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- 柳川 久 著
- 2025年6月・東京大学出版会発行
- 定価:3,080円(本体2,800円+税)
- 詳細:https://www.utp.or.jp/book/b10134039.html
帯広畜産大学名誉教授の著者が、野生動物管理学研究室で取り組んだモモンガの調査・研究紹介を中心として本書はまとめられている。その研究は、モモンガへの思いが強い学生の熱意により始まり、研究室内で引き継がれていく。
滑空という移動手段、天敵に対してにぶい反応、餌は樹皮や芽と他種とほとんど競合しないなど、なんとものんびりした生態が紹介される。
キツツキの開けた樹洞を巣にするが、これが他種と競合するくらいで、そして人への害はないといっても過言ではない。
なんといっても可愛い。記述される生態も、写真も愛らしく、推し活をしたくなるような存在である。
卒業論文の対象としてモモンガを強く望んだ学生さんの気持ちもよくわかる。研究対象がキャンパス内にいて、しかも観察しやすい巣箱をよく利用してくれるということも、なんともよい。
生態調査の初手から、研究の展開の仕方、また成果を社会還元していくにはどのようにしていくのかがまとめられている。
主な構成は以下の通り。
第1章 モモンガの研究を始めてみた
- まずは二四時間モモンガを見る
- 巣箱を使って野外のモモンガを調べる
- テレメトリーでモモンガを追跡する
第2章 モモンガの移・食・住
- モモンガの移-どのように移動するか
- モモンガの食-なにを食べているか
- モモンガの住-どこで暮らしているか
第3章 モモンガの危機
- モモンガの暮らす森林の消失
- モモンガの住む森林の分断
- 傷病動物としてのモモンガ
第4章 モモンガの隣人たち
- モモンガの敵
- モモンガのライバルたち
- モモンガと同じ林で暮らす生きもの
第5章 モモンガと人と
- アイヌとモモンガ
- 昔の人とモモンガ
- 現代の私たちとモモンガ
なお、同書の中に著者らがまとめた帯広畜産大学のモモンガのリーフレットがあると紹介されている。同大学のWebサイト内「十勝管内に生息する野生動物に関するパンフレット」に、該当のリーフレットをはじめ様々な動物の紹介パンフレットが掲載されている。
- 参考:柳川先生の関連書籍について、過去にJVM NEWSに掲載した「書籍紹介」
- 『北の大地に輝く命 野生動物とともに』
- 『野生動物のロードキル』