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北海道大学大学院獣医学研究院の青島圭佑講師、同大学大学院獣医学院博士課程の鈴木玲海氏らの研究グループは、2026年2月12日、イヌの血管肉腫の培養細胞株と患者腫瘍由来異種移植モデル(PDXモデル)を新規に樹立し、グルコース(糖)が乏しい環境下におけるリジンラクチル化の新たな働きを見出したと発表した(参照:北海道大学「プレスリリース」)。
血管肉腫は犬に好発する悪性腫瘍であり、新たな治療法開発のために基礎研究の発展が必要であるが、研究に必要なモデルが限られていることが課題であった。同研究では、イヌの血管肉腫の新規培養細胞株二株とPDXモデル三株を樹立した。これらのモデルは腫瘍本来の特徴を保持しており、血管肉腫の本質を理解する上で有用なモデルになることが期待される。
樹立した研究モデルを用いて、血管肉腫と代謝の関連を調べた。腫瘍細胞はグルコースを主な栄養源とし、その代謝産物として乳酸を産生する。乳酸由来の化学修飾がタンパク質のリジン残基に付く「リジンラクチル化」は遺伝子発現の制御に関わることが知られている。研究では、グルコースが乏しい環境を模した条件で、リジンラクチル化が全体としては減少する一方、遺伝子の「スイッチ付近(転写開始点付近)」へ集積し、グルコース欠乏に応答する遺伝子群の制御に関連することを示した。さらに、その制御にATF4と呼ばれるタンパク質が重要であることを示した。
イヌの血管肉腫はヒトの血管肉腫と共通点が多いとされている。獣医療と人医療をつなぐOne Healthの観点からも、この研究成果は両者における血管肉腫の病態理解と治療法開発に寄与することが期待される。
研究成果は、2026年2月12日(木)公開のFrontiers in Veterinary Science誌にオンライン掲載された。
- Lysine lactylation regulates ATF4-mediated stress responses under glucose starvation in canine hemangiosarcoma
- Tamami Suzuki, Kazuki Heishima, Jumpei Yamazaki, Masaya Yamazaki, Ryohei Kinoshita, Sangho Kim, Kenji Hosoya, Yuko Okamatsu-Ogura, Michihito Sasaki, Peng Xu, Qin Yan, Takashi Kimura, Keisuke Aoshima