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■【寄稿】国内外の各分野で活躍されている獣医師(22)厚生労働省 健康・生活衛生局 食品監視安全課 食品健康被害情報管理室 係長 井谷 寛先生

2026-02-02 16:38 掲載 ・2026-02-03 09:35 更新 | 前の記事 | 次の記事

写真3 徳島県出向期間中の井谷 寛先生。大学での地方自治体獣医師採用説明会にて(写真提供:井谷 寛先生)

記事提供:動物医療発明研究会

インタビュアー・構成・執筆 伊藤 隆

動物医療発明研究会 広報部長/獣医師

(取材日:2025年5月21日)

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川越匡洋先生に次いで井谷 寛先生にお話をうかがいました。

Q13.就職先として厚生労働省獣医系技官を希望された理由を教えてください。

動物を由来とする感染症が人で発生すると、人の健康を守るために、その動物の隔離や殺処分等の対応が大なり小なり必要になる可能性があります。そうした人での感染症等の発生・拡大を未然に防ぐことが、結果としてより多くの動物の命を救うことに繋がると考え、その根底となる施策等に携わりたいと考えたためです。

Q14.現在の業務を教えてください。

現在私は厚生労働省食品監視安全課の食品健康被害情報管理室という部署に在籍しております。

こちらでは各都道府県で発生した食中毒事例の情報収集や広域食中毒発生時の調査要請、発生予防に向けた普及啓発のほか、2024年の紅麹事件を踏まえて、機能性表示食品の届出者等の健康被害情報の報告が義務化されたことを受け、自治体から報告のあった機能性表示食品を含む、いわゆる「健康食品」による健康被害情報の収集及び関連性の検討を行っています。

Q15.入庁されてから、現在までの足跡を教えてください。

私は現在、入庁から5年目になるのですが、入庁から最初の2年間は結核感染症課(現在の感染症対策課)で動物由来感染症に関する業務と新型コロナウイルス感染症対策本部で広報班として啓発資料の作成やWebサイト更新といった業務を兼任しておりました。

その後、徳島県との人事交流として、2年間徳島県で食肉衛生検査所及び徳島保健所に配属となり、食肉検査や、飲食店等の衛生指導など自治体の公衆衛生獣医師の業務に努めました(写真3)。

そして2025年から、先述のとおり、食品監視安全課に配属しております。

Q16.今まで業務でご経験された食品安全関連業務の中で、うれしかったこと残念だったことについて教えてください。

どちらも自治体での経験になってしまうのですが、町の飲食店の方がHACCPに基づく衛生管理やその記録、その見直しについて前向きに取り組んでいただいた際は、日々の普及啓発が活きたと感じられ、うれしかったです。

一方で、複数回衛生指導をしても改善が見られない事業者には、「事業者に悪意を持って指導している訳ではなく、より衛生的な営業ができるように、という考えで指導をしているのに」と残念な気持ちになることもありました。

Q17.徳島県で2年間地方公務員として出向されていますが、そこでのご経験で現在の職場において役立っていることは何かありますか?

保健所で実際に食中毒の疑いが出た際などの温度感や速度感は、本庁で務めていてもはっきりとしたイメージが持ちにくいと感じるので、現在、自治体からの報告を受ける中で、大きな経験になっていると考えます。

Q18.出向先の徳島県で、職場に溶け込むために何か工夫されたことはありますか?

阿波弁をなるべく話すことで地元の方々と親密にコミュニケーションを図れるようにしていました。

Q19.地方公務員の方が本庁に出向するような人事交流があるのでしょうか?

おっしゃるように逆の人事交流もございます。

Q20.井谷先生が食品安全関連業務を進めていく上で大切にされていることやポリシーは何ですか?

私は現在業務をする上で、視野が狭くなっていないか、ということを意識するようにしています。

忙しい中で業務をしていると、どうしても文章や言葉を表面的に捉えてしまうのですが、前提となることや当たり前の点を見落としていないか、一度落ち着いて全体に目を向けることを意識するようにしています。

Q21.現在、食品健康被害情報管理室にて食品の安全に関する業務をされていますが、自分がどのような部分で業務に貢献されていると思われますか?

まだこちらの担当に来て日が浅いですが、自治体での食中毒発生時の動きや厚生労働省で管理しているシステムが実際にどう使われているのかといった知見は現在の業務にも役に立っていると考えます。

Q22.どのような学生時代を過ごされたのでしょうか?

正直大層な経験は積んでいないですが(笑)、塾や飲食店でのアルバイトをしながら、旅行によく行っていました。研究室は人獣共通感染症研究室に在籍し、研究室リーダーをしていました。

Q23.獣医大学で学んだことが今の仕事に役立っていることは何かありますか?

現在の仕事では、前提知識として食中毒関係の知識を活かすことは多くあります。またこれまでの職場でも動物由来感染症の知識や、と畜検査における廃棄の判断など大学で得た知識を幅広に活用しています。

Q24.今後チャレンジしたいことは何でしょうか?

まだ経験したことのない検疫所や厚生局など、様々な部局で活動し、実際にその職場で働くことで見識を広げたいと考えています。

Q25.厚生労働省の獣医系技官として必要な資質は何だと考えますか?

最も重要な資質は、コミュニケーション能力だと考えます。

自治体や他省庁、省内でも業務を進める中で、多くの方と連携をする必要があります。そうした中で、相手の懸念している点などを聞き取り、自分の意図を明確に伝えることは、円滑に業務を進める上でとても重要だと考えます。

Q26.現在の仕事をしていく上で参考にされている獣医系の書籍は何かありますか?

参考、というほどではありませんが、新しい知見を得る上でも、公益社団法人日本獣医師会が発行している「日本獣医師会雑誌」には目を通すようにしています。また、公益社団法人日本食品衛生協会の月刊誌である「食品衛生研究」も目を通すようにしています。

Q27.食品安全関連業務の中で、他の省庁(例:農林水産省)や地方自治体との連携はありますか?

いわゆる「健康食品」に関する健康被害情報の収集等をしている関係上、消費者庁とは日々連携して業務をしております。また、自治体から報告のあった健康被害情報について、より詳細な情報の聞き取りをするなど、日々連携して業務を進めています。

Q28.今後、厚生労働省の中でスキルアップしていく上で、今後希望される部署や国はございますか?またそう思われた理由を教えてください。

職場のいろいろな経歴の方と話をする中で、部署ごとに運用やシステムが違っているといった話をうかがうことがあり、実際にどういった運用をしているのか、経験してみたいと考えています。

そのため、まだ経験をしたことのない、厚生局や検疫所などで働いてみたいと考えています。

Q29.オフの日はどう過ごされていますか?

天気のいい日は日帰りでハイキングに行っています。また、大学生時代からの友人とオンラインで遊んだり、手間のかかる料理(煮込み料理)に挑戦したりしています。

Q30.厚生労働省獣医系技官を目指す学生さんにアドバイス、メッセージをお願いいたします。

厚生労働省というと、敷居が高く、忙しいといったイメージを持っている方も多いと思います。事実、国家公務員として責任感のある仕事を求められますし、忙しい時期もあります。

一方で、公務員として福利厚生はしっかりしており、ワーク・ライフ・バランスの推進など、家庭の都合に応じて柔軟に仕事をすることができます。公衆衛生業務に興味のある方は、「厚生労働省獣医系技官採用ページ」にアクセスしてみてください。

また、業務説明会やインターンシップなども開催していますので、是非ご参加ください。

編集後記

今回厚生労働省獣医系技官の第2回目として川越匡洋先生と井谷 寛先生にインタビューをいたしました。

川越先生は、コロナ渦において大きく2つのことを実施されました。一つはマスコミ対応、もう一つは、関係省庁との対応です。

マスコミ対応では、テレビ出演や写真1にあるようなポスターによるコロナ渦での啓発活動を実施されてきました。もう一つの関係省庁の対応ですが、コロナ研究の予算を得るために、昼夜問わず財務省の担当者に説明されるなど、関係省庁との調整はさぞかし大変だったと推察されます。2つの業務とも大変責任の重い仕事だと思いました。これらの業務を推進していく中で、関係省庁の方々が納得されるような資料作成などの理論武装や、卓越した交渉能力も必要だったと思います。

もう一人の井谷先生は川越先生と同時期にコロナなどの感染症対策を実施され、食品関係の安全性に関する対応業務も行われています。昨今マスコミで話題となったサプリメントも含め、食品の安全性の仕事も厚生労働省の獣医系技官にとっては大変な仕事であることが今回の取材を通じて痛感いたしました。

また井谷先生の2年間の徳島出向のご経験は、本庁での関係省庁との交渉を実施していく上で役に立つのではないかと思いました。

前回と今回で国内における厚生労働省の獣医系技官の業務内容を紹介いたしました。取材により多岐にわたる業務を実施されていることがよくわかりました。

次回は、厚生労働省の獣医系技官で海外において活躍されている、在カナダ日本国大使館一等書記官で獣医師の大里早貴先生を紹介いたします。

動物医療発明研究会は、会員を募集しています。入会を希望される方は、「動物医療発明研究会」まで。

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