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■【寄稿】国内外の各分野で活躍されている獣医師(10)~エキゾチックアニマル診療 アンドレ動物病院 戸﨑和成先生

2025-05-26 19:19 掲載 ・2025-05-26 19:43 更新 | 前の記事 | 次の記事

写真1

書類1、書類2、書類3

写真2、写真3、写真4、写真5、写真6、写真7

記事提供:動物医療発明研究会

インタビュアー・構成・執筆 伊藤 隆

動物医療発明研究会 広報部長/獣医師

国内外の各分野で活躍されている獣医師の先生方にインタビューを開始し、第9回目は、動物用医薬品メーカーのひとつであるZENOAQに勤務されている獣医師の先生方の記事を掲載しました。

今回は、栃木県の宇都宮市で開業し、犬、猫に加えエキゾチックアニマルも診療されている日本獣医エキゾチック動物学会副会長で、アンドレ動物病院の院長である戸﨑和成先生(写真1)にお話をうかがいました。

(取材日:2025年1月29日)

Q1.アンドレ動物病院の概要と名前の由来について教えてください。

1995年5月に開業し、今年で30年となります。現在、私を含めて獣医師6名、愛玩動物看護師6名、アルバイト1名です。年間症例数は、約14,000件(平均1,166件/月)です。

1994年に大学生時から付き合いのあった栃木県宇都宮市出身で1学年下の戸﨑啓子さんと結婚し、私は戸﨑和成に進化しました。そして1995年に嫁の実家の近くで開業しました。

病院名はもともとの自分の名前でない戸﨑をつけることに抵抗があり、嫁が飼っていた猫の名前が「アンドレ」でそこから「アンドレ動物病院」としました。

猫の名の由来は私が大好きだったプロレスラーの「アンドレ・ザ・ジャイアント」で、「アンドレ」という猫の名はすべての人にすぐに憶えてもらえて、かなりのインパクトを感じていましたし、開院時にはすでに亡くなっていましたが、「アンドレ」は二人が共感する名前でした(嫁も反対しなかった 笑)。

全国でアンドレ動物病院は1件のみだと思いますし、すぐに覚えてもらえていると自負しています。

ところで、私は三重県志摩市という片田舎出身で父は大工、母は一人で床屋をやっており、母がやっていた床屋の店名は「美空理容所」という名でした。幼い頃父に「なぜ美空なの?」と聞いたところ、「人気がある美空ひばりさんの名前にあやかった」と言っていたことを開業後だいぶ経ってから思い出し、「アンドレ」とまったくコンセプト(インパクト勝負)が同じことに気づきました。

幼少期に近所の人々から「美空どこやの息子」と散々呼ばれていたのに、自分が床屋の息子であることを忘れ、故郷を捨て、名前を捨て、親への感謝を忘れ、うぬぼれていた自分に気づき愕然としました(笑)。

Q2.アンドレ動物病院の診療動物の内訳を教えてください。

その時代により異なりますが、現在は犬34%、猫19%、ウサギ19%、鳥8%、ハムスター6%、フェレット5%、モルモット3%、チンチラ3%、ハリネズミ2%、デグー1%、という来院数の割合です。なお、当院では現在、爬虫類の診療は行っていません。

Q3.エキゾチックアニマルを診察するきっかけを教えてください。

開院時の1990年代は、ハムスターとフェレットが流行っており、飼育数が多く、開院時に暇ということもあり、既存の病院より積極的に診察していたので、来院数が増加したことが、きっかけです。

また、1999年に発足したエキゾチックペット研究会(現、日本獣医エキゾチック動物学会)でいろいろな先生と知り合えて、それまで暗中模索であったエキゾチックアニマル診療を光明のもとで継続できたことも大きいです。

Q4.エキゾチックアニマルの人気の変遷と今後の動向を教えてください。

爆発的に流行ると廃れるのも早いような気がします。

ひと昔前はフェレットやプレーリードッグで、最近はハリネズミやフクロモモンガがその傾向にあるかと思います。ウサギは昔から飼育され徐々に増加してきており、まだ減少傾向は感じません。チンチラ、モルモットもまだ減少傾向ではないと思います。爬虫類も一定数の飼育者がいますが、地方都市では爆発的な流行は無いかと思います。変わったところで、最近ミーアキャットはたまに診察する機会があります。

Q5.エキゾチックアニマルを診療する上で気をつけていること、診療の難しさは何ですか?

個々の動物種による特徴があり、それに対応した知識・経験や工夫が必要となります。

また、エキゾチックアニマルは犬、猫より諸検査ができないことも多く、病状の深刻さを判断することが難しいです。そのために飼い主が飼育動物の深刻な状態を認識・理解していないとトラブルが生じることもあります。

ウサギは自身の強烈なキックで腰椎の骨折などを引き起こすことがあり、事前のリスク説明と暴れさせない注意と保定者のテクニックが必要となります。

ハリネズミは丸まってしまうので、麻酔をかけないと検査や処置ができないことが多いです。

フクロモモンガは自咬症が多いのですが、手足が器用で自咬を防止するためのエリザベスカラーの維持が難しい生物です。当院では試行錯誤、工夫して自作のカラーを作成装着しています。

小鳥は触診するだけでもかなりのストレスになり、検査や治療行為の後、飼い主の期待に反して、最終的に死亡することもあります。

犬、猫もそうですが、処置や治療が状態の良化につながらない場合、飼い主に理解されずに誤解を招くことがあります。

その誤解を招かないように飼い主に分かりやすいインフォームドコンセントをしっかり行うこと、日々精進すること、うまくいかなかったことを次に生かすこと、すなわち経験を生かすことが大切であると認識することが重要だと思います。

Q6.インフォームドコンセントの内容を具体的に教えてください。

「ウサギは暴れて大ケガをすることがあり、脊髄を損傷すると死亡します」「ウサギの雌は子宮癌になる可能性が高いです」「ウサギは胃腸障害(腸閉塞)を起こして急死することがあります」などウサギの性質を理解して同意していただけるための文書を作成し、初診時に飼い主に読んでもらい、ご理解をいただいた上で署名をいただいています(書類1)。

それ以外にも、「ウサギの麻酔下での歯科処置に関しての承諾書」(書類2)、「チンチラ・モルモット・デグーの麻酔下の歯科処置に関しての承諾書」(書類3)などを作成し、処置前に飼い主に方法やリスクを十分理解していただいた上で処置に入るようにしています。

飼い主に書類を読んでもらうだけでなく、口頭でも説明するのですが、書類作成したことにより、説明抜けが無くなり、説明者における個人差が少なくなりました。そして、飼い主に普段から暴れないようにウサギを慣らすことを心掛けてもらえるようになり、歯の過長の場合の早めの来院・相談にもつながりました。また、当院で診たウサギが子宮癌で亡くなることを減らすことにもなりました。

Q7.来院するエキゾチックアニマルの主な疾患を教えてください。

  • ウサギ:胃腸障害、歯科疾患、雌の子宮疾患
  • 小鳥:胃腸障害、雌性疾患、外傷
  • ハムスター:後肢骨折、体表の腫瘤、子宮疾患
  • フェレット:インスリノーマ、副腎腫瘍、心疾患、リンパ腫
  • モルモット:胃腸障害、歯科疾患、卵巣疾患、尿道結石
  • チンチラ:胃腸障害、歯科疾患
  • ハリネズミ:外部寄生虫寄生、皮膚感染症、子宮疾患、扁平上皮癌
  • デグー:歯科疾患、皮膚疾患、外傷

Q8.田園調布動物病院 院長の田向健一先生が監修されている漫画本の『珍獣のお医者さん』をご存じですか?

読んでいます(写真2)。

Q9.エキゾチックアニマルの診療で参考にされている国内外の本や学術雑誌を教えてください。

下記の本を参考にしております(写真3)

§国内書籍

  • 「エキゾチック臨床シリーズ」(株式会社学窓社)
  • 「ウサギの医学」(株式会社緑書房)
  • 「モルモット・チンチラ・デグーの医学」(株式会社緑書房)
  • 「VEC(廃刊)」(株式会社インターズー、現 株式会社 EDUWARD Press)
  • 「エキゾチック診療(廃刊)」(株式会社インターズー)

§海外書籍

  • Exotic Animal Formulary(Elsevier)
  • Textbook of Rabbit Medicine(Elsevier)
  • Ferrets, Rabbits, and Rodents(Elsevier)

§日本獣医エキゾチック動物学会

  • 学会誌「日本獣医エキゾチック動物学会誌」
  • 夏・秋定期セミナーの講演およびテキスト
  • 症例検討会

Q10.アンドレ動物病院では社会貢献をされていると聞いています。どのようなことをされているのでしょうか?

市内の中学校では2年生時に5日間の学外体験実習があり、受け入れ可能人数は少ないですが、20年以上可能な限り受け入れています。年間5~8校です。

当院の実習テーマは「中学生の科学的思考のスイッチを入れる」で、下記の体験プログラム(写真4、写真5)を用意しています。

  1. 顕微鏡検査実習:血液塗抹を観察し、各血球の役割、構造、診断にどう繋げるのかを学び、生命の構造の一端を知る。
  2. X線検査実習:どのように撮影し、どのように映り、どう考えて診断するのかを体験。
  3. エコー検査実習:エコー像はどのように映り、どう解釈するのかをカップのフルーツ入りゼリーを用いて体験。
  4. メス実習:鶏肉を用いてノーマル金属刃メス、電気メス、バイポーラ、レーザーメスで切り比べを体験。
  5. 内視鏡実習:自作の胃の模型を使い、胃内にあるフィギアをつかんで摘出する体験。
  6. 手術見学:避妊手術などの開腹手術のタイミングに合えば、手術の手順、手術の実際を見学する。腹腔内臓器をじかに見る体験となる。

撮りためた体験時の様子、血液塗抹像、X線検査像、エコー像の写真などをディスクに落とし、最終日に本人と担任の先生に渡しています。画像は体験後の校内プレゼンテーションに使われています。中学生たちの記憶に残るようにとも思っています。

院内ミーティングで中学生に初日は自己紹介、最終日は体験の感想を述べてもらっています。誰が指導者だったかにもよりますが、多くの生徒が内視鏡実習が一番面白かったと言います。また、スタッフ各人から実習の指導者、先輩として一言ずつ語ってもらいます。社会貢献をより実感できるようです。

体験する中学生に科学的思考刺激を与えることはもちろんですが、受け入れ、指導するスタッフにも初心を思い出してもらうことができ有益であると感じています。

また、体験中学生のなかには、獣医学科や愛玩動物看護学科に進学した生徒もいて、自分たちの仕事が生徒たちの目標とされる喜びと誇りをスタッフが感じられていると思っています。

中学生時に体験実習に来た生徒が愛玩動物看護師になり、当院に就職し、結婚、出産を経て現在も当院で働いているスタッフがいます。

Q11.勤務されている若手獣医師に期待することは何ですか?

いろいろなことに関して、観察力や分析力を上げて、学術的にも技術的にも精神的にも人間的にもバランスのよい獣医師、人間になってもらいたいです。

獣医師は学術的な向上心を持つことはもちろんですが、飼い主の気持ち、動物の気持ち、スタッフ同僚(上司も含む)の気持ちを素早く読み取り、行動に移せる判断力を磨き、人間力を上げて欲しいです。

これらの内容は私自身の目標でもあります。私において上司のところは(嫁)となります(笑笑)。

Q12.愛玩動物看護師が国家資格となりましたが、期待することは何ですか?

国家資格になったことにより、「できること」が明確にされたと思います。「できること」がしっかりできるように向上心をもってチャレンジしてもらいたいです。

どの会社でもそうですが、病院(就職先)の宝となることが病院のため、自分のために繋がります。飼い主、動物、スタッフ、院長に認められ必要とされることは、「やりがい」にもつながります。

Q13.先生が大切にされていることは何ですか?

  • ①よい仕事をすること(日々精進、臥薪嘗胆)
  • ②飼い主と飼育動物が幸せになること
  • ③トラブルを未然に回避すること

スタッフにも伝えていることですが、小さい頃から勉強して、大学に入ってからも卒業してからも勉強して、お父さんお母さんにたくさん出資してもらい、やっと獣医師になって、動物のため、飼い主のためにと診療しているのに、飼い主に誤解されたり、トラブルになりクレームを受けることもあります。こんな悲しいことはありません。

飼い主の誤解をまねかないよう、知識・技術向上のために日々精進し、しっかり説明し、飼い主の希望にそって、よい仕事をして、飼い主に「ありがとう」と言ってもらえる獣医師、病院にしたいと思っています。

Q14.今後、チャレンジしたいことは何ですか?

現在は日々の病院業務に加え、日本獣医エキゾチック動物学会副会長の仕事を全うしたいと思っています。それ以降のチャレンジは模索中です。

Q15.開発された器具について教えてください。

ウサギ・チンチラ・モルモット・デグーの小型の開口器をデザインしました。

これらの動物は切歯だけでなく臼歯も一生伸び続け、各歯列は正しい十分な咬耗によって良い塩梅に維持されます。歯槽部に異常が生じると伸展方向も異常になり、その伸展・先鋭化した歯先で舌や頬を傷つけ、潰瘍を生じ、食欲不振となります。治療は伸びた歯を削ることになります。麻酔下で行う場合、臼歯にアプローチするために、顎を上下に開く器具と頬を左右に開く器具が必要となります。ウサギの頬を開く開頬器はすでに販売されていましたが、チンチラ・モルモット・デグーには大きくて使えませんでした。

当初、人用鼻鏡のブレードを薄く削って応用していましたが、臼歯切削を繊細に行うことは困難でした。それでいろいろなオリジナル器具を製作している医療機器会社のシンメディコ株式会社に相談したところ製作・商品化していただくことになりました。

ただ作製するとなったら、具体的なイメージや寸法などが必要になります。基本的な機能的デザインはウサギ用のものと同じですが、小さく、狭く、奥深いチンチラ・モルモット・デグーの口に合うように具体的なデザインを模索しました。

動物種や口内状況の変化に対応できるようにブレードの幅を大中小の3種にするアイデアを出して、ちょうどよいブレードの形・幅・長さ、開頬する力(スプリングの力)、手で持って使用するために持つ部分の長さなどを筆者が模索・決定して製品作製をしていただきました。

詳細はシンメディコ株式会社のWebサイト「戸﨑開頬器3点セット」、SAMI NEWS No.67をご参照ください。

本製品(写真6)を使用するようになって、難しかった最奥の臼歯の切削など、思うようにできなくてストレスに感じていた処置にしっかり対応できるようになりました。本製品をまったくのゼロからの発明とは言いませんが、「必要は発明の母」を実感し、試行錯誤の上、完成しました。

自分にとって素晴らしい製品を製作していただいたこと、また、多くの先生にも使っていただき大変うれしく思っています。

Q16.最近気になる疾患や治療方法などはありますか?

ハムスターの便中に見られるトリトリコモナス原虫に対して、新しい薬を用いた評価を行っています。ハムスターの便中に見られるトリトリコモナス原虫は病害が無いとされており、良便からも多数観察されます。ただ下痢の便では波動膜を活発に動かしている個体が多く観察されることが多いです。

ハムスターの下痢にはメトロニダゾール溶液の投与を行っていましたが、メトロニダゾールはとても苦く、吐き出してしまう個体が多く、投薬が困難でした。

そこで、メトロニダゾールと同系統の原虫駆虫薬であるRonidazoleを主成分とする鳩の原虫病の駆虫薬で水に添加するタイプのものを(国外製品)試験的に院内ハムスターに投与しています(写真7)。

自らも味見しましたが、Ronidazolもかなり苦いですが、メトロニダゾールほどではありませんでした。病院で飼育しているハムスターに投与しましたが、比較的嫌がらずに投薬できました。

投与中はトリコモナスは観察されなくなりました。ただ、私が調べた限りでは、豚、鳥、爬虫類での投与量の記載は確認できましたが、ハムスターは見つけられていません。

Q17.所属されている国内外の学会を教えてください。

  • 日本獣医エキゾチック動物学会
  • 日本獣医皮膚科学会
  • 日本獣医麻酔外科学会
  • 日本獣医がん学会
  • 日本獣医療倫理研究会
  • 動物医療発明研究会

Q18.副会長をされている日本獣医エキゾチック動物学会の概要を教えてください。

1999年に各個人が暗中模索していたエキゾチック動物診療の向上および情報交換を目的にエキゾチックペット研究会が発足し、2018年11月から学会に移行しました。

本学会は現在約800人の会員がいます。犬・猫以外の飼育小動物に関する獣医療の研究、教育並びに学術の推進を図ることにより、わが国における小動物獣医療の発展に寄与することを、学会理念としています。

通常、1年に3回の学術大会(症例検討会、夏季セミナー、秋季セミナー)を開催しています。症例発表会と秋季セミナーは東京、夏季セミナーは東京以外の場所で行っています。

また、「日本獣医エキゾチック動物学会誌」を年1刊発行し、エキゾチック動物の診療に有用な情報提供を行うと共に、エキゾチック動物の獣医学におけるエビデンスの蓄積に寄与しています。

現会長は、三輪恭嗣先生(日本エキゾチック動物医療センター・東京)で、副会長は、田向健一先生(田園調布動物病院・東京)と私、戸﨑の2名で、理事は13名で運営しています。

Q19.日本獣医エキゾチック動物学会での戸﨑先生の活動内容を教えてください。

2022年10月、日本獣医療倫理研究会(JAMLAS)主催の年次大会(当学会とのコラボ大会)にて私を含む4名が講演するための資料作成のために、ウサギ・小鳥の診療を行っている日本獣医エキゾチック動物学会の会員獣医師に対し、「ウサギ・小鳥診療の現状」についてアンケートを作成し、調査を行いました。

調査期間は2022年7月29日~8月20日、ウサギ30、小鳥14の設問を作成し、ウサギ114病院、小鳥98病院より回答を得ることができました。

多くの病院から返答をいただき、各病院がどのような意識でウサギ・小鳥の診療をしているのかが、選択肢を細かく設定したことにより浮彫になったこと、自身の施設のやり方がどのくらいの施設と同じか、あるいは異なるかが判明し、有益でした。その結果の詳細は、月刊誌「mVm」(Vol.33 No.219、2024年7月号、p29~35、株式会社ファームプレス)に掲載されております。

日本獣医エキゾチック動物学会では何度か講演をさせていただいておりますが、最近では、2024年7月の夏セミナー「モルモットの臨床」で「歯科治療」をテーマに講演いたしました。先に述べましたが、モルモットの切歯・臼歯過長の治療は、麻酔下にて臼歯を切削して整えなくてはなりません。今まで試行錯誤してきましたが、戸﨑開頬器を使い、その成果を感じる安定したやり方にやっと到達しました。講演では、私が行っているその具体的な方法をご紹介させていただきました。

夏セミナーは基本的に東京ではない都市で開催され、2024年は岡山市で実施されました。会場参加者は約100名、ウェブ配信参加者は200名と多くの先生方に見てもらえました。

夏セミナーは毎回テーマと場所を変え、2025年は名古屋市で(参照:2025年夏季セミナー in 名古屋)、2026年は札幌市で行う予定です。

Q20.日本獣医エキゾチック動物学会の副会長として今後目指されることは何ですか?

現会長の三輪恭嗣先生の理念のもと学会の向かうべき方向を明確にし、諸作業を行う理事役員のプライスレスな仕事負担を軽減、明瞭化するためのシステム・マニュアル化をしており、学会が今後も発展するための人材の確保と育成、および会員の要望に応えられるように常に考えています。

また、日本獣医エキゾチック動物学会認定医(ウサギ)の認定制度の準備をしています。私、戸﨑が認定医委員長の任にあり、当面はこの制度を軌道に乗せることを目指しています。

Q21.その認定制度を始める理由や背景を教えてください。

ウサギ診療の獣医学的向上と発展につながることに加え、飼育頭数が増加しているウサギの飼い主の要望に応えるため、学会として一定の知識や診療レベルを備え、ウサギ診療に真摯に向き合う獣医師を育成し、認定することが社会貢献につながると考え、本制度を立ち上げることになりました。

Q22.エキゾチックアニマルの診療を希望される学生さんへのメッセージをお願いします。

学生の間は次の試験や国家試験をクリアすることが目標となりますが、獣医師になってからは、学術的なことだけでなく、人生の目標を自分で定めて継続的に努力する必要があると思います。

また、臨床の場では飼い主とのコミュニケーションが大切で、学生時では接触しなかったいろいろな年代層の人々(スタッフを含む)とコミュニケーションを上手にとらなくてはなりません。

書籍やセミナーで多くの知識や情報を習得することも大切ですが、犬、猫の診療と同様にエキゾチック動物診療においても、本に載っていない現場での知識や経験が最も重要です。

これらはそれぞれの病院によって異なることも多く、院長などの指導医の経験・知識・設備や病院内環境に大きく左右されるし、自身の志や能力や努力にも左右され、獣医師としての能力は短時間では習得できないと思います。

多種多岐にわたるエキゾチック動物診療は犬、猫の獣医療の知識に加え、各動物種の特異的な特徴を理解し、いろいろな工夫や臨機応変で柔軟な対応も必要で大変ですが、そこが面白いところでもあります。

犬、猫もそうですが、できればそれらの動物に興味をもって飼育して、自分が飼い主になって動物の生態や可愛さ、飼い主の気持ちを理解することも重要です。

編集後記

今回は、エキゾチックアニマルを診療されている獣医師の先生の第1回目として戸﨑和成先生にインタビューを行いました。

エキゾチックアニマルを診療する上で気をつけていること、診療の難しさについて尋ねました。エキゾチックアニマルは犬、猫より諸検査ができないことも多く、病状の深刻さを判断することが難しく、トラブルを少なくするためには、飼い主が飼育動物の深刻な状態を認識・理解していることが重要であるということは、私にとって新たな発見でした。飼い主とのトラブルにならないような十分なインフォームドコンセントと、「書類1,2,3」の承諾書への診療前の飼い主の署名は、とても重要なことだと思いました。

社会貢献のひとつとして、長年、宇都宮市内の中学生を対象とした学外体験実習を受け入れていることは、素晴らしいことです。高価な機材である内視鏡についても、惜しみもなく中学生に実習を体験させることは、なかなかできないことではないでしょうか。

ウサギ・チンチラ・モルモット・デグーの小型の開口器をデザインして商品化されたことと、ハムスターの便中に見られるトリトリコモナス原虫に対して新しい薬を用いて評価を行っているという限りない探求心と行動力は、特筆すべきことだと思いました。

戸﨑先生は、日本獣医エキゾチック動物学会認定医(ウサギ)の認定制度を認定医委員長として取り組まれていますが、第三のペットと言われているウサギの認定医はとても重要であり、その診療が認定医によりスタンダート化されることは社会貢献に繋がるのではないかと思います。期待しています。

動物医療発明研究会は、会員を募集しています。入会を希望される方は、「動物医療発明研究会」まで。

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