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ペットの健康診断を推進する獣医師団体の一般社団法人Team HOPEは、日本臨床獣医学フォーラム(JBVP)年次大会2025(9月27日~9月28日、ホテルニューオータニ)で、「動物病院における犬猫の死亡原因調査の経過報告と今後のデータ活用に向けての考察」を発表した。
飼育されている犬や猫が亡くなる年齢は年々長くなっているようだが、実際にどのくらいで亡くなっているのか、どのような疾患で亡くなっているのか、国内において大規模で継続的な調査は行われていない。
そこで、Team HOPEは、国内2,800件に及ぶ加盟動物病院(全国の伴侶動物分野の動物病院の約28%)のネットワークを生かし、2025年1月~7月にペット動物の死亡原因と死亡年齢などについてのアンケート調査を行った。
今回は、調査結果の一部が公表された。発表は、Team HOPE代表理事の上條圭司先生(ゼファー動物病院グループ 代表)が行った。
- 調査項目:1月~7月に治療中に死亡した犬と猫に関する情報
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- 一般情報(品種、性別、避妊・去勢の有無、飼育方法ほか)
- 死亡時の年齢
- 死因(厚生労働省の人の分類を参考に20に分類)
- データ処理:Microsoft Excellほか
- 統計解析:Mann-Whitney U検定ほか
- 統計処理者:深瀬 徹先生(岡山理科大学)
・死亡年齢
犬では14歳が中央値で(雌雄とも14歳)、最大値は25歳。雌雄差は認められなかった。
猫では13歳が中央値で(雌14歳、雄13歳)、最大値は23歳。雌雄で有意差が認められた。
猫は犬よりも長寿の個体が多いが、比較的若齢(10歳くらいまで)で死亡する個体も多く、全体として犬のほうが死亡年齢が高い結果になっている。
・死亡原因
犬では多い順に、循環器系疾患、新生物、腎尿路泌尿器系疾患、消化器系疾患、神経系疾患、呼吸器系疾患であった。
猫では多い順に、腎尿路泌尿器系疾患、新生物、循環器系疾患、消化器系疾患、内分泌・栄養・代謝性疾患、感染症であった。
上條先生は、猫の死因に新生物が多かったことは意外であったが、犬、猫とも上位3つの項目は同様であり、いずれの死亡原因も早期発見できれば発症を遅らせるなどの対応が可能なものであり、健康診断の重要性とつながる結果であったと述べた。
・犬種の特徴
データは犬種ごとにも解析されており、小型犬の代表としてチワワ(142頭)、大型犬の代表としてゴールデン・レトリバー(21頭)の結果が発表された。
死亡年齢の中央値はチワワが14歳、ゴールデン・レトリバーが10歳で、最大値は両犬種とも20歳であった。
死亡原因は多い順に、チワワは循環器系疾患、腎尿路泌尿器系疾患、消化器系疾患、新生物、神経疾患、呼吸器系疾患、ゴールデン・レトリバーは新生物、循環器系疾患、呼吸器系疾患、神経系疾患、呼吸器系疾患、腎尿路泌尿器系疾患であった。
ゴールデン・レトリバーの死亡原因のトップは新生物であるが、リンパ腫が多い。上條先生は、大型犬は健康診断で超音波検査をルーチンに、年に2~3回は行うことがすすめられると述べた。またリンパ腫は、日本に特徴的かもしれず繁殖の工夫により減らせる可能性があると述べた。
調査は12月を一区切りとし、そのデータの解析を進める。地域、避妊・去勢の有無、給与フード、飼育場所などとの関係も解析していく。
さらに長期的な反復調査においては、公益社団法人日本獣医師会や公益社団法人日本動物病院協会との連携も視野に入れる。
そして、それらの結果が健康診断の有用性を明確にしていくことを目指す。