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■JAVSコラボレーション-獣医師による獣医大学訪問(5) 帯広畜産大学-後編

2024-08-09 18:37 | 前の記事 | 次の記事

写真1A:サラブレットにCT検査を実施している様子(画像提供:武山暁子先生) / 1B:EAEVE認証(画像提供:帯広畜産大学)

写真2A:ウサギの眼底検査中 / 2B:WSAVA(世界小動物獣医師会)シンガポールの大会においてポスター発表。左から清水宏子先生、清水邦一先生 / 2C:WSAVAポスター発表「ウサギの結膜伸長症に対する垂直切開法」の準備中

写真3A:馬の整歯処置前に歯列異常や齲歯がないかデンタルミラーで確認 / 3B:ポニーの削蹄

インタビュアー・構成・執筆 伊藤 隆

動物医療発明研究会 広報部長/獣医師

JVM NEWSとしてJAVS(日本獣医学生協会)とのコラボレーションにより獣医大学を紹介しています。

第5回目は、前回に引き続き帯広畜産大学です。今回は3人の教員へのインタビューと2人の卒業生から学生さんへのメッセージを紹介いたします。

(取材日:2024年3月27日)

第1番目は、南保泰雄教授にお聞きしました。

Q1.南保先生の馬の繁殖に関する研究のひとつであるライトコントロールについて教えて下さい。

ライトコントロールは、光で馬に季節を感じさせ、排卵を促す方法です。

日本はサラブレッドの世界第5位の生産大国です。欧米に比べて競走馬の歴史は浅いですが、よい馬をつくろうと70年以上邁進してきた結果です。ご存じのようにサラブレッド生産は自然交配のみで、血統の確かな馬しか認められません。牧場主にとっては、血筋のよい丈夫な子馬が計画通り生まれることが理想です。

馬は春にしか発情しない季節繁殖動物ですが、その発情が起こらず困っているという声が現場では少なからずありました。

そこでJRA時代に検討したのが、「ライトコントロール」という方法です。馬房内に電球を一定時間灯すことで、光によって馬に春が来たと気づかせます。

その結果、北海道のような寒冷地でもホルモン分泌が促進され、排卵が起こることが判明しました。手軽で副作用のないこの方法は馬産地北海道で評判になり、広く利用されるようになりました。

Q2.馬房内に電球を一定時間灯すということですが、何時間くらいですか?

明期14.5時間、暗期9.5時間で十分な効果があると考えられます。

Q3.ライトコントロール法どのような時にひらめいたのでしょうか?

元々戦前の研究の論文を見てヒントを得て、欧州での研究総説の紹介を参考に、馬のホルモン測定や超音波画像診断を実際に実施し、発情が起きることを証明しました。

Q4.超音波診断に新機軸の器具を取り入れ、世界初の胎子の3D画像抽出に成功した事を教えて下さい。

これまでの妊娠馬の検査は交配後5週間以内に、妊娠鑑定を兼ねた検査を2度だけ行うのが一般的でした。直腸検査に使うエコー診断のプローブ(探触子のことで、超音波を発生・受信するセンサー)の描き出す深度は10 cm前後ですが,妊娠中期以降は子宮が大きくなり下垂します。

そのためプローブをもっと奥まで挿入する必要があるのですが、現状の器具では無理がありました。

馬の妊娠期間は335日と家畜のなかで最も長いです。それにも関わらず、獣医師が次に馬を診るのは出産時という状況が続いていました。

サラブレッドでは流産や死産の割合が高く、妊娠の早い段階の流産を含めると、妊娠馬の15%が、健康な子馬の出産に至っていません。その際、外見上の異常を見つけてもほとんどが手遅れです。

人の定期健診のように、妊娠期に定期的な正確な検査が必要ではないかという声がありました。

その解決に向けて導入されたのが、25〜30cmという深部にも届くコンベックス型プローブです。考えられた形状と優れた角度操作で、観察範囲がぐんと広がりました。超音波診断装置に画像モニターをセットすれば、子宮の胎盤厚をはじめ胎子の成長や性別の判断までが瞬時に可能になりました。

この方法で、世界で初めて胎子の3D画像をとらえることに成功しました。

3D画像を再構築すればリアルタイム3D、つまり子宮内の胎子の動きも示せます。妊娠全期にわたる定期検診が病気や異常の早期発見につながり、正常な出産率を押し上げることが期待されます。

Q5.先生が、使用された深部にも届くコンベックス型プローブとはどのようなものですか?

体表からの腹部や臓器のエコー検査時に使用するプローブが有効となります。

人では、妊娠中期以降の体表からの健診や、経腟超音波で届かないような大きな子宮筋腫、卵巣腫瘍などの診察に使用します。

Q6.「ばん馬」を対象とした研究について教えた下さい。どのような研究をされているのですか?

これまでサラブレッドで培ったスキルを世界最大級の体格をもつ馬、ばん馬の安定確保に生かしたいと意気込んでいます。

前年度不受胎に終わってしまった牝馬について、内視鏡検査や組織検査など、子宮内の精密検査を実施する通称「ばん馬繁殖ドック」を繁殖シーズン2,3か月前に十勝馬事振興会と協力して実施して、ばん馬特有の疾病や治療法について研究を進めているところです。

Q7.サラブレッドとばん馬の違いは何でしょうか?

サラブレッドと比較して、ばん馬は身体が大きいので子宮も大きいです。産後の胎盤停滞や産褥熱の発生が多いです。細菌によるエンドトキシンが発生し、蹄葉炎になったりしますので、同じ馬でも病気の発症率に大きな違いがあります。地域に根差した獣医療を提供するには、その土地の産業の特色や病気の特徴を研究することが重要です。

第2番目は、武山 暁子先生にお聞きしました。

Q8.産業動物臨床棟の概要を教えて下さい。

平成27年(2015年)10月より、帯広畜産大学では、産業動物臨床拠点としての役割を担う産業動物臨床施設群の中核をなす、産業動物臨床棟の運用を開始しました。

産業動物臨床施設群は、産業動物臨床棟、動物・食品検査診断センター、病態診断棟および原虫病研究センターからなり、これらの施設を渡り廊下で結ぶことで、各施設で実施される臨床診断、臨床検査、病理検査、毒性検査を一連の流れで行い、有機的に連携させることで、高度な診断治療およびそれらの実務教育を行うことを目的としています。

帯広畜産大学が北海道大学とともに設置している共同獣医学課程において国際水準の獣医学教育を実施し、その教育課程が国際通用性を持つとして認知されるべく、欧州の獣医学教育評価機関(EAEVE)からの国際認証を取得するために必須の施設として設けられました。

産業動物臨床棟は、2階建て延べ床面積が3,570平方メートルの施設で、1階は産業動物の臨床教育および診療施設であり、臨床講義室、馬および牛の手術室、 麻酔・覚醒室、CT検査室、MRI検査室などが完備されています。2階は教員オフィス、実験室および学生ルームからなっています。

手術室は、馬と牛でエリアを区分し、検査診断や手術以外の処置を行う診療処置室も各手術室前室に位置しており、診療エリアを馬エリアと牛エリアとで2分する形となっています。

麻酔導入・覚醒室は、麻酔の導入時や覚醒時に事故のないように壁がクッションに覆われ、さらにモニタリング用の監視カメラも設置されています。CT検査室(写真1A)は、大動物の撮影を可能にするために、牛や馬を乗せた架台ではなく、撮影装置自体が移動するように整備されています。また、これらの機器は、伴侶動物の検査診断にも使用されています。

Q9.帯広畜産大学の産業動物臨床棟の体制と先生の普段の仕事を教えて下さい。

帯広畜産大学は24時間365日急患を受け入れていますし、曜日に関わらず依頼があれば、近隣牧場や競馬場に往診します。二次診療として対応しています。

入院馬がいれば、休みなく入院管理が必要で、ばん馬の点滴はサラブレッドの半分の時間で無くなるのでゆっくり寝られないこともあります。特任教授の社台ホースクリニックの田上正明先生がいらっしゃる毎週木・金曜日の2日間に精密検査や手術を予定して、主に麻酔を担当しながら学生と一緒に勉強させてもらっています。

Q10.サラブレッドとは違う、ばん馬を診る難しさは何ですか?

体重がサラブレッドの2倍以上あるばん馬は、身体の割合に対して心臓がサラブレッドと比べて小さいことです。ですので浮腫などが起こりやすく、また術後合併症が多いです。

また、その体の大きさにより、点滴などはサラブレッドでは2~3時間持つものも、ばん馬では1~2時間しかもたないことが多く、手術器具、例えば麻酔中の気管チューブなどはサラブレッドよりも大きなものが必要となります。

例えば2億円のサラブレッドと500万円のばん馬が同じ治療ができるかというと現実的には難しいです。ばん馬の研究はあまり進んでいないので、サラブレッドに対して使われる治療法を応用することが多いのですが、サラブレッドが陸上選手でばん馬がお相撲さんと考えると、適切な治療法が違うのも当然だと思います。

Q11.ばん馬の研究を進める上でどのような学術的データーが必要だと考えますか?

麻酔的な観点からみると、ばん馬に対してα2作動薬やプロポフォールを投与した際の血中動態のデータ測定やばん馬に投与して問題ないかを検証したいです。

Q12.武山先生が今後、新たにチャレンジしたいことは何ですか?

重種馬の輸血体制化について貢献したいと考えています。この体制化は、十勝内の馬産組織で構成する十勝馬事振興会が今年、ばん馬などの重種馬の輸血体制を整備する事業に初めて着手します。

子馬の疾病などへの対応が目的となります帯広畜産大学と連携し、どんな馬に輸血しても副反応を起こす可能性が低い血液型の馬「ユニバーサルドナー(UD)」を探し、凍結血漿を備蓄します。これができると生産者間で輸血用凍結血漿を相互利用できる体制をつくることが可能となります。

親馬の初乳から十分に抗体を獲得できなかった子馬は移行免疫不全症となり、敗血症などに罹患しやすいです。その場合には、血漿輸血が効果を発揮します。また、外傷なので大量出血した場合には、全血輸血が救命につながります。

第3番目は、松井基純教授にお聞きしました。

Q13.共同獣医学課程とEAEVE認証取得について教えて下さい。

平成24年度(2012年)入学者から帯広畜産大学と北海道大学は、共同獣医学課程を編成し、それぞれの優位な教育施設、教育資源を相互に利活用した実践的かつ先進的な獣医学教育を行っており、令和元年(2019年12月)にはEuropean Association of Establishments for Veterinary Education(EAEVE:欧州獣医学教育機関協会)の認証を取得しました。

EAEVE認証取得は、本学共同獣医学課程が提供する獣医学教育が欧州水準にあり、国際通用性を有することを意味します(写真1B)。

EAEVE認証では、7年毎の再認証が必要であり、審議内容は定期的に修正されます。そのため、EAEVE認証の維持には継続的な教育改善への取り組みが必要となります。

本課程は、今後も獣医学教育の更なる改善のため、認証の維持を目指すとともに、認証取得の過程で得た経験と知識を他大学に還元し、我が国の獣医学教育の継続的な教育改革に貢献していきます。

Q14.国際認証を取得する意義を教えて下さい。

  • 実践力の育成を重視した獣医学教育への転換です。
  •  これまで、日本の獣医学教育では、知識を重要視した教育が行われ、技術習得(特に臨床分野)にかける時間が少ない傾向にありました。そのため、国内の複数の大学では、共同獣医学課程、共同獣医学部、共同獣医学科などを設定し、実践力の育成を重視した獣医学教育へ改善を進めていました。
  •  EAEVE認証では、大学を卒業した獣医師が有する能力(Day One Competences)の到達目標が掲げられています。これらは、知識だけではなく技術や技能、さらに態度なども統合した能力を求めるものとなっています。さらに、臨床実習にかける時間や症例数も、実践力育成のために十分な数が求められています。
  •  EAEVE認証取得への取り組みは、私たちが認識していたこれまでの日本の獣医学教育の弱点の改善への方向性と一致するものとなっていました。
  • 欧米に通用する獣医学教育の構築です。
  •  国際社会で認められ活躍する獣医師を養成するためには、日本の獣医学教育が国際通用性を有していることが認められる必要があります。AVMA(北米)やEAEVE(欧州)などの欧米の獣医学教育評価機関からの認証評価を受けることにより、欧米の獣医学教育を理解し、改革を行うことで、欧米に通用する獣医学教育の構築が可能となります。
  • 獣医学教育におけるQuality Assurance(QA:品質保証)と第三者による評価の必要性を理解し徹底することです。
  •  獣医学教育のQAの一つとして、教育課程を修了した学生に対する獣医師国家試験が行われています。これは、主に知識を確認するものであり、獣医師としての技術や素養を十分に評価できるものではありません。そのような能力や資質については、各大学や教育課程において、それぞれが評価を行い、教育を修了した学生の能力を担保しています。また、学生の能力が担保される大前提として、各教育組織の教育システム自体のQAも重要です。
  •  国際認証評価では、教育プログラムおよびそれを支える教育組織などに関するQA体制についても評価されます。組織内で自己評価と改善を行っているQA体制について、第三者からの評価を受け改善を行うことで、組織を構成するメンバー全体で、教育システムのQAの重要性を理解し、改善に努めることにつながると考えています。

Q15.何故、米国(AVMA:米国獣医師会・教育審議会)の教育システムでなく欧州のシステムを導入しようとされたのでしょうか?

欧州は国ごとに畜産の状況や獣医師の活動状況などが異なっています。多様な民族や文化圏が存在しており、各国や地域の状況を踏まえて獣医学教育が評価されることや、獣医師の職域が日本と類似性のある地域などの獣医学教育も評価されていることなどから、適切に日本の獣医学教育を評価されると考えEAEVE認証取得を目指しました。

Q16.EAEVE認証取得において評価された理由は何かありますか?

本学と北海道大学のそれぞれの教育資源を実践的に相互補完できている点が評価されたと考えています。

北海道大学は大都市札幌にあり、臨床活動においては、伴侶動物診療の症例数が豊富です。一方、帯広畜産大学は、十勝地方の産業動物の牛や馬の診療を活発に行っています。このような特色の異なる臨床現場を双方の学生教育に活用しており、それぞれの学生が行き来を行っています。

例えば、北大生は帯広畜産大学に来て十勝のフィールドでの産業動物獣医療実習(3週間)、一方、畜大生は北海道大学の動物医療センターで伴侶動物獣医療実習(1か月間)を経験することから、本学と北海道大学のそれぞれの得意な教育を生かしていることが評価されたと考えています。

Q17.EAEVE認証取得でご苦労された点はありますか?

EAEVEでは、獣医学教育において学生が卒業するまでに、獣医師が取り扱うべき、主だった動物種について、学生を臨床の現場に暴露させることが重要視されています。本学と北海道大学との共同獣医学課程では、北海道大学での伴侶動物診療、本学での大動物診療を活かして、対応していました。しかし、EAEVE認証では、馬について、夜間診療も含めた24時間体制など診療の充実が求められました。ヨーロッパでは、馬は伴侶動物であること、乗馬に携わる人口数や飼養頭数も多いことから、馬の診療活動が非常に活発であるため、獣医学教育において、馬の臨床教育や教育資源としての馬診療件数などの充実が求められています。本学での馬診療活動や診療件数は、国内の獣医系大学の中では十分に活発なものでしたが、ヨーロッパの大学と比べると見劣りするものでした。そのため、認証評価を受けるにあたり、馬診療の充実化を目指して社台ホースクリニックと連携を結ぶとともに、24時間体制構築のために勤務獣医師の雇用を行いました。

Q18.EAEVE認証取得に取り組んだことで、よかった点はありますか?

前述のQAに関わるものとして、QA委員会を設置し、学生からの意見の収集と集約を行い、それに対するフィードバックの体制を構築、充実させています。これにより、学生からの意見や要望に基づく改善につながっています。教育を提供する側だけでなく、教育を受ける側の意識も変わり、教員と学生が一体となり、獣医学教育の改善に向かっていると感じています。

EAEVEの認証基準に到達すべく改善を行いましたが、その過程で、獣医学教育の改善への取り組み方を学ぶことができたと考えています。これは、本学の獣医学教育の継続的な改善に大きく役立つ経験であったと思います。

Q19.EAEVE認証取得の教育を受けたことを活用して、卒業生で英国の獣医師免許を取得された方がいらっしゃるのですか?

EAEVE獣医学教育国際認証を取得した2020年3月以降に、本学と北海道大学との共同獣医学課程を卒業した学生は、英国獣医師協会の獣医師資格認定試験の受験が免除されます。2023年3月に帯広畜産大学共同獣医学課程を修了した卒業生が、この枠組みを活用して、2024年5月13日付けで英国獣医師免許を取得しました。

2人の卒業生からのメッセージを紹介いたします。

1人目は動物医療発明研究会会長もしています神奈川県横浜で動物病院を開業されている清水邦一先生です(写真2)。

清水邦一先生からのメッセージは以下の通りです。

【現在の仕事について】

「活躍している卒業生」とは夢にも思っていませんが、ひたすら自分の道を歩み続けてはいます。家族の一員となっている動物のオーナーに対して手助けとなることは、動物病院の大きな役割です。臨床の中でそれに注ぎ込むことができるのは、たいへん幸せです。

【学生時代について】

大学を1970年に卒業して、速くも50年を過ぎましたが、帯広で学んだ学生時代は、ついこの間のようです。十勝平野の広い大地で夢中になったことは、アルバイトで農家の手伝い、近くの札内川でのウグイ釣り、そして冬期のスピードスケートでした。-20℃にもなる厳しい冬は、印象に残りました。また自転車で1週間かけて東京まで帰ったことは、頑張る一つの経験になりました。

【考えることの重要性&今後の目標について】

大学卒業後は、人生の経験と思い3年間大阪の製薬会社の研究所に勤めました。その後3年間、優良な臨床を行っている動物病院で研修することができ、開業に至りました。その頃から獣医学の進歩はめざましく、情報収集は大変ですが、やりがいもあります。

今、人生100年時代と言われるようになり、「どうしたら充実した人生になるか?」「何を目標にしたらよいか?」を常に考えていきたいと思います。先日NHKの番組で普通の財産の他に、無形財産を育て積み重なる重要性を放送していました。ポイントは、(1)常に勉強し続けること、(2)心身ともに健康であること、(3)世の中の変化すなわち新しいことに適応していくこと、でした。獣医師の仕事は、必然的にこれらのことが必要で、自然に行っていることになり、やりがいのある職業かなと感じています。

今後の自分の目標は、「Yes、Yes、Yes、(No)」くらいで、人の立場を受け入れて接していくこと。そして、人前に出るのは苦手ですが、勇気を出して、少しでも人に役立ち喜んでもらえる発表や投稿を続けたいです。月刊誌「NJK(獣医師回覧板)」には「小さな商品の大きなアイデア」を2003年4月から連載していますが、これからも可能な限り続けたいと思っています。

2人目は、全国的な規模で展開している乗馬クラブクレインの馬を診療している「有限会社大和高原動物診療所」の関東診療所に勤務されている奥原秋津先生です(写真3)。

奥原秋津先生からのメッセージは以下の通りです。

【現在の仕事や活動ついて】

乗馬クラブクレインの子会社である大和高原動物診療所に所属し、大阪・茨城・栃木の3拠点うち茨城の診療所に勤務しています。宮城県から大分県までのクレイン約30事業所、他の乗馬クラブへ往診という形で乗用馬の診療にあたっています。

また、馬術競技会の救護獣医を行うことも多いです。

【学生時代について】

4年生の途中までは馬術部に所属していたため、朝4時半から部活動、授業にでて、夕方~夜まで部活動という生活を送っていました。試合で出席日数が足りなくなりそうなときは、課題などで免除してもらったり、試験の点数が足りなければ先生にお願いして再試をしてもらったり… 当時の優しい先生方に救われてなんとか両立していました。

4年生からは大動物外科学研究室に所属、朝8時から研究室の馬・牛の世話も加わり、定期往診や急患のオペ、卒論の実験・オペ、毎週論文を2つ読んでゼミに臨み、年3回の学会の準備と、かなりハードな研究室生活でした。同期や後輩と協力し、頼れる院生の方に助けていただきこちらも一生懸命取り組みました。

学部の友人、研究室のメンバーは今でも連絡を取り合い、大切な人脈となっています。

【帯広畜産大学で学んで役立ったこと】

小動物の外科の授業では犬に触れる機会もありましたが、畜大はやはり牛の授業・実習が充実していました。もともと小動物志望でも就職は牛に変えた同期も多くいました。実際に動物に触れ世話をする機会が多いため、ただ頭でっかちな知識を得るだけでなく、扱い方や基本的な飼育を体で覚えることができました。

また、馬に関する授業も多く、馬の獣医師を目指していた私にとっては、よい選択だったと思っています。

私が学生時代の時は毎年夏休みに5日間馬と牛のコースに分かれて約15名ずつ、全国の獣医大学から学生が集まり実習が行われていました。馬コースでは、一般的な聴診・触診・歩様検査からレントゲン、内視鏡、全身麻酔下での腹腔探査、繁殖検診などを行い、最後に解剖実習が行われました。

国の馬の獣医を目指す学生の実習なので、他大学の学生ともよく連絡を取り合っていました。

【先生の今後の目標】

だいぶ前から鍼灸に関しては勉強したいと思っています。薬を使わずに疼痛を緩和することができる点が有用だと感じています。また、現在の職場では女性獣医師が多く、往診では移動にかなりの時間を費やして不規則な勤務になりやすいため、入院での治療も考え、リハビリ内容についても勉強していきたいです。

【後輩へのメッセージ】

獣医学科というかなり限られた分野の集まりではありますが、その中でもそれぞれ興味の対象が違って、こだわりのある学生が多く、とても濃い6年間を過ごしました。

授業の合間を縫って帯広市内のおいしいものを食べに行ったり、休みの日には友達と車を乗り合わせて観光に行ったり、北海道生活も満喫して下さい。帯広はきっと第二の故郷になります!

編集後記

帯広畜産大学の前編・後編と2回にわたり紹介しました。

前編は学生さんから見た帯広畜産大学の紹介が中心でした。その中でも帯広畜産大学でしかない施設である原虫病研究センターやお酒の工場などは印象深かったです。

後編は3人の先生方の紹介インタビューですが、お2人は、馬関連の研究を実施しています。馬に関するCTの施設も完備されており、特に帯広競馬に関連する「ばん馬」への取り組みが特筆すべき点でした。

松井教授にはEAEVEの認証についてインタビューを実施しました。今後EAEVE認証のメリットを生かして世界で活躍される獣医師の先生方が巣立って行くことも期待できます。

また、帯広畜産大学の先輩2人から熱いメッセージをいただきました。1人は、小動物臨床分野でWSAVA(世界小動物獣医師会)にてウサギに関する眼の病気についての新しい治療方法をポスターで発表をされた清水邦一先生です。

もう1人は、全国展開しております乗馬クラブクレインの子会社である大和高原動物診療所に所属し、関東エリアの馬を診療されている奥原秋津先生です。

人は診療対象動物は異なりますが、常に新しい治療方法を模索し研究されている点です。これが帯広畜産大学のスピリッツだと思います。後輩の皆さまも是非、先輩に続いて獣医学分野において、新たなチャレンジをして欲しいです。

動物医療発明研究会は、会員を募集しています。入会を希望される方は、「動物医療発明研究会」まで。

シリーズ「JAVSコラボレーション-獣医師による獣医大学訪問」