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日本全薬工業株式会社は、昨今の牛乳・乳製品の値上げについて、日本の畜産を応援するWEBマガジン「どっこいしょニッポン」内で特集No.373:「牛乳・乳製品値上がり。その裏で何が起こっている? 〜国産の牛乳を守るために知っておいて欲しいこと〜」にまとめ、公開した。静岡県の酪農家、朝霧メイプルファーム・丸山 純さんと一般社団法人Jミルクにインタビューをしたもの。
前代未聞の飼料高騰、生乳増産に力を入れてきた背景、コロナ禍での牛乳余剰、そして乳価が決まる仕組みなど様々な要因と課題が複雑に絡み合っていることが分かった。
記事は前半が朝霧メイプルファーム・丸山 純さんへのインタビュー、後半は一般社団法人Jミルクの内橋政敏専務理事へのインタビューで構成され、牛乳事情がまとめられている。
丸山 純さんのインタビュー記事の一部を紹介する。
- 丸山 今から8年ほど前、2014~2015年にかけて深刻なバター不足が続き、政府は規模拡大に補助金を出すなどして、15年後の2030年までに生乳生産量を780万トン(当時730万トン弱)に増やすことを目標に、生乳増産に向けた取り組みを進めました。僕たちもそうですが、このタイミングで多くの農家が借金をして規模拡大に踏み切りました。
- 乳牛が育って生乳が搾れるようになるまでには約3年かかります。環境を整えるにはそれ以上の時間がかかります。そして予定より早く生産量が需要に追いついたところに、コロナが直撃して需要が激減した、というのが現状です。規模拡大していこうと言った政府もこの状況は予期できなかった。正直誰も悪くないんです。すぐに生産を増やしたり減らしたりできないのが、生き物を扱う酪農が他の業種と大きく違うところです。
- 丸山 コロナの直撃で消費が大きく減り、生乳の減産を強いられている状況に続き、ウクライナ問題や円安が今これまでにない危機を呼んでいます。餌代の高騰です。ここ5年ほど中国で乳製品や肉の消費が高まり、畜産に力を入れるため南米や北米から餌の穀物を大量に輸入し始めたことで国際価格が上がっていたところへウクライナ侵攻、そして円安。
- 配合飼料は2021年4月~6月期には1トン当たり5,500円値上げされ、過去最高と言われましたが、今年7月からはそれを2倍以上上回る1トン当たり1万1,400円値上げされました。これは史上最高の値上げ幅です。
- 丸山 完全に赤字です。今酪農家は本当に苦しい状態です。新たに借り入れして経営を続けるか、ここでやめるかという選択肢を迫られ、この半年だけでも小規模農家や年配の方々が次々と廃業しています。返済が残っていればやめるにやめられない状況でもあります。
丸山さんに実際の牧場の経費を見せてもらった。2020年に比べ、餌代だけでも月に240万円上がっている。そして今年に入って2022年上半期の経費は2020年に比べ、餌代は月に実に430万円、光熱費は215万円上がっている。この3つの経費だけでもひと月700万を超える増額という信じられない事態だ。
7月に爆上がりした餌代価格は、今も下がる気配はない。当然ながら売り上げは変わらないまま(むしろ廃棄回避のため減産を強いられ減少する中)、下半期の経費はさらに大きく跳ね上がる。
- 丸山 朝霧メイプルファームでは、自家製餌を3割使っていて輸入飼料は7割なので、これでもまだましかもしれません。個人酪農家で農地がなくすべて輸入飼料を使っているところは、一番きついと思います。