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■JVM賞受賞コメント 並木裕人先生

2024-03-22 15:13 | 前の記事 | 次の記事

並木裕人先生(写真中)、左は指導教員の後藤裕子先生、右は富安博隆先生

日本獣医内科学アカデミー第20回学術大会で研究アワード(JVM賞)を受賞した並木裕人先生にコメントをいただいた。

  • 受賞研究テーマ:
  • 「組織球系細胞株を用いた猫コロナウイルス感染に伴う発現変動遺伝子の解析」
  •  並木裕人(東京大学獣医内科学教室)

この度は、第20回日本獣医内科学アカデミー学術大会にて研究アワードにご選出いただき、誠にありがとうございます。

本研究では、猫伝染性腹膜炎(FIP)の分子病態を明らかにするためには、組織球系細胞を明らかに由来とした細胞株を用いた猫コロナウイルス(FCoV)のin vitro感染系が有用であると考え、組織球系腫瘍由来細胞株に対するFCoVの感染を試みました。ウイルス接種後の細胞にウイルスタンパクが存在し、培養上清中にウイルスRNAが存在することから、感染が成立することが示されました。さらに、FIPの病態にかかわる分子異常がFCoVを接種した細胞株に現れると考え、RNA-seqを用いた網羅的な遺伝子発現プロファイル解析を行い、FCoV接種細胞株においてNF-κB経路の活性化が認められる可能性を示しました。

本研究のスタートは、COVID-19のパンデミックによりコロナウイルスが再注目され、FIPに関する研究をやってみよう!というところからでした。FCoVを使ってさまざまな実験を試みましたが、初めは思うように結果が出ませんでした。そこで、ひとまず実施した細胞株へのウイルス接種でウイルスRNAの増加が認められたことで進み始めたのが本研究でした。

本研究成果が先生方にご評価いただいたことは非常に嬉しい限りでございますが、FIPの分子病態の解明に向けては未だ道半ばです。今後は、本研究テーマを研究室の後輩に引き継ぎ、NF-κB経路が実際に活性化しているかの確認や、その影響の仕方、また感染系を利用したスクリーニング等、本研究を起点にFIPの病態解明や治療成績向上に向けて研究を進めてもらいたいと考えております。