を行うなど採用について工夫をされていると思いました。

また、もう1つの業務であります厚生労働省獣医系技官の採用担当業務においては、新たな企画として令和6年度にクリアファイルを作成されたのと公衆衛生獣医師を対象としたポスターを作成されたことは特筆すべきことではないかと思います。

クリアファイルは、厚生労働省で働く獣医系技官の存在や業務内容を幅広く知ってもらうために作成され、各獣医系大学への学生さんを対象に配付を行っています。

デザインは、食品や感染症などの公衆衛生分野に係るイラストを盛り込み、裏面には厚生労働省獣医系技官のWebサイトにつながるQRコードを掲載することで、厚生労働省で働く獣医系技官の存在を知ってもらうきっかけとなることを目的としたものです。

私もインタビューの際にクリアファイルを実際見させていただきましたが、各イラストは、厚生労働省で働く獣医系技官の多岐にわたる業務がわかりやすく記載されており工夫されていることを感じました。また、クリアファイルの色合いについても、なぜ薄いグリーンを基調にされたのかを質問したところ、「クリアファイルは、清潔感のある色合いにすることで、学生さんに日頃から使ってもらいやすいデザインにしました」と回答され、細部において、使用する人の立場に立った細かい配慮が感じられました。

ポスターについても、作成後、かなり評判が良いと聞いています。評判の良い点は2つ挙げられます。1つ目は、フォトモザイクについて、地方自治体の職員の方々からも褒めていただけることが多いとのことです。2つ目は、犬と人の手がハイタッチをしている絵やと畜検査員をイメージした絵を配置することで、ワンヘルスの担い手となる公衆衛生獣医師の業務を良く表しているポスターであるとのコメントもいただいているとのことです。

特にフォトモザイクは、国や地方自治体で働く公衆衛生獣医師約350名の写真で構成されており、高橋先生もポスターの中に写真が掲載されています。このように全国の公衆衛生獣医師が写真を通じて一つにまとまっており、一体感が生まれた作品になっているのではないかと思いました。

まさに「One for all, All for one.」の精神が、国や地方自治体で働く公衆衛生獣医師の350名に共感をあたえたのではないかと思います。

このように、素敵なクリアファイルやポスターが作成できたのは厚生労働省の獣医系技官の採用担当の方々の協力と高橋先生が学生時代に培われていたスキルではないかと思います。

具体的には、学生時代に日本獣医学生協会(JAVS)の中でも、海外の獣医学生さんとの交流等を行う局であるIVSAに所属され、コミュニケーション能力はアルバイトの中でホテルのフロント業務を担当されていたことが、今の業務に役立ったのではないかと思っています。

今後も厚生労働省の獣医系技官採用担当と食肉係の二足の草鞋を履いてご活躍されることを期待しています。

次回はコロナの発生時最前線で活躍されていた川越先生と井谷先生へのインタビューです。ご期待ください。

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