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■【寄稿】JICAパラグアイプロジェクト「家畜衛生対策及び動物由来食品検査サービス向上プロジェクト」-(2)

2025-11-27 15:06 掲載 | 前の記事 | 次の記事

プロジェクトの概要

独立行政法人国際協力機構(JICA)プロジェクトとして、厚生労働省からパラグアイ国に派遣されている角野敬行先生にプロジェクトのことや現地事情などを紹介をいただくことになりました。1~2か月のインターバルでの掲載を予定しています。(編集部)

角野敬行〔パラグアイ国立家畜品質・衛生機構(SENACSA)〕

プロジェクトの紹介

私たちのプロジェクトの名称は、「家畜衛生対策及び動物由来食品検査サービス向上プロジェクト」(PROJECT FOR IMPROVING SERVICES FOR ANIMAL HEALTH AND SAFETY OF FOODS OF ANIMAL ORIGIN)です[1]。パラグアイの家畜衛生と食品衛生に関するプロジェクトであり、実施機関はパラグアイの独立行政法人の1つであるパラグアイ国立家畜品質・衛生機構(Servicio Nacional de Calidad y Salud Animal:SNEACSA)です。実施期間は2023年10月から2027年10月までの4年間と設定されています。

本プロジェクトはJICAの「技術協力プロジェクト」の1つであり、一定の成果を一定の期限内に達成することを目的とするため、その具体的な技術協力の内容は、あらかじめJICAとカウンターパート(SENACSA)との間で合意した協力計画に明記されています。我々JICAプロジェクトチームは、この計画に基づき一体的に実施、運営する必要があります。

本プロジェクトは、求められる成果が3つから構成されています[参考:図1]。成果1は「動物由来食品の安全性検査および提携ラボに対する監査機能が向上する」、成果2は「SENACSA関係総局と関連機関の連携のもと、動物由来食品の安全性検査データが効率的に解析・管理・共有される」、そして、成果3は「動物用医薬品の適正使用に関するSENACSAの指導機能が強化される」です。これらの成果は、安全な食肉の生産という大きな目的に向けて、以下のように一連の流れで密接に繋がっています。

  1. 農場での動物用医薬品の適正使用(成果3)
  2. と畜場での適正な検査とトレース(成果2)
  3. 公的検査ラボでの正確な検査(成果1)

プロジェクト名のとおり「家畜衛生」と「食品衛生」が関わるプロジェクトです。

各成果には、その成果が達成できたかどうかを判断するため、指標が設定されています。例えば、成果1(動物由来食品の安全性検査および提携ラボに対する監査機能が向上する)に対する指標は、次のとおり4つの要素より構成されています(2025年11月時点。なお、xxの部分はプロジェクト実施中に設定する)。

  1. 残留物質及び病原性微生物の検査に係るSOP(標準作業手順書)が更新・整備される。
  2. 提携ラボの検査能力を監査するためのSOPが更新される。
  3. トレーナーによる研修が少なくともxx回実施される。
  4. SENACSA検査ラボにおいて、国家認証機関により認証された試験項目の数が5からxxに増加する。

さらに、これらの指標を得るための具体的な「活動」も設定されています(2025年11月時点)。

  1. 残留物質と微生物の検査を行うラボの技術力の向上及びDIGESETECと共に実施する提携ラボに対する監査能力の向上のための計画を策定する。
  2. TOTを実施し、トレーナーとなる職員とともに教材と標準手順書(SOP)を作成する。
  3. DIGELABの残留物質・微生物の検査能力において、プロジェクト目標の達成に必要なものを強化する。
  4. トレーナーが実施する職員研修を支援する。
  5. トレーナーとなる職員と共に、移転された技術を含む検査ラボ業務の内部精度管理のためのモニタリングを定期的に実施し、改善策を講じる。
  6. DIGELAB、DIGECIPOA、DIGESETEC、DIGESIT間の調整を促し、と畜場の衛生管理(活動2)と国の残留物質管理プログラムへの反映のための残留・微生物検査結果の共有化を図る。

このように、JICAは、プロジェクトの目標、成果、活動等を示した概要表(PDM:Project Design Matrix)を作成し、そのプロジェクトの計画・実施・評価という一連のサイクルを循環しながら運営管理をしています。また、このPDMを用いるプロジェクトの管理手法をPCM(プロジェクト・サイクル・マネジメント)といい、JICAでは1994年から開発援助プロジェクトに正式に導入されています[2]。

先述したように本プロジェクトは実施機関としてパラグアイの独立行政法人のSENACSAが設定されています。JICAが実施している「技術協力プロジェクト」は開発途上国の課題解決能力と主体性(オーナーシップ)の向上を促進する目的があります。このことからパラグアイ側の主体的な取り組みを重視しているため、実施機関のメンバーを含むプロジェクトメンバーを設定しています、本プロジェクトメンバーには、SENACSA総裁や各総局長が含まれており、PDMの活動をSENACSA及びJICA側と協働で進めています。

引用文献

§シリーズ

JICAパラグアイプロジェクト「家畜衛生対策及び動物由来食品検査サービス向上プロジェクト」