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農林水産省農林水産技術会議は、2024年12月20日、「2024年農業技術10大ニュース」を発表した。
この1年間に新聞記事となった民間企業、大学、公立試験研究機関および国立研究開発法人の農林水産研究成果を候補とし、内容が優れ社会的関心も高いと考えられる成果10課題を農業技術クラブ(農業関係専門紙・誌など30社加盟)の加盟会員による投票を得て選定した。農業技術クラブには文永堂出版株式会社も加盟しており、投票を行った。
選定された「2024年農業技術10大ニュース」は、次の通り。
・TOPIC1 「両正条植え」で縦横の機械除草が可能に!-省力的な機械除草が有機栽培の拡大に貢献
農研機構は、水稲の苗を等間隔の碁盤の目状に植える「両正条植え」の技術を開発した。従来、乗用除草機では一方向の除草しかできなかったが、この技術により、タテとヨコの二方向から乗用除草機が走行できるようになった。
・TOPIC2 「アイガモロボ」でらくらく除草-水稲の有機栽培で除草回数を約6割削減、収量を約1割増加
自動抑草ロボット「アイガモロボ」は泥を巻き上げることで生じた濁りが雑草の光合成を阻害して生育を抑制する。農研機構、株式会社NEWGREEN(旧有機米デザイン)、井関農機株式会社および東京農工大学が、全国各地で2年間行った実証試験で、人が機械を使って行う除草の回数は従来の有機栽培と比べて約6割減少すること、雑草による減収が回避されて収量が約1割増加することが確認された。
・TOPIC3 スラリと直立!りんご新品種「紅つるぎ」を開発-りんご栽培における管理作業を省力化
農研機構は、枝が横に広がらないコンパクトな樹姿(カラムナー性)のりんご新品種「紅つるぎ」を育成した。果実の管理、収穫等の多くの管理作業で作業性が改善され、省力化が可能。カラムナー性と高糖度、良食味を両立した品種の開発は国内初。
・TOPIC4 国内初!農業特化型の生成AIを開発-三重県で実証実験開始 将来的には全国規模で農業情報を提供
農研機構、北海道大学、キーウェアソリューションズ株式会社、三重県農業研究所、株式会社ソフトビルおよび株式会社ファーム・アライアンス・マネジメントは、高度な農業知識を学習させた生成AIを開発し、10月から三重県での実証実験を開始した。インターネット上の情報だけでなく全国の農業機関や生産現場が持つ専門的な情報を収集して、より精度の高い回答を提供することができるようになった。農業特化型生成AIの開発は全国初。
・TOPIC5 餌探しをあきらめないタイリクヒメハナカメムシ-行動特性を生かした天敵昆虫の育成
農研機構は、害虫・アザミウマ類の天敵となるタイリクヒメハナカメムシで、餌となるアザミウマ類が見つからなくてもすぐに飛び立たず、粘り強く探し続ける系統を育成した。あきらめない天敵昆虫を育成することで、作物への定着性を向上させ、害虫に対する防除効果の発揮が期待される。
・TOPIC6 多収大豆品種「そらみずき」「そらみのり」を開発-国産大豆の安定供給や自給率向上に貢献
農研機構は、従来品種より3割以上多収の大豆の新品種「そらみずき」と「そらみのり」を育成した。両品種とも莢がはじけにくいため、コンバイン収穫でも収穫ロスが少なく、豆腐への加工に向いている。栽培適地は「そらみずき」が関東から近畿まで、「そらみのり」は東海から九州まで。
・TOPIC7 ズバッと計算!酪農家向けの飼料設計支援プログラムを開発-最も低コストな飼料メニューと飼料作物の作付け計画を提案
農研機構は、酪農家向けに最も低コストな飼料メニューと飼料作物の作付け計画を同時に提案するプログラムを開発し、GoogleColaboratory上に公開した。目標乳量、頭数、購入飼料の単価、自給飼料の生産費とほ場面積等の前提条件を入力したファイルをアップロードすれば、試算結果が表示される。
- 参考:JVM NEWS 2024-06-19「酪農経営向け「飼料設計支援プログラム」を公開 利用申請を受付開始 農研機構」
・TOPIC8 「ハウスにテグス君」でカラス被害9割減-安価な資材で簡単施工
農研機構は、警戒心が強く見えにくい障害物でも避けるカラスの性質を利用し、ビニールハウスの上部にジグザグ状にテグスを張ることで、カラスにビニールを破られることを防ぐ技術をまとめた。脚立も必要なく、農家自ら張ることが可能。試験では、カラスが開ける穴の数を9割減らすことができた。
・TOPIC9 霜やひょうをピンポイントで予測!高精度の気象予測システムを開発-気象リスクをタイムリーにアラート通知
気象予報を行う株式会社ウェザーニューズは、霜やひょうなど農業で注意が必要な気象の予測情報を提供する新たなサービス「ウェザーニュース for business」を始めた。畑やハウス周辺の1時間ごとの予報を1kmメッシュの高解像度で提供する。頻発化する気象による農業被害の回避への活用が期待できる。
・TOPIC10 「アニマルック」が実現する家畜遠隔診療の新たな形-診療予約管理、診察履歴管理、ビデオ通話による診療等を一括管理
SBテクノロジー株式会社は、スマートフォンなどを通して家畜の遠隔診療を受けることができる新サービス「アニマルック」の提供を始めた。ニーズが高い北海道や沖縄を中心に順次導入される。ビデオ通話も活用し、診療サービスの質を落とさずに遠隔診療の現場への導入が促進されることで、産業動物獣医師不足や農場への病原体の持ち込み防止等にも効果が期待される。