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ダクタリ動物病院 総合院長の加藤 元先生が、2026年8月5日に死去された。享年93歳。葬儀は近親者により執り行われた。偲ぶ会が行われる予定。
加藤先生は神戸市出身。兵庫県立夢野台高等学校、北海道大学獣医学部を卒業。神戸市立王子動物園勤務、動物病院勤務を経て、1964年東京都杉並区で「ダクタリ動物病院」を開院。1976年には「ダクタリ動物病院 中目黒病院」も開院し早くから複数の動物病院を経営された。
1992年には東京都渋谷区に「ダクタリ動物病院 エンジェルメモリアル広尾セントラル病院」を開院、2010年に渋谷区に「ダクタリ動物病院 代々木病院」を開院された。
そして2012年、広尾から移転して港区白金に現在の「ダクタリ動物病院 東京医療センター」を開院された。
加藤先生は理念、志を同じくする先生方とダクタリ動物病院グループを結成し、その後、加藤先生のもとで獣医療を学んだ先生方も加わり、ダクタリ病院会が結成されている(参考:JVM NEWS 2019-10-28「ダクタリ動物病院会の結成50年記念祝賀会が行われる」)。
加藤先生は伴侶動物医療の先進国としての米国の獣医学を取り入れることを先導、主導された。
米国動物病院協会(AAHA)をならい、1978年1月に日本動物病院協会(JAHA、その後、社団法人日本動物病院福祉協会への改組を経て、現在、公益社団法人日本動物病院協会)を設立し、初代会長に就任した。その後2代・10代・11代会長を務めた。JAHAはいち早く国際セミナー実施を開始し、1978年3月には米国人講師による国際セミナーを全国5都市で開催した。
X線を用いた獣医療の必要性も啓発され、1976年設立された日本獣医放射線研究会の初代・2代会長も務めた。
米国獣医療の導入は書籍を通じてにも及び、多くの翻訳書の監訳を手がけられた。文永堂出版からは、『飼鳥の医学』(1974)、『犬の臨床繁殖』(1985)、『早わかり犬と猫の臨床』(1986)、『完全図解 小動物の整形外科』(1988)、『猫の内科学』(1988)、『犬と猫の心臓病』(1992)、『猫の医学-内科・外科診療のすべて』(1993)、『小動物の臨床腫瘍学』(1995)、『小動物臨床腫瘍学の実際』(2010)を上梓された。Dr.R.W.Kirkが編纂した『Current Veterinary Therapy』を『小動物臨床の実際』(医歯薬出版株式会社)として監訳・出版されたが、それは小動物獣医療に大きな影響を及ぼし、原書の改訂版も次々と監訳された。
文永堂出版の月刊誌「獣医畜産新報(JVM)」では、1984年から「症例シリーズ」を連載され、JVMが休刊となる2018年まで続き、その症例を抜粋して『ケーススタディ小動物の診療 -What Is Your Diagnosis and Treatment-』(2013)を上梓された。
大学での臨床教育にも尽力され、1986年のコロラド州立獣医科大学客員教授就任(1年2か月赴任)をはじめ、カンザス州立獣医科大学小動物臨床講師、カリフォルニア大学デービス高客員教授、フロリダ州立大学獣医科大学ゲスト小動物客員教授、北京農業総合大学獣医学部兼業教授、千葉科学大学客員教授、北海道大学獣医学部・大学院招聘教授、大阪府立大学生命環境科学域 特任臨床教授を務めた。1991年には、コロラド州立大学とタフト大学の単位認定の動物病院実習先として、ダクタリ動物病院大橋と久我山センター病院に2人の学生を受け入れている。
高度医療の必要性もいち早く提唱され、企業と提携して日本初の高度獣医療施設を設立する計画を立ち上げたが、残念ながら時代が早すぎたのか受け入れられず、計画を断念された。日本に高度獣医療施設ができるのは、それから数年を経過してからのことととなる。しかし、加藤先生は、ダクタリ動物病院 エンジェルメモリアル広尾セントラル病院に高度な機器を導入し、自らの病院を高度化していき、高度医療でも先頭を走られた。
またヒューマン・アニマル・ボンド(HAB)の概念の日本での啓発に尽力され、IAHAIO(International Association of Human-Animal Interaction Organizations)の副会長を務めたほか、HABを実践していくための教育組織である一般財団法人J-HANBSを創設し、理事長を務めた。
幼少の頃から馬に親しんでいたとうかがっている。北海道大学では馬術部に所属し、米国でも乗馬を楽しまれた。2025年の北海道大学栄誉賞の受賞の際には、馬術部も訪問された(参照:北海道大学「お知らせ」)。
JVMの「症例シリーズ」は長い間、口述筆記で原稿を作成していた。何度も加藤先生のもとへ通った。とくに杉並センター病院の2階で行っていた原稿づくりは、その場所が生活の場でもあったことから、真木夫人とも交流ができ、とても思い出深い。そこでは、かつてダクタリ動物病院グループの先生方が熱く獣医療を語り合ったと聞き及んでいる。常に情熱にあふれ、小動物医療の新たな取組みを次々と実践され、時代を切り拓いてこられた。晩年は故郷の神戸で過ごされた。
加藤 元先生のご冥福をお祈りします。
(執筆:松本 晶)


