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環境省は、2025年2月26日、クマ類の保護および管理に関する考え方と今後の方向性を検討するために「令和6年度クマ類保護及び管理に関する検討会」を自然環境研究センターの会議室で開催した。審議結果は「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」に基づく基本指針に反映される。基本方針は、都道府県における特定計画の基となる。2025年度末に向けて「特定鳥獣保護・管理計画作成のためのガイドライン(クマ類編)」が改訂される。改訂の骨子は個体群の保護・管理について、捕獲・削減を加味したものにしていくというもの。
検討委員は以下のメンバー(敬称略)。
- 大井 徹(石川県立大学)
- 小池伸介(東京農工大学)
- 近藤麻実(秋田県生活環境部)
- 佐藤喜和(酪農学園大学)
- 澤田誠吾(島根県西部農林水産振興センター)
- 山﨑晃司(東京農業大学)
- 横山真弓(兵庫県立大学)
まず、クマ類保護および管理に関する動向が確認された。クマの動向については、北海道、東北、関東、北陸、中部、近畿、紀伊半島、東中国、西中国のブロックに分けられている。2024年度は、例年よりは出没が高い傾向にあったが、堅果類の豊作の地域が多かったこともあり、前年度ほどの異常なツキノワグマの出没はなかった。初夏に出没し、秋には減少するという例年と変わらぬ傾向であった。ヒグマによる人身被害は例年程度と変わらず、被害は5~7月にみられた。冬眠直前の10~11月にツキノワグマが人の居住域に入り込むという事例があった。この議題に関する資料は、出没件数、人身被害件数、許可捕獲数がまとめられている。
次に、検討会における個体群管理の考え方についての討議が行われた。個体群ということに焦点をしぼると以下のことが必要となる。
- 目的「居住域への出没個体の減少」
- →問題個体捕獲等、個体数削減等
- 目的「個体群の絶滅の回避」
- →狩猟調整等、緊急時以外放獣等
クマの保護管理の政策の中間的な成果は「軋轢の軽減」と「個体群の安定的維持」であり、最終的には「生物多様性の保全、生活環境の保全、農林水産業の健全な発展」のためにある。
このためには「個体群の安定的な維持および人との軋轢軽減を図ることができる個体群に管理する」ということになるが、数値目標を設定することがそもそも可能なのか、個体群は都府県の境を越えることがあるが、その場合の広域の連携、予算の立て方など問題は多い。それらを踏まえて、自治体に分かりやすく実行性のあるガイドラインを作成していかなければならない。
環境省は、ロジックツリーを用いた論理的な手法で、従来のものを超えたガイドラインの作成を目指している。自治体の担当者が困惑しないためには、時間と空間を明確にしなければならないなど様々に意見あり、問題点があぶりだされた。個体群の広がりにあわせた自治体の連携が必要であるが、他ブロックとの連携には、オンラインの活用が有効で、すでにオンライン会議へのオブザーバー参加で人的交流、情報の共有などが始まっている事例があることが紹介された。
また、2025年度は基本方針の改訂、ガイドラインの改訂のほか、「クマ類の出没対応マニュアル」の改訂、絶滅のおそれのある四国の個体群の保全の事業が予定されている。
また春には「クマ類保護及び管理に関するレポート(令和6年度版)」がWebサイトに掲載される予定。
検討会の資料と議事概要は、環境省Webサイトの「特定鳥獣保護管理検討会」に後日、掲載される。
なお、環境省は、閣議決定された法改正案について、国会審議によるものであるが、今年の秋には市町村が対応できるようにしていくという心づもりであると述べた。
- 参考:環境省「クマに関する各種情報・取組」