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気仙沼の酪農家、小野寺ファームは、2023年3月24日、「幸せな牛の時代」という畜産ブランドをスタートさせたと発表した。同ファームは、酪農と肉牛飼育の両面で「牛の健康を重視した、持続可能な畜産」を推進している。
小野寺ファームからのメッセージをそのまま掲載する。
霜降り肉の作り方に疑問を抱いた
柔らかな霜降りにするため、日本で飼育されている肉牛の多くは運動を制限されており、また出荷前の一定期間は「ビタミンA不足」の状態で育てられます。肥育の現場で目撃したのはビタミンA不足のために体中の関節が大きく腫れ、目が見えなくなった牛たち。そうまでしてサシをいれたお肉は、果たして「美味しいお肉」といえるのでしょうか?私たちは肉の流通基準に合わせた「高く売るための肥育」に疑問を感じ、その逆を目指そうと思いました。命をいただく瞬間まで健康に生きてもらう。そうして「幸せに健康に生きたお肉こそが美味しいお肉」だと証明していきたいのです。
「アニマルウェルフェア」という言葉が無かった時代から
アニマルウェルフェアとは「動物福祉」の意味で、最近になって日本でも使われるよようになった言葉です。それは「動物が生まれてから死ぬまで幸せに暮らすことに配慮する」という考え方ですが、酪農家で生まれ育った自分にとって牛は家族や兄弟、仲間のようなもの、そもそも牛の健康は絶対でした。それは酪農であっても食肉飼育であっても同じだと思います。そのような価値と実際のお肉の美味しさを知る人が増える、そういう時代を自分たちの手で作っていきたいと思います。
幸せに生きた牛は美味しいと、「きたろう」は教えてくれた
2019年、私たちは乳牛として飼育しているブラウンスイスに黒毛和牛の種を付けて得た雄牛を育てました。「健康に育てた牛はきっと美味しい。そうであって欲しい」という信念のもと、自由に遊ばせて牧草を食べさせ、冬は牛舎に入れて自家栽培した穀物や配合飼料を与えました。急がずに30ヶ月をかけて飼育した「きたろう」は人なつっこく、非常にかわいい顔で、地元の子どもたちにも人気でした。
屠畜した直後は「本当にこれで良かったのか?」という自責の念ですべての動物の肉が食べられなくなった時期もありましたが、やがて「食べてこそ報われるんだ」と思い直しました。そして関わった皆で食べた「きたろう」のお肉は弾力がありつつ柔らかく強いうま味がありました。悲しいけれど嬉しいその味を私は忘れません。
交雑種であり、もちろんA1~A5などの現在の価値基準に合わない牛肉、つまり「規格外」のお肉には価値がつきません。この美味しさ、この価値を伝えていくことは、今は直接ご注文していただくしか方法がありません。
私たちは現在【30ヶ月飼育したミックスの雄牛きたろう】と【60ヶ月飼育したブラウンスイスの未経産牛】をブロックの形で販売しています。今後は、御賛同くださる飲食店や精肉業の方々ともつながりたいと考えております。