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認定NPO法人アニマルライツセンターは、2026年4月3日、プレスリリース「実態調査:豚の屠畜場47%、牛の屠畜場22%で飲水設備が未設置」を発表した。その概要は以下の通り。
厚生労働省が32年前に策定した「と畜場の施設及び設備に関するガイドライン」(平成6年衛乳第97号、データは公益財団法人日本食肉生産技術開発センターのWebサイトより)には明確に飲水に関する規定がある。通知などで行政は新築改築のときには設置をするようにと述べており(例:「生食監発0308第8号」)、また設置しないという猶予規定がガイドラインにあるわけではない。
・「と畜場の施設及び設備に関するガイドライン」の該当箇所
2 生体取扱施設
生体取扱施設にはけい留所、生体検査所及び隔離所を設け、以下の要件を具備すること。
- (2)けい留所
- ③体表に付着した糞尿、泥等を除去するために、獣畜を効果的に洗浄する設備が設けられていること。また、獣畜の飲用水設備が設定されていること。
この問題の解決のため、2023年に続き2025~2026年にかけて、「屠畜場における飲水設備設置調査」を行った。
- 調査期間:2025年9月~2026年2月
- 調査方法:アンケート調査票郵送および電話聞き取りによる
- 調査主体:認定NPO法人アニマルライツセンター
豚の屠畜場の係留所での飲水設備設置率は、2010〜2011年には13.6%に過ぎなかったが(日本獣医師会雑誌「と畜場の繋留所における家畜の飲用水設備の設置状況」)、2023年には40.8%(「2023年調査」)、2025〜2026年には52.8%にまで上昇し、設置予定を含めると64.8%に変化した。
牛の屠畜場の係留所での飲水設備設置率は、2010〜2011年に49.6%、2023年に69.3%であったが、2025〜2026年調査では78.1%に上昇し、設置予定を含めると82.5%に達した。
特に豚では、設置率が50%を超えたことは重要な転換点である。長年「飲水設備がないことが一般的」であった状況から、少なくとも半数以上の施設で飲水設備が整備される段階に移行したことを意味する。
幸い、2年間で改善が見られ、その改善スピードも上がる傾向であった。また、今後設置予定と答えた屠畜場も増え、その理由としてあげられるのは、社会のアニマルウェルフェア意識の向上とともに、異常気象とも言える夏の酷暑。
近年設置または設置予定の屠畜場からは、アニマルウェルフェアへの考え方や、動物が暑さで衰弱または死亡したケースがあるといった話も聞かれ、改善にあたっての強い思いがあったを感じることができた。
また、現在設置のない屠畜場でも、「経営的に厳しい状況で、今後飲水設備を設置します、と今言うことはできません。ただせっかく今日お電話をいただいたので、今後検討議題にしたいと思います。お互いに動物のために前向きに話し合う姿勢をとりましょう。」と前向きな回答をしてくれる屠畜場もあった。多くの場合、経営上の苦しさを理由にするケースが多く、「そういったものに助成金がでるといいんですけど…」といった要望が聞かれた。
この状況は依然として国際基準と比較すると十分とは言えない。欧州連合(EU)では、動物福祉に関する規則(Regulation (EC) No 1099/2009)において、屠畜場の待機施設ではすべての動物が常に清潔な水にアクセスできるよう設備を設計・維持することが求められている。つまり飲水設備は任意ではなく、施設の設計要件として制度化されている。
さらに、国際獣疫事務局(WOAH)の「陸生動物衛生規約」においても、屠畜場における家畜の管理では長時間の給水不足を避けることが基本的な動物福祉要件として示されている。これらの国際基準では、飲水は基本的な福祉要件として扱われており、設備の設置は例外ではなく標準とされている。
これと比較すると、日本では改善は進んでいるものの、制度としての最低基準が存在しないため、施設ごとの対応に委ねられていることに課題があると考えられる。
そしてアニマルライツセンターは以下の政策的対応が求められ、すべての動物が屠畜前に最低限の福祉を保障されるよう、国際基準に沿った制度整備を進めなくてはならないと訴えている。
- 屠畜場の待機施設における飲水設備の設置をガイドラインでの規定から、法令等によるより強い基準として格上げし義務化すること
- 国は常時飲水可能な設備の設置期限を設定し、設置を強く促すこと
- 少なくとも部材費程度の補助を国は検討すること
- 屠畜場におけるアニマルウェルフェア監査および情報開示の仕組みを強化すること
Webサイトの「豚の屠畜場47%で、牛の屠畜場22%で水を飲めず苦しむ:実態調査」には、調査結果の詳細が記載されている。
また、アニマルライツセンターでは、4月24日に「署名活動」を開始し、2026年6月10日には東京都芝浦食肉市場に対し、豚の係留所への常設飲水設備の設置を求める陳情を行い、オンライン署名に寄せられた32,061名の声を東京都へ提出した(参照:アニマルライツセンター「ニュース」)。