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■【寄稿】国内外の各分野で活躍されている獣医師(26)エキゾチック動物診療 鳥と小動物の病院 リトル・バード 小嶋篤史先生:前編

2026-03-26 16:30 掲載 | 前の記事 | 次の記事

写真1 小嶋篤史先生

写真2 鳥の病院 リトル・バード 田園調布院

写真3・写真4・写真5・写真6・写真7

記事提供:動物医療発明研究会

インタビュアー・構成・執筆 伊藤 隆

動物医療発明研究会 広報部長/獣医師

国内外の各分野で活躍されている獣医師の取材記事を掲載しています。エキゾチック動物診療については、第10回目では栃木県宇都宮市のアンドレ動物病院院長の戸﨑和成先生、第13回目では東京駒込で診療されている、日本獣医エキゾチック動物学会会長で、日本エキゾチック動物医療センター院長の三輪恭嗣先生、第15回目では東京田園調布で診療されている、日本獣医エキゾチック動物学会副会長で、田園調布動物病院院長の田向健一先生のインタビュー記事を載せました。

エキゾチック動物診療の第4回目として東京都世田谷区の豪徳寺において鳥と小動物を診療されている、日本獣医エキゾチック動物学会理事で、鳥と小動物の病院 リトル・バードの院長である小嶋篤史先生に(写真1)お話をうかがいました。取材場所は鳥の病院 リトル・バード 田園調布院(写真2)でした。

(取材日:2026年1月16日)

Q1.鳥と小動物の病院 リトル・バード(豪徳寺院)の概要(開業年数、従業員数、年間症例数)を教えてください。

開業は2002年12月28日です。もうすぐ25周年です。従業員数は、獣医師7名、愛玩動物看護師・ケアスタッフ4名の計11名です。

年間症例数は1万件来院で、1件あたり鳥が1~3羽(ショップは10羽)ほど来ますので、2万羽弱だと思います。

Q2.動物病院の名前の由来を教えてください。

鳥の診療を行う動物病院は伝統的に地域名をつける場合が多く(柏、浦和、横浜、中野など)、当初、東京鳥の病院、あるいは世田谷鳥の病院でwebサイトを作ったり準備を進めていました。

ところが獣医師会から、地域名はふさわしくないとの横やりが入り止めました(当時は個人名をつけることがあたりまえという状況でした)。

ヤマザキ動物看護学校の講義を受け持っていた時期のことだったので、講義の際に病院名のことを話題にしたところ、「先生は小嶋で小鳥だからリトルバードでいいんじゃない?」という発言があり、採用しました。

当時では○○動物病院がほとんどだったので、リトルバードという屋号は珍しくわかりづらいかなと、鳥と小動物の病院をつけています。

また、リトルバードは、Little Animal & Bird Clinicの略ですが、あまり知れ渡ってはいません。

Q3.鳥と小動物の病院 リトル・バードの主な診療動物の内訳比率を教えてください。

現在は9割が鳥です。その5割がセキセイインコで、文鳥、オカメインコ、ラブバードと続きます。当院は、フクロウ類が多いのが特徴です。

Q4.フクロウ類が多い理由を教えてください。

学生時代に野鳥調査、特に猛禽類を対象とした調査を実施しており、猛禽類への興味が深かったことが理由の一つです。また、昔中野に芸術家のあつまる「動物堂」といういろいろな動物が飼育されているショップがあり、メインはフクロウでした。そのお店は残念ながらなくなりましたが、フクロウの販売は継続され、自分はそのフクロウたちの医療担当でした。そのようなことから、フクロウ類の診療は得意なところです。

Q5.鳥と小動物の病院 リトル・バード以外に2022年に大田区田園調布に「鳥の病院 リトル・バード 田園調布院」を開業されましたが、2つの病院の位置づけや役割の違いを教えてください。

豪徳寺院は、月曜休診ではありますが、365日獣医師が勤務し休日も緊急対応しています。完全予約制としていますが予約外の救急も受けています。また夜中も毎日入院回診が行われています。

μCT(写真3)なども備え、麻酔外科、抗がん治療(写真4)、難病対応も行っており高度医療施設の側面もあります。

全国の動物病院から紹介を受ける2次診療、エキゾチック動物や鳥の専門病院から検査や外科などの紹介を受ける3次診療(写真5)を行うセンター病院です(「なんちゃってセンター」ではなく)。

一方、田園調布院は、一次診療のサテライト病院です。原則予約外診療は行っておらず、入院対応や高度医療は豪徳寺院へ移送あるいは紹介となります。

web予約制で診療数を限っていますので、健康診断だとしてもじっくり時間をかけて対応できるので、わたしの心の癒しになっています。

田園調布院はラボが併設されており、診療の合間に研究やPCR検査(写真6)を行っています。

Q6.豪徳寺院では夜中も毎日入院回診をされているとのことですが、夜中にも回診される理由を教えてください。

鳥は夜中に亡くなるケースが多いことと、日中の診療以外にも強制給餌や点滴を実施することが必要なため、夜中も回診しています。

Q7 抗がん治療をされているとのことですが鳥に多いがんは何でしょうか?

リンパ腫が多いです。それ以外に扁平上皮癌もあります。

Q8.豪徳寺院は2次診療や3次診療を行っているとのことですが、それらにはどのような症例があるのでしょうか?

外科手術の依頼が多いです。鳥類は繊細で治療中に亡くなることもありますので、外科手術の実施を怖がられる先生も多いのも現実です。

Q9.難病対応もされているとのことですが、具体的にどのような疾患を指すのでしょうか?

例えば抗酸菌症です(写真7)。

Q10.田園調布院では併設ラボでPCR検査を実施されているとのことですが、どのような場合にPCR検査を実施されているのでしょうか?

感染症が多いです。

Q11.小嶋先生がコンパニオンバードを診療するきっかけを教えてください。

紆余曲折がありすぎて全部は語りつくせませんが…

当初は、野生動物保護施設の獣医師としてキャリアをスタートしました。その施設では野生動物に限らず、犬、猫、エキゾチック動物、鳥の診療も行っていました。

当時は鳥に関し医療情報がほとんどなく、野鳥や飼鳥がバタバタと死んでいく状況を目にして、これは犬、猫をやってる場合じゃないなと鳥に専心することにしました。

Q12.コンパニオンバード飼育の現況を教えてください。

かつての日本では、小鳥は誰でも飼育したことのある最も一般的な飼育動物でした。

ところが鳥イフルエンザの影響で多くのショップが閉鎖され、現在はコアな鳥好きのみが飼育している状況で安定しています。

世帯的には2%ぐらいでしょうか。

現在の飼育者は熱心な方ばかりなので鳥にとっては幸せなことだと思います。

Q13.コンパニオンバードを診療する上で気をつけていること、診療の難しさは何でしょうか?

すべてに気を付けなければいけないと思っています。命を扱う医療は、すべからくどの分野でもそうだと思います。

他の動物を久しく診療していませんので比較できないのですが、鳥は他の動物よりずっとシビアなのかもしれません。

他のエキゾチック動物の先生方はみなさん口をそろえて「鳥がダントツで難しい」「鳥の飼い主さんはダントツで気難しい」とおっしゃいますね。

毎日何件も、担当している患者が亡くなるような仕事は、鳥の医療だけかもしれません。ただ自分にとってはこれが日常であり難しいと思ったりもしないです。

Q14.鳥は何故、他の動物に比較してシビアな生物だと感じられるのでしょうか?

進化の過程にその秘密があるのではないかと考えます。脊椎動物が陸上に適応していく過程で、両生類は有羊膜類に進化し、哺乳類、爬虫類、恐竜類へと分岐します。さらに恐竜類のうち飛行に最適化した群が鳥類へと進化します。この地上から空中への適応の過程で、軽量化・高代謝・高度な呼吸効率など、大きな機能的変化が生じています。例えて言うと哺乳類が携帯電話のガラケーに対して、鳥類はスマートフォンというイメージです。

鳥類は飛ぶために代謝が速い構造となっており、たくさんの機能を装備している軽量型のスマホです。車で例えるならば哺乳類が普通車であり、鳥類はF1の車のように速く走る代わりに、衝撃などの際は普通車に比べて大きく損傷しやすいイメージです。

また、鳥類と犬の麻酔事故(麻酔関連死亡率)においては、鳥類の方が犬よりも遥かに高いリスクを伴います。鳥類の約1.76%〜3.95%(研究によっては最大7.7%の報告も)に対して犬類は約0.05%〜0.65%であり、一般に鳥の麻酔リスクは犬、猫と比べて約10倍から20倍高いと言われています。

参考文献「Outcome following inhalation anesthesia in birds at a veterinary referral hospital: 352 cases (2004–2014)」をあげておきます。

以下、後編に続きます。

後編に続く

シリーズ「国内外の各分野で活躍されている獣医師」