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■「人とペットの災害対策ガイドライン」の改訂に向けて議論が始まる 環境省

2025-10-30 16:04 掲載 | 前の記事 | 次の記事

検討会の様子。向かって右奥から平井潤子委員、加藤謙介委員、西村裕子委員、左奥は杉本昌英委員、その隣は小澤 正先生。遠山 潤委員はオンライン参加

環境省は、2025年10月29日、東京都内の会議室で『「人とペットの災害対策ガイドライン」の改訂等に係る検討会(第1回)』を開催した。

ガイドラインは、自治体等が地域の状況に応じた人とペットの災害対策を検討する際の参考とするためのもので、2011年の東日本大震災の経験を踏まえ2013年に「災害時におけるペットの救護対策ガイドライン」が、そして2016年の熊本地震の経験を踏まえ2018年に改訂版の「人とペットの災害対策ガイドライン」が策定された。

2024年の令和6年能登半島地震等における対応状況を検証した上で、今回、新たにガイドラインが改訂される。2026年1月上旬までを目途にさらに2回の検討会を行い、2月予定の4回目の検討会で新たなガイドライン案を作成し、3月の新ガイドライン策定を目指す。

今回の検討会ではオブザーバー参加した公益社団法人石川県獣医師会 小澤 正 常務理事、いしかわ動物愛護センター 杉浦文恵 担当課長、石川県健康福祉部薬事衛生課 中野未来 主任技師から令和6年能登半島地震時の報告があった。次いで環境省は、議論を進める上でのたたき台となる以下の4つの課題を提示した。

1.関係機関との連携

    • 防災部局と動物部局との連携が不十分
    • 都道府県と基礎自治体との連携・体制づくりが不十分(災害対応は基礎自治体、ペット対応は都道府県等という施策体系の違いなど)
    • 自治体と民間団体等との連携が不十分
  • 論点:関係機関の連携を円滑に進めるためにはどのような内容・工夫が必要か。

2.災害の種類や状況

    • 災害の種類による避難行動等の違い
    • 季節による避難行動や受入れ準備の違い
    • 発災からの時間の経過による避難所のあり方の変化
    • 社会的・地理的条件による違い(自治体、飼い主等)
  • 論点:災害の種類など様々な状況を見据えてどのような内容・工夫が必要か。

3.情報周知・情報収集

    • 避難所運営者等へのペット対応に関する情報周知が不十分
    • 同行避難やペット飼養可の避難所についての情報周知が不十分
    • 同行避難者に関する情報収集が困難
    • 自宅避難者等の被災者のペットに関する情報収集が困難
  • 論点:円滑な情報周知・情報収集のためにはどのような内容・工夫が必要か。

4.その他

    • 同行避難/同伴避難/同室避難等の用語の整理
    • 避難所統合時のペット同行避難者の移動手段
    • 物資等の備蓄場所の確保・物資等の輸送方法
    • 都市部の災害時における帰宅困難者のペット対応
    • ペット連れ専用避難所の位置付け(1.5 次避難所以降)
    • 島嶼部等での避難対応
    • その他不足している観点
  • 論点:上記課題についてどのような内容・工夫が必要か。

次いでフリートークに近い形式で話し合われ、検討委員や環境省から次のような発言もあった。

  • 現在の「人とペットの災害対策ガイドライン」はとてもよくできており大事なことはきちんと書いてある。改訂に向けての課題もすでに盛り込まれているようなものもある。ガイドラインをより活かしていくためには、だれが何を担当し必要なことをどう具現化していくかが分かるようなガイドラインにしていくための議論が必要ではないか。
  • 自治体職員の担当者が代わることは常にあることで、ガイドラインの内容がスムーズに伝わるためには、新しい担当者がすぐに理解できるような「見せ方の工夫」が求められるのではないか。
  • ガイドラインと現場との解離が縮まるようにしていくことが必要である。
  • 人の災害支援を支える看護師のように、愛玩動物看護師の活動についても盛り込み、経済面を含め活動への支援体制を整えて欲しい。愛玩動物看護師は、動物のことのみならず、飼い主とそれ以外の方とのコミュニケーションの潤滑など、活躍の場が多い人材であろう。
  • 緊急時の中での動物の守り方をガイドラインに盛り込めば、自治体職員には参考になろう。まず人を守り、生き残ることが大切で、ペットはその次にあるということを飼い主が認識できるようなバランスの良いガイドラインが望まれる。
  • 日頃から避難所設置などの訓練が大切で、訓練においても防災部局と動物部局の連携が必要である。
  • できるだけ自宅に近い避難所で、ペットと同行できるという視点も持ってもらいたい。
  • 内閣府では被災地支援における中間支援組織の登録を開始しているが(参考:「被災者援護協力団体の登録制度」)、動物関連の団体もきちんと登録するようにしていくべき。またペットや飼い主は体調に問題のある方より目が行き届き難い面がある。ボランティアにも分かりやすい「避難所におけるペットに関する情報収集の仕方」が整備されれると良い。

また環境省からは、都道府県市区町村の「地域防災計画」「地区防災計画」(「災害基本法」に基づく)と都道府県が策定する「動物愛護管理推進計画」(「動物の愛護及び管理に関する法律」に基づく)をうまくリンクさせる必要があると述べた。

検討会の委員は以下の5名(五十音順、敬称略)。

  • 加藤謙介(九州医療科学大学臨床心理学部臨床心理学科 教授)
  • 遠山 潤(新潟県動物愛護センター 技術専門員)
  • 西村裕子(一般社団法人日本動物看護職協会 理事、一般財団法人 ひと to ペット 理事長)
  • 平井潤子(公益社団法人日本獣医師会危機管理室 統括補佐、公益社団法人東京都獣医師会 顧問、特定非営利活動法人アナイス 代表)
  • 杉本昌英(内閣府 政策統括官〔防災担当付〕参事官-食事支援担当)