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■【寄稿】獣医師の眼から見た水族館と動物園の魅力(20) マクセル アクアパーク品川

2025-12-18 13:52 掲載 | 前の記事 | 次の記事

写真1・写真2

写真3・写真4・写真5・写真6

写真7・写真8・写真9・写真10

記事提供:動物医療発明研究会

インタビュアー・構成・執筆 伊藤 隆

動物医療発明研究会 広報部長/獣医師

前回は、池袋のサンシャイン水族館の獣医師のインタビュー記事を掲載しました。

今回は、マクセル アクアパーク品川(写真1)に勤務されているシニアスタッフ 獣医師の渡邊文乃先生(写真2)にお話をうかがいました。

(取材日:2025年6月4日)

Q1.マクセル アクアパーク品川の特色を教えてください。

四季で変わる1Fゾーンの水槽展示、パフォーマンス演出は当館の特長の1つです。春は桜、夏は花火、秋は紅葉など四季折々の美しさを描いたデジタルアートで空間を彩り、圧倒的な世界観を創出。主役となる魚たちも各エリアのストーリーやコンセプトに合わせて選定し、【生きもの×四季】が織り成すオリジナリティあふれる水槽展示を展開しています。

パワーコンテンツの「ドルフィンパフォーマンス」は四季のみならず、昼夜でも内容が異なります。日中のプログラムは、ダンスや簡単な振り付けで会場一体となってお楽しみいただく“ゲスト参加型”の演出を取り入れ、夜は暗転した円形会場に360度プロジェクションマッピングを投影。四季折々の華やかな舞台でイルカたちがダイナミックなパフォーマンスを披露します(写真3、写真4)。

どちらのプログラムも“言語の障壁なく楽しんでいただきたい”という思いから、昼は参加型の要素を、夜はMCを入れず演出のみでストーリーを展開するといった工夫を取り入れています。

なお、2Fの常設展示も魅力あふれる展示がたくさん!トンネル型の水槽「ワンダーチューブ」には世界で唯一の展示となるノコギリエイの仲間「ドワーフソーフィッシュ」や大きな体で悠然と泳ぐ「ナンヨウマンタ」といった希少なエイたちをご覧いただけます。

Q2.各水槽や施設の特徴を教えてください。

主な水槽や施設を紹介いたします。

§1F

  • パークエントランス
  • 映像と水槽がコラボレーションした、アクアパークを象徴するウェルカムスペースがみなさまをお迎えします(季節により演出が異なります)。
  • ジェリーフィッシュランブル(写真5)
  • ゆらゆら漂うクラゲを季節ごとに変わる音と光で演出した幅9m、奥行35mの大空間です。神秘的な世界が体験できます(季節により演出が異なります)。
  • コーラルカフェバー(写真6)
  • 発光サンゴの水槽と映像演出が織りなす、幻想的なプロジェクションマッピングにつつまれたカフェバー。購入いただいたドリンクは、持ち歩いたり飲んだりすることも可能です。季節に合わせたオリジナルメニューも用意しています。
  • ドルフィンパーティー
  • 光と音楽につつまれたメリーゴーラウンド。イルカをはじめとした6種類の海の生きものたちに乗って、まるで楽園にいるかのような世界を楽しめます。

§2F

  • ワンダーチューブ
  • 長さ約20mの海中トンネル。世界で唯一展示されているドワーフソーフィッシュをはじめ、ナンヨウマンタなどさまざまなエイが優雅に泳ぎます。
  • ワイルドストリート
  • カワウソ、ペンギン、アザラシなどが集結。それぞれの動物たちが楽しく遊びまわったり寝ていたり、自由気ままに過ごす姿を見ることができます。
  • アクアジャングル(写真7)
  • 世界のジャングルシーンを凝縮したエリア。淡水魚や爬虫類の仲間などを展示しています。
  • ザ スタジアム
  • 言葉の壁を越え、皆様にお楽しみいただけるイルカたちの最先端エンターテインメントと季節ごとのテーマや昼夜異なる傾向を凝らした演出でお届けします。

詳細はWebサイト「館内ガイド」をご参照ください。

Q3.コンセプトを教えてください。

“TOKYO最先端エンターテインメント”を施設コンセプトに、デジタルテクノロジーをはじめとする多彩な演出と生きものの調和で、エンターテインメント性あふれる水槽展示・パフォーマンスを展開しています。

Q4.飼育されている主な動物と魚を教えてください。

下記が主な動物と魚です。

§動物関連

  • イルカ(バンドウイルカ、カマイルカ、オキゴンドウ)
  • ミナミアメリカオットセイ
  • ペンギン(キタイワトビ、ケープ、ジェンツー、オウサマ)
  • コツメカワウソ

§魚関連

  • ナンヨウマンタ
  • ドワーフソーフィッシュ
  • ラージトゥースソーフィッシュ
  • グリーンソーフィッシュ
  • トラフザメ
  • ツマグロ
  • カクレクマノミ
  • チンアナゴ・ニシキアナゴ
  • クラゲ(ミズ、カラージェリー、アマクサ)等

Q5.ワンダーチューブには世界で唯一の展示となるノコギリエイの仲間である「ドワーフソーフィッシュ」がいますが飼育年数はどれくらいでしょうか?

前身の施設のオープン時、2005年から飼育されているので今年で20年経過しています。

Q6.ノコギリエイの仲間「ドワーフソーフィッシュ」、「ラージトゥースソーフィッシュ」、「グリーンソーフィッシュ」の3種類が飼育されていますが、その違いを簡明に教えてください。

体が小さく、雄と雌の2匹の個体が、ドワーフソーフィッシュです。ノコギリには18~27の鋸歯が等間隔に並びます。尻鰭の真上に背鰭があり、尾鰭は分岐しないのが特徴です(写真8)。

体が大きく、体色が緑色なのがグリーンソーフィッシュです。ノコギリには23~37の鋸歯が不規則に並びます。尻鰭の真上に背鰭があり、尾鰭は分岐しないのが特徴です(写真9)。

体が大きく、よく泳いでおり、体色が茶色なのがラージトゥースソーフィッシュです。ノコギリには14~24の鋸歯が等間隔に並びます。尻鰭より前に背鰭があり、尾鰭が上葉・下葉に分かれるのが特徴です(写真10)。

Q7.マクセル アクアパーク品川には何人の獣医師がいらっしゃいますか、また役割分担はどのようにされているのでしょうか?

現在は1名で全ての生きものの診察を行っています。

飼育業務は環境展示(魚類)チームに所属しており、獣医シフトと飼育のシフトを半々でこなしています。

Q8.渡邊先生が獣医師になられた理由とマクセル アクアパーク品川を就職先として選ばれた理由を教えてください。

獣医師になった理由は、海の生きもの(特に魚類)が好きで、その治療や繁殖、保全に貢献したいと考えていたからです。複数の園館を運営しており、飼育・繁殖実績も充実している株式会社横浜八景島に入社し、マクセル アクアパーク品川に配属されました。

Q9.海の生きもの(魚類)がお好きとのことですが、学生時代は魚に関する研究を何かされていましたか?

日本獣医生命科学大学獣医学部水族医学研究室でヒラメ養殖における主要な病気の一つであるエドワジエラ症の研究をしていました。

Q10.大学を卒業された後にすぐにアクアパーク品川に就職をされたのでしょうか?

いいえ。水族館の獣医師になりたくて頑張って勉強をしていましたが、最初からはなれず、別の職種に就いたんです。それでも諦めきれず再度挑戦して、今に至ります。ずっとやりたかったことなので、チャレンジして本当に良かったと思っています。

Q11.ホテル内にある水族館のため、魚の管理など難しさはありますか?

当館は海に隣接していないので、輸送してきた海水を使用しています。大量に海水を使えないため、水質を悪化させないように細心の注意を払って飼育をしています。

また、バックヤードが広くないので大型の車が中まで入れず、バケツリレーで魚類を搬入したり、大型魚類の搬入は閉館後に行ったりするなど魚たちとお客さまの安全に配慮して業務を進行しています。海獣類に関しては人工海水を使用しており、こちらは水質や塩素濃度に気を配って飼育しています。

Q12.飼育している海獣類や鳥類を診療する上で、参考とされているものは何でしょうか?

下記の本を参考にしています。

  • 『CRC Handbook of Marine Mammal Medicine』
  • 『エキゾチックアニマルの治療薬ガイド』
  • 『犬と猫の治療ガイド 私はこうしている』
  • 『腹部エコー検査 パーフェクトガイド』
  • 『鳥類の人工孵化と育雛』
  • 『鳥類の内科学と外科学』
  • 『爬虫類マニュアル』
  • 『エキゾチック臨床シリーズ』
  • 『Elasmobranch Husbandry Manual』
  • 『観賞魚マニュアル』

Q13.水族館で飼育している動物が多様化していますが、その対応として本の勉強以外に何かなさっていることはりますか?

自己研鑽として、エキゾチック(鳥、魚、爬虫類等)の動物も診療している動物病院に見学に伺うことがあります。

Q14.今後診療上、開発して欲しい医療器具、薬剤あるいは剤形、翻訳本、学術データはありますか?

下記のものを希望いたします。

  • 鳥類の血球計算ができる機械
  • 海獣類の抗菌剤投与時の血中動態
  • 海獣類でも使える長期間作用型の抗菌剤(セフェム系で1週間持続型)
  • 高濃度の錠剤

Q15.子供だけでなく大人も楽しめる施設は何かありますか?

当館の来場者の年代は20~30代が多いため、“大人用”としての施設は特段ありませんが、アクアパークで繁殖に成功した魚の赤ちゃんたちを集めた「リトルライフ」、海や生きものにまつわる特定のテーマを設け、“ディープ”に解説する「ワンダーリサーチ」は、エンターテイメントだけでなく学術要素の強い展示であり、元来水族館が好きな方もお楽しみいただけるコンテンツです。

Q16.渡邊先生が今後チャレンジしたいことは何でしょうか?

世界初となるドワーフソーフィッシュの繁殖を目指していきたいです。現在はワンダーチューブに水温変化をつけて繁殖行動を観察しています。

またノコギリエイは単為生殖もできるので、グリーンソーフィッシュやラージトゥースソーフィッシュの繁殖も同時に目指していきたいです。

Q17.集客のために何か企画されていることはありますか?

<特色>の部分でも記載しているとおり、四季折々でイベントを変え、何度お越しいただだいてもお楽しみいただけるような工夫をしています。

Q18.水族館の獣医師として就職を希望している学生へのアドバイスをお願いします。

たくさんの園館に実習に行くのがおすすめです。園館によって、飼育動物や医療機器の充実度合などが異なるため、自分のイメージする獣医師像とすり合わせるとよいと思います。

また、水族館獣医師といえども、小動物臨床の知識や技術は必須であるため、動物病院での実習経験は役に立つと思います。

Q19.今後、水族館として目指すものがあれば、また、そこでのご自身の役割についても教えてください。

今後も生きものの魅力という本質を当館らしく“エンターテインメント”を介してお届けし、国内外の数多くのゲストに魅力あふれる海の世界をお伝えしてまいります。

併せて水族館としてSDGsの観点からも、ゲストの海や生きものへの興味・関心のその先、海の環境について感じ・考えるきっかけも提供したいと考えています。

私自身の診療・ケアという役割については、治療するというよりは、動物たちが健康で幸せに暮らしていけるよう、サポートしていきたいです。

Q20.他の水族館や獣医大学との技術的な面での交流がありますか?

もちろんあります。大きな処置があるときはお互いに研鑽しています。また、大学に病理検体や遺伝子検査をお願いしたり、CTをとらせてもらうこともあります。

Q21.国内外で参考にしたい、あるいは是非訪問してみたいと思われる水族館を教えてください。また、その水族館を選ばれた理由を教えてください。

ノコギリエイを飼育しているオーストラリアの水族館に行って、どのような飼育方法や健康管理をしているのか見てみたいです。

編集後記

今回は品川駅から近いマクセル アクアパーク品川の渡邊先生へのインタビュー記事です。

マクセル アクアパーク品川は、“TOKYO最先端エンターテインメント”を施設コンセプトに、デジタルテクノロジーをはじめとする多彩な演出と生きものの調和で、エンターテインメント性あふれる水槽展示・パフォーマンスを展開している水族館でした。

中でも「ドルフィンパフォーマンス」は四季のみならず、昼夜でも内容が異なっています。日中のプログラムは、ダンスや簡単な振り付けで会場一体となって楽しめるゲスト参加型の演出を取り入れています。一方、夜は暗転した円形会場に360度プロジェクションマッピングを投影し、四季折々の華やかな舞台でイルカたちがダイナミックなパフォーマンスを披露しています。

昼と夜のプログラムも“言語の障壁なく楽しんでいただきたい”という思いから、昼は参加型の要素を、夜はMCを入れず演出のみでストーリーを展開するといった工夫が特徴だと思いました。

大人も楽しめるように、アルコールを飲んで楽しめる「コーラルカフェバー」などがあり、さすが、品川プリンスホテルに隣接している水族館であるなと思いました。

飼育されている動物として特筆すべきことは、トンネル型の水槽「ワンダーチューブ」で世界で唯一の展示となるドワーフソーフィッシュをはじめとした3種類のノコギリエイの仲間が飼育されていることです。飼育されているドワーフソーフィッシュ、ラージトゥースソーフィッシュ、グリーンソーフィッシュグリーンソーフィッシュの違いも今回取材を通じて理解することができました。

今後、世界初となるドワーフソーフィッシュの繁殖を目指されて、成功されることを祈念しています。

動物医療発明研究会は、会員を募集しています。入会を希望される方は、「動物医療発明研究会」まで。

シリーズ「獣医師の眼から見た水族館と動物園の魅力」