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■【寄稿】JICAパラグアイプロジェクト「家畜衛生対策及び動物由来食品検査サービス向上プロジェクト」-(1)プロローグ

2025-08-19 17:05 掲載 | 前の記事 | 次の記事

独立行政法人国際協力機構(JICA)プロジェクトとして、厚生労働省からパラグアイ国に派遣されている角野敬行先生にプロジェクトのことや現地事情などを紹介をいただくことになりました。1~2か月のインターバルでの掲載を予定しています。(編集部)

角野敬行〔パラグアイ国立家畜品質・衛生機構(SENACSA)〕

厚生労働省獣医系技官からJICA専門家へ

私は、厚生労働省の獣医系技官として働いている獣医師である。2023年より厚生労働省からパラグアイ国に派遣され、同国でJICAプロジェクトのチーフアドバイザーの業務を行っている。

今年の2025年10月で、ちょうど2年目を迎えることとなる本プロジェクトについて、この度、文永堂出版の松本さんから、JVM NEWSの記載依頼を頂戴したことから、今後、定期的に本プロジェクトや本プロジェクトにかかわる内容について、記事を書かせていただきたい。なお、2024年7月から2025年6月までは、JICAの別のプロジェクトであるモンゴルの「JICA公務員獣医師及び民間獣医師実践能力強化プロジェクト」について、北里大学名誉教授の髙井伸二先生が寄稿されていたので、こちらもぜひご参照いただければ、JICAプロジェクトを通じた専門家としての獣医師の活動について理解が深まると思う[1]。

まずは、私の経歴について説明したいと思う。私は、2009年3月に酪農学園大学を卒業し、獣医師国家試験に合格し、獣医師となった。大学6年の就活時に、厚生労働省獣医系技官の採用試験に合格しており、卒業後、厚生労働省に入省した。その後、厚生労働省本省、検疫所、地方厚生局など勤務を経験してきた。感染症対策分野や科学研究費関係の業務も行ったが、大半は食品衛生行政に関わってきた。

厚生労働省の採用の職種には、総合職、一般職、技官、そして、その他の採用区分(労働基準監督官、食品衛生監視員等)がある[2]。このうち技官には、医系技官、看護系技官、薬系技官、栄養系技官、営繕技官があり、獣医系技官もその1つである。採用試験についても、獣医系技官は個別に実施されている。もし、興味があるのであれば、業務説明会や学生向けのインターシップを実施しているので、厚生労働省Webサイトの獣医系技官専用Webページから情報を得ることができる[3][4]。また、採用担当の相談窓口もあるので、質問等があれば、いつでもお気軽に連絡をしていただきたい[2]。

獣医師としての国家公務員の採用は、厚生労働省と農林水産省にそれぞれ採用の枠がある。また、環境省には獣医系の枠はないが、総合職の枠で環境省に入省し、勤務している獣医師の方もいる。

私の所属している厚生労働省は、国の行政機関の1つであり、公衆衛生の向上・増進のほか、社会保障、社会福祉、働く環境の整備、職業の安定など、国民の日々の暮らしに密着した分野を管轄している機関である。その中で、獣医系技官の役割は、食品安全分野の業務や感染症対策分野の業務が中心となる。

詳細な業務や内容は担当する部局によってさまざまだが、「全体の奉仕者」として、法律、医学、薬学などの様々な分野の職員と連携しながら、政策の企画や立案をし、必要に応じ調査や研究に関する事務を通じ、政策を進めることが主な業務になる。

また、厚生労働省は、厚生労働行政分野における国境を越えた課題が増える中、国際的な課題への対応も行っており、国際機関を通じた活動、諸外国との政策対話や交流事業、日本が世界に誇る分野での情報発信などにより、国際協力の推進と日本の国際的地位の確立を図っている[4]。

具体的な活動としては、独立行政法人国際協力機構(JICA)の実施する技術協力への人材貢献、海外からの研修員受け入れ、国内国際協力実施機関への委託・補助のほか、世界保健機関(WHO)、国際労働機関(ILO)といった国際機関への資金拠出を通じて、技術協力を実施している。

私は、このJICAが実施する技術協力に関して、食品衛生の専門家の人材貢献として派遣されていることになる。これは、日本政府(JICA)が立ち上げた国際協力プロジェクトに対して、JICA側から厚生労働省へプロジェクト遂行のための専門家派遣の依頼を行い、この依頼を受けた厚生労働省は、派遣法(国際機関等に派遣される一般職の国家公務員の処遇等に関する法律)に基づき、私を専門家として派遣した[5]。

このような手続きを経て、私は、南米のパラグアイにてJICA専門家としてパラグアイ国の国立家畜品質・衛生機構(SENACSA)にチーフアドバイザーとして勤務している。

次回は、本プロジェクトの概要とプロジェクトチームの体制について説明する。

引用文献