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農研機構、広島大学、群馬県および東北大学は、2026年7月28日、日本の酪農家から広く収集されている乳中脂肪酸組成を含む乳成分情報等を用いて、乳用牛の消化管内発酵由来メタン排出量を簡易に推定する式を開発したと発表した(参照:農研機構「プレスリリース」)。
メタン排出量の遺伝的改良には、個体ごとのメタン排出量に関するデータを大規模かつ継続的に収集することが必要。ウシのゲップによるメタン排出量を正確に測定するには、チャンバーなどの特別な施設が必要。また、比較的簡便な評価方法としてスニファー法があり、研究機関を中心に普及が進められているが、いずれも呼気のガス分析を行う必要がある。そのため、全国規模でデータを収集するには、呼気を測定できない農家でも利用可能な推定手法の開発が求められてきた。
そこで、農研機構が代表を務める畜産GHG削減コンソーシアムでは、ウシの消化管内発酵による生成物が乳中脂肪酸組成と関係することに着目し、乳中脂肪酸組成を含む乳成分情報からメタンに関する情報を推定する式を開発した。乳成分情報は、全国の半分以上の酪農家が参加している乳用牛群検定で収集されているため、開発した推定式を用いることで、酪農現場においてウシからのメタン排出量を把握することが可能になる。
この成果は、乳用牛群検定で通常収集されている項目からメタンに関する情報を推定できるため、メタン排出の少ないウシの育種改良に向け、メタンに関する記録の大規模かつ継続的な収集に貢献できると期待される。また、農家にメタン排出量等を数値として示すことで、ウシのメタン排出に実感を持ってもらえると考えられる。
1日当たりのメタン排出量の推定では、体重データの有無が精度に影響するため、体重が測定可能な場合は体重を含む式の利用を推奨する。体重が測定できない場合は、産次別の式の利用が適している。
なお、成果の推定式は2つの試験農場のデータに基づいて作成しているため、今後は農家レベルでの適用性を検討する必要がある。また限られた農場のデータ由来であるため、地域の違いなどの飼養条件によって当てはまりが悪くなる可能性もある。そのため現在、全国規模でのデータ収集を進めるとともに、より汎用性および精度の高い推定式の開発に取り組んでいる。
発表論文
- Prediction of Enteric Methane-Related Traits From Body Weight and Milk Composition Traits, Including Ratios of De Novo, Mixed, and Preformed Fatty Acids in Holstein Cows.
- R.Tatebayashi(舘林亮輝・農研機構畜産研究部門)
- A.Nishiura(西浦明子・農研機構畜産研究部門)
- F.Terada(寺田文典・農研機構畜産研究部門)
- T.Tomaru(都丸友久・群馬県畜産試験場飼料環境係)
- T.Obitsu(小櫃剛人・ 広島大学大学院統合生命科学研究科)
- Y.Uemoto(上本吉伸・東北大学大学院農学研究科)
- T.Suzuki(鈴木知之・農研機構畜産研究部門)
- I.Nonaka(野中最子・農研機構畜産研究部門)
- Y.Saito(齋藤ゆり子・農研機構畜産研究部門)
- O.Sasaki(佐々木 修・農研機構畜産研究部門)
- Animal Science Journal 2026, 97:e70219