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齋藤忠夫・根岸晴夫・八田 一 編

『畜産物利用学』

2011年1月発行・オールカラー、A5判・320頁・定価 5,184円(税込)

評者 岩手大学名誉教授 内藤善久

書名が『畜産物利用学』とあったので、硬い教科書として読み始めたが、一気に面白く読むことができた。本書の読者を畜産物の科学を基礎から学ぼうとする学生と技術者を対象として書かれたとある。しかし、畜産の専門以外の人たちが読んでも十分興味をそそる本である。それは、内容が最新の情報を組み込み、同時に簡潔な文章と分かりやすいカラー写真や図・表を随所に組み込んでいることによるものであり、これは、編集代表者の齋藤忠夫氏の意向が強く反映されたことにあると考える。
本書は、第1章「乳の科学」、第2章「肉の科学」、そして第3章「卵の科学」と日本の畜産物の利用動向と合わせたページ比率となっており、それぞれには、基礎と検査、製造技術、機能、そして健康への寄与とが具体的に記載されている。
その一端を紹介すると、第1章の7.「牛乳と発酵乳製品の機能性と健康への寄与」では、牛乳のタンパク質アミノ酸スコアは100と理想的であること、それらのアミノ酸が牛乳のカルシウムの吸収を促進させたり、血圧のホメオスタシスを担っていること、また、日常の牛乳摂取量が多い人ほど、体脂肪率が低くなっていることをカラーの図・表を基に説明している。第2章の8.2)「日本の食肉生産と消費動向」では、日本の食肉生産量は260万トン程度であり、そのほとんどが輸入に頼っていること、また、日本国民1人当たりの食肉消費量は世界の中では81番目と韓国(64番)や中国(68番)よりも少ないとするデータが興味深かった。その理由については言及していなかったが、健康を志向していく国民としては良いことのように思われた。第3章の9.3)「日本の鶏卵生産と消費および流通の特徴」では、鶏卵は新鮮卵需要が多く、非貿易商品であること、わが国の鶏卵消費量は量的規模において世界のトップクラスであること、しかし米国からの輸入飼料穀物によって支えられていることから大型タンカーの入港出来る地帯に主要な鶏卵産地が発達してきたことが述べられている。以上のように各章ごとに基礎科学と併せて日本の畜産物の現況を分かりやすく記載されてある。
さらに、最後には「最近のトピックスと諸問題」と題して、日本の畜産物の利用に関しての話題が分かりやすく載せてある。例えば、日本人とくに加齢に伴った「乳糖不耐症」の人にはヨーグルトやチーズの利用を進めている箇所や、卵のコレステロールの摂取が心臓病のリスクを高めるとした説は誤りであること、などを指摘している。
以上のように非常に理解しやすい構成となっているので、教科書としてだけでなく、畜産物を食品として扱っている料理研究家や栄養士の人たちにも読んで貰いたい1冊である。

「獣医畜産新報」2012年1月号 掲載

唐澤 豊 編

『動物の飼料』

2004年1月発行・A5判・336頁・定価 4,320円(税込)

評者 北海道立北見農業試験場 技術普及部 菊地 実

本書のコンセプトは、編集者である唐澤先生が「はじめに」で述べられた次の内容で理解することができる。
「畜産業、栽培漁業、養蚕業などの動物産業の目的は、動物を介して私たちの生活に欠くことのできない食料、生活資材、生理活性物質などを生産することです」。さらに、「安全で安心な、そして栄養価の高い生産物を得るためには、家畜は栄養素に富み安全な飼料を摂取し、自身が健康でなければなりません。私たちの命を育み健康を支える畜産物や水産物は、安全で栄養価の高い飼料が確保され、これが動物に適切に給与されることによって初めて達成されます」。「安全で栄養価の高い食料を生産するための飼料、環境に負荷をできるだけかけない飼料が求められています。したがって、このような観点から、飼料原料の選択、管理、加工、貯蔵、配合、給与法などの再評価をする必要が出てきました」。 まさしく、この2つの文章が本書の意義と特徴を表している。
本書の内容は、飼料学、栄養学、それらに必要な情報の全体像を提供するものであり、部分に特化した事項は専門書に委ねる内容である。本書のコンセプトを思い出していただきたい。本書の構成は、動物の飼料に求められている考え方を前面に出し、それぞれの分野で知見を整理・統合したものである。しかし、本書を入門書ととらえるのは誤りであろう。用語を丁寧に定義しながら解説を進めていく構成は、本書に用語解説の機能が有ることを示す。換言すれば、発想が広がる構成、問題解決のヒントが得られる構成、と言えるだろう。その機能を充実させているのは、適切に選択された索引である。
「I.飼料とは」に示された飼料に求められる9つの条件は、飼料を考える上での普遍的な概念であり、良い飼料とは何かを考える重要なヒントになるであろう。
「III.飼料の生産と流通」では、我が国の畜産が脆弱な飼料基盤の上に成り立っていることを提起し、「IV.飼料資源」と「V.飼料加工・製造」では、我々には食品副産物等々の未利用資源が大量にあることを気づかせてくれる。
「VI.飼養標準、栄養要求量」「VII.飼料設計・配合」は、動物に適切に飼料を給与することは科学であり、しかも単純ではないことを具体的に実感できる内容である。
本書の特徴の1つである安全と品質管理は、約20%のページを使って「VIII.飼料の安全性」と「IX.飼料の品質と品質管理」で述べられており、このテーマの重要性が示唆される。
本書の内容で残念であったのは、「資料」編の「飼料資源一覧」の写真である。カラー版であれば、さらに理解を得やすかったと思われる。しかしながら、このことで本書の価値が下がるものでないことは明らかである。

「獣医畜産新報」2005年4月号 掲載

森田琢磨・酒井仙吉・唐澤 豊・近藤誠司 共著

『“家畜”のサイエンス』

2002年1月発行・A5判・202頁・定価 3,672円(税込)

評者 財団法人畜産環境整備機構参与 渡邉昭三

本書は家畜の動物学的側面に焦点を絞った読み物である。著者の一人は、過去に『畜産学』と『新版畜産学』の2冊を編集・執筆した経験に基づき、今回は畜産学の教科書ではなく啓蒙書として体系的記述を避け、話題形式とし各話題を見開き頁に納めることによって読みやすさを狙ったと序文で述べている。軽妙な装丁と画期的な企てを歓迎する。
評者は、この本を学生の副読本、あるいは一般の読者の啓蒙書として位置付け、話題の選択とそのタイトルがぴたりと記述内容を予測させるか、内容記述が取っ付きやすいか、すなわちよく消化されて、「お話し化」されているかの視点で通読してみた。読者サービスの新知見も折り込み、全体として著者の試みは概ね成功とみてよかろう。しかし、この企てが一般の書物にくらべていかに困難であるかも感じさせる。まず話題の選択は全般に適切と思われ、話題のタイトルも概ね可とするが、一部に包括的抽象的きらいのあるものがあった。記述の細部にわたって見ると、話題の抽出分野により、読みやすさの成功度に高低があることが伺われる。育種分野では、話題のタイトルが砕けている割に説明の内容が読者の生活用語に関係が薄いためか、お話し化に苦労の跡が伺われる。その点家畜栄養・畜産物分野では、日常生活用語に根ざすため、最もお話し化に成功している。生態・行動学分野もかなりに読み物化に成功している。
読者は啓蒙書として楽しく通読できるであろう。是非ご一読また学生諸君への推薦を提案する。

「獣医畜産新報」2002年5月号 掲載

鎌田信一・清水 晃・永幡 肇 編

『動物の衛生』

2001年1月発行・A5判・356頁・定価 4,320円(税込)

評者 財団法人畜産環境整備機構参与 渡邉昭三

動物生産学科の学部教育では、健康な家畜にどのようにしてその個体あるいは集団の遺伝的能力を発揮させるかが中心となる。したがって、家畜の健康を障害する負の側面すなわち感染病、生産病等の体系的カリキュラムには、なかなか手が回らなかったのが現実である。
最近の家畜家禽飼養規模の大型化・集団化、高い飼育密度、管理技術の集約化の現状から、獣医学の基礎教育を受けてない動物生産学科出身の畜産技術者に、新しい「動物の衛生」の体系的知識と生産の現場での疾病予防・防疫の適切な判断力・実行力が求められる。
本書の評価すべき点の第一は、動物生産学科の学生に対して、従来のような獣医学教育体系からの部分的借用でなく、動物生産学科の本来的カリキュラムとして「動物の衛生」教育の構成を目指し冒頭の制約を克服しようとする画期的な編集であることである。
第二に、情報化の時代における教育の現実論として、学生諸君は既製品の情報に対して反応する傾向が強く、「動物の衛生」のように多くの専門分野から基礎事項を抽出して、自ら知識体系を組み上げるといった学習態度に多く期待することは無理である。本書は1冊に必要十分な記述をした権威ある教科書の出現として高く評価したい。
第三には、本書の構成の最大の特色は、編者も序文で言っているように、感染病の成りたち、発病のしくみ、生体防御機構の記述が、「衛生学」の基礎として素晴らしい。これらの章を十分理解すれば、動物の病気について畜産専門家としての基礎を身に付けたことになろう。現場での動物の疾病予防対策としてのワクチンと消毒についての記述も妥当である。家畜の感染病の病因別総リストも広範に整理されており、畜産技術者の座右の書として役立つであろう。各論への中間点としての家畜の生産病においては、現下の高位生産に伴う代謝障害のメカニズムが理解し易く纏められている。
第四に各論としての生産衛生では、畜種別に実用事項が記述されており、生産現場におけるHACCP、輸送ストレスの記述が新しい。畜産食品の安全性も食中毒と抗菌剤の残留問題について最近の知見をいれて纏められている。
第五に現在の話題として、新興・再興感染症、狂犬病、生菌剤、環境ホルモン、地球温暖化、キタキツネとエキノコッカス等の最新情報の記述が楽しい。
最後に、各章の著者、編集者の意欲のなせるところで、特に基礎的事項の記述は初学者にとっては一部難解と思われるし、全般に記述量が多く、予想される講義時間(単位数)からみて、講義担当者の重点の選択と、基礎事項の平明な説明の工夫が、本書の教室における価値を決めるであろう。学生諸君には、卒業後も護身用となる教科書として、すでに畜産の現場にある技術者にとっては、格好の復習書として自信をもってお薦めする。

「獣医畜産新報」2001年9月号 掲載

伊藤敞敏・渡邊乾二・伊藤 良 編

『動物資源利用学』

1998年1月発行・A5判・326頁・定価 4,320円(税込)

評者 財団法人畜産環境整備機構 畜産環境技術研究所所長 渡邉昭三

21世紀への畜産資源の利用の展開
21世紀に向かって、斯界の伝統的基本と新規情報を集大成した、手頃な大きさの畜産資源の利用展開のテキストが世に出たことは、畜産界にとってこの上ない喜びである。かっての畜産物利用学は畜産の出口としての加工の技術書であった。
国民経済の発展に伴い、畜産物は以前の栄養食品・贅沢食品の位置を離れて、美味を求めての食生活の多様化と消費者の日常の健康に対する配慮から、その機能性について強い関心の的になっている。すなわち、本書にいう動物資源利用学の領域は、ここ50年の関係科学の情報の蓄積により、今日、専門を越えて、畜産界と消費者の間を結ぶ日常生活のインターフェイスとなったといえよう。
現在の専門書編集の常道として、内容の記述は23人の専門家による分担執筆となっているが、通読してみて、基幹的知識、新情報項目、消費者の健康への関心の高まりから求められる新分野として食品成分の機能性の領域など、編者の努力によって適切にウエイトづけされており、説明文章の調子もよく統一されていて読みやすい。
乳肉卵のタンパク質成分につては、アミノ酸配列と高次構造、機能性成分については、乳タンパク質からの生理活性成分として、脳内沈痛作用を示すオピオイドペプチド、カルシウム吸収を促進するカゼインホスホペプチド、血圧調節を示すアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害活性ペプチド、腸管内で多様な働きをするオリゴ糖、免疫グロブリンIgG、IgA、IgM、鉄結合を通じて抗菌作用を示すトランスフェリンとラクトフェリン、卵の機能性成分としてリゾチーム、鶏卵抗体IgY、各種の生理機能を示す卵黄リン脂質、シアル酸、シアリルオリゴ糖、発酵乳と乳酸菌の生理効果、コレステロール代謝と妥当な摂取水準など最新の情報が手際よくまとめられている。
肉の利用では風味の変化、副産物の利用については、コラーゲンの特性と利用についてその分子種、試験管内での繊維形成能、コラーゲンの食品・化粧品・医療への利用など読み物としての楽しさを感ずるといってよい。
読者を世代別に想定しての推薦の辞をお許しいただくと、まず、オールドタイマーには、かつての畜産物利用学がここまで進歩したかという、新しい内容および用語、問題概念等についての座右の定本として、お薦めしたい。中間世代には、特に健康に関する乳肉卵の新しく確認された化学的成分の機能性の問題など、マスコミがセンセイショナルに速報を競って混乱ぎみな事項について、研究の進展の現状や、それに基づく権威ある新情報の評価の目合わせをするのに、好適な書であろう。ヤングジェネレーションとこれから学ぶ学生諸君にとっては、本書の内容と水準を当然のこととして次世紀に向かっていただければ、畜産界の発展にとってこんな嬉しいことはない。

「獣医畜産新報」1998年10月号 掲載

村松達夫 編

『動物生産生命工学』

1996年1月発行・A5判・232頁・定価 4,320円(税込)

評者 東北大学農学部教授 佐藤英明

今世紀において最も発展し、さらに人類の生存に大きく影響するようになったサイエンスには二つある。生命現象を遺伝子のことばで解釈できるようにした分子生物学とコンピュータに代表される電子情報学である。このことは衆目の一致するところであろう。本書はこれらの分野の成果を理念としても、実際としても動物生産(畜産)学の中に位置づけようとした意欲的な教科書である。
動物生産学の対象とする動物が、近年、家畜(家禽)や実験動物のみならず、野生動物にまで広がってきているが、何を目的としてこれらの生産を行うかについても多様性がでてきている。遺伝子改変によるモデル動物の新規開発、希少動物種の保護、野生動物の管理を通した環境保全などが近年新たに動物生産学に期待される分野となってきているが、やはり食糧としての家畜(家禽)の生産が動物生産学の主目的であるのは変わらないであろう。食材としての畜産物は将来的には、栄養価の高い食品あるいは嗜好品としてよりも、「機能性食品」としての比重が高まるとも考えられるが、本書では、長期的展望として、さらに大胆に「食品というよりもむしろ医薬品としての生産」に動物生産の意義を求めている。
地球上の資源の限界が認識され、地球の人口の定員が議論されている。地球の定員論を前提として、多くの研究者により、人口増加の抑制、太陽エネルギーの利用効率の改善、食物連鎖の低位のものの食糧化などが提案され、その具体化が図られてきている。一部で論議されている食物連鎖の低位のものの食糧化は現在の動物生産学に対して深刻な課題を提起している。食物連鎖が上位へ行くほどエネルギーの損失が激しくなることを意識した論議であるが、このような論調が力を持てば家畜はエネルギー浪費型生産物として認識されるようになる。家畜の生産を維持するには、食物連鎖が上位へ行くほど大きくロスして行くエネルギーを補うだけの価値を家畜に見いだす必要がある。このような中で「動物生産を医薬品の生産」とする編集者の考えは一つの答えにもなるだろう。
執筆は農学分野にとどまらず、工学、医学、理学分野の第一線の研究者によって書かれているが、編集者の理念によって内容が統御され、目次をみるだけで従来の畜産学が新しい時代を迎えたことが実感できる。
第1章では動物生産生命工学とはなんであるかについて編集者の考えが述べられている。「動物生産(畜産)は、本質的にはエネルギーや物質の転換作業のことであり、その転換器として動物を利用しているに過ぎない」との考えをベースにして、動物生産業の継続、発展のため、今後数年をにらんだ短期的展望のみならず、「数十年をにらんだ中・長期的展望にたった新たな技術開発」が必要であると力説している。そして「動物生産の未来設計図」に必要と思われる「質的制御技術」と「量的制御技術」の構築の必要性を説いている。
第2章では「質的制御技術」の基礎が取り上げられている。動物生産物が将来的には食品というより医薬品として機能するようになる可能性を踏まえ、そのための動物生産技術の開発に寄与する基礎学としての遺伝子工学、発生工学、分子生物学について説明されている。動物細胞と遺伝子、遺伝子工学の基礎技術、培養動物細胞を用いた物質生産、局所的生体組織を用いた物質生産系、動物個体(トランスジェニック動物)を用いた物質生産系などが記述されている。
第3章では「質的制御技術」の応用と実際について述べられている。とくに培養細胞を用いた人工皮膚、人工血管、人工肝臓などの作製、遺伝子改変による昆虫や泌乳動物の有用物質生産、ウシやニワトリの胚操作や遺伝子導入、移植用代替動物の作出について概説されている。
第4章では「量的制御技術」について記述されている。今後数年間のうちに生産物の価値や生産方法が大幅に変わることはないと予想される。このような中でも、効率的生産系の構築を目指して、コンピュータシミュレーションを駆使したシステム分析が重要であると説明している。システム分析の実際、ニワトリ産卵モデルによる成績予測等の実際例についても記述されている。
3~5頁ごとに1頁を割き、内容を象徴的に示すトピック的な話題も記述されている。「バイオテクノロジーに託す夢」「スーパーヒツジバイオリアクター」など専門外の人達にも親しめるような配慮がなされている。
本書は遺伝子工学、発生工学あるいは細胞工学を含めた分子生物学の発展を動物生産分野の問題意識にたって再構築し、統合を図った書として高く評価されるだろう。読者層を広げ、動物生産学の案内書として広く読まれることを期待する。また、本書をもとに、次世代の動物産業のあり方について論議が湧くことも期待できる。いずれにせよ、動物生産の研究、教育の方向に一石を投じた書であり、学生教育、社会人教育に広く使われることを希望する。

「獣医畜産新報」1996年12月号 掲載

大久保忠旦・豊田 裕・会田勝美 編

『動物生産学概論』

1996年1月発行・A5判・382頁・定価 4,320円(税込)

評者 大阪府立大学名誉教授 森 純一

近年の科学技術の進歩は目ざましいものがあり、ことに遺伝子関連の学問の進展やそれに伴う学際領域の進歩には目をみはるものがある。
本書はこれらの学問分野の進展の現状をふまえて刊行されたもので、これまでの縦割の学問体系、すなわち畜産学、水産学などの境をとりはらって、遺伝子を構成する塩基配列を軸に、陸生動物および水生動物などの有用な資源動物を同じ生物としての視点から、横断的、統一的に理解し、生産学としてまとめたもので、全く新しい体系に基づくテキストである。そして、その方向は全国の農学系大学の学科再編の方向とも合致したものであって、誠に時宜にかなったものであるといえる。
20世紀後半の科学技術の著しい発展は人類に多大の恩恵を与えたが、一方21世紀に向けて、食糧問題をはじめ環境問題など、われわれの周囲には現在も解決すべき大きな課題が山積している。本書はこれらの問題をも視点に入れて、総合的な観点から書かれたもので、まさに画期的な意味を持つ教科書といえよう。
執筆は陸生動物および水生動物のそれぞれの分野の第一人者によって担当されており、しかも編集者の意図によって、これらがバラバラにではなく、それぞれが関連づけられ、さらに地球環境保全との関連も視野に入れて一定の思想のもとに統一され、大変調和された形であらわされている。第Ⅰ章では動物生産学の概念が述べられ、その中で動物生産と農業との関連、動物生産の重要性と課題、動物生産がもたらす植生の破壊や野生動物社会への攪乱の問題などが記述されている。第Ⅱ章では動物資源の分類と種類が、第Ⅲ、第Ⅳ、第Ⅴ章では動物生産の形態、環境、技術が、第Ⅵ章では生産物とその品質の問題が記述されている。第Ⅶ章では近年進展の著しい動物生産におけるバイオテクノロジーの領域がやさしく紹介されており、大変理解し易い。さらに、最終章の第Ⅷ章では動物資源の管理問題が記述されている。
本書は生物生産学系、生物資源学系、農学系の大学における動物生産学のテキストとして刊行されたもので、その目的である広い視野を持つ学生を育てるのに申し分のない教科書であるばかりでなく、現在すでに社会で活躍している人々にとっても大変有益な内容であり、座右に備えて活用すべき良書として推奨する。

「獣医畜産新報」1996年9月号 掲載