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農林水産省が2025年9月11日~9月12日に開催した「第66回全国家畜保健衛生業績発表会」では、農林水産省関係機関からの情報提供の講演も行われた。
毎回、発表演題が終了した2日目の午後が講演となり、その時間を使って発表演題の審査が行われる。
講演テーマと情報提供者は以下の通り。
- 米国産繁殖用豚における豚白血病(Bリンパ球性白血病)について
- 上野山 慧先生(農林水産省動物検疫所成田支所動物検疫第1課)
- 新たに配備された移動式レンダリング装置
- 浅野将人先生(農林水産省動物検疫所企画管理部危機管理課中部空港支所名古屋出張所)
- 豚サーコウイルス感染症不活化ワクチン及び豚サーコウイルス2型感染の豚熱生ワクチンの有効性に及ぼす影響の検討
- 一戸夏美先生(動物医薬品検査所検査第一部ウイルス学的検査第1領域)
- 口蹄疫の近年の流行動向と研究紹介
- 森岡一樹先生(農研機構動物衛生研究部門越境性家畜感染症研究領域海外病グループ長)
浅野将人先生は、中部空港支所に2025年3月に新たに配備された移動式レンダリング装置のことを解説した。移動式レンダリング装置は、動物検疫所に4台配備されていたが、新たに1台が追加となった。新装置は株式会社JETが開発・製造し、令和5年度補正予算で導入された。
既存装置との比較では、(1)より大きな設置面積と輸送車両が必要、(2)殺菌ユニットへの投入時に畜体を物理的に破砕しないため、周辺に非加熱の肉片が飛散するおそれが低い、とのこと。また会場からの質問への回答で、「加熱後の臭いは感じない」とのこと。
浅野先生は、「都道府県においては、装置の特性を把握の上、使用については検討されたい」と述べている。
新装置にについては、開発・製造元の株式会社JETが2025年5月13日にプレスリリースを発表している。
2025年2月から納品のための確認試験を行い、要求条件を全てクリアし、3月24日に動物検疫所中部空港支所への納品が完了した。
今回の確認試験では、装置の組立て、畜体の投入、加熱、取り出し、分注、装置の洗浄までの一連の工程を行った。用意した牛の畜体は10t。切断せずにまるごと1頭ずつ装置に連投し、2時間でスラリー化。畜体投入後の本体装置(ERS)の缶体内は80~99℃に到達し、動物検疫所が定める感染性の除去機能、処理能力、安全性など、すべての要求条件を十分に満たしていることが確認された。なお、試験の様子は、動画「畜体(牛)の処理(2025年2月)」(5分20秒)にまとめられている。
株式会社JETは急速発酵乾燥資源化装置「ERS(Environmental Recycling System)」を開発したプラントベンチャーで、新規の移動式レンダリング装置もそれを利用したもの。ERSには「発酵・乾燥」機能があり、その乾燥度合いを機械的にコントロールできる。レンダリング装置にも付属機能として「発酵・乾燥」機能が位置づけられており、約4時間の発酵・乾燥処理を行い、含水率28.9%の生成物が得られたことも確認された。水分の低減は生成物の減容化・減量化に直結し、また発酵により生成物の臭い問題を軽減することも期待できる。