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■ニホンカモシカの遺伝的多様性と集団構造の解明

2025-05-27 13:40 掲載 | 前の記事 | 次の記事

麻布大学は、2025年5月14日、獣医学部の田中和明教授、長友明衣氏(研究当時学部学生)、大内 力氏(研究当時学部学生)、南 正人特命教授が、東京農業大学および群馬県立自然史博物館と共同で、同博物館に保管されていた標本を活用し、ニホンカモシカのミトコンドリアDNAに関する詳細な集団遺伝解析を行ったと発表した(参照:麻布大学「プレスリリース」)。

研究の成果は、日本動物学会の学術誌「Zoological Science」に掲載された。

ニホンカモシカは、日本列島にのみ生息する固有種で、九州、四国、本州の山地から亜高山帯にかけて分布しているが、現在その生息地は、山地に飛び地状に点在している。これは氷期には低地にも広く分布していた個体群が、温暖化の進行により山地へと分断・縮小された結果、地理的に孤立した遺存種となったと考えられている。特別天然記念物として法的保護を受けている一方で、これまで地域ごとの遺伝的な特徴は十分に解明されていない。

研究の結果、ニホンカモシカのミトコンドリアDNA D-loop配列は、地域的な特徴を持つ6つのグループに分類された。群馬県内では、そのうち3つのグループが検出された。吾妻地域ではグループ5のみが確認され、利根沼田地域ではグループ1、4、5が分布していた。このことから、尾瀬周辺には東北地方の特徴を持つ母系統が分布していること、さらに赤城山周辺には他の地域とは異なる母系統が存在することが示唆された。