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■感染モデルとしてのカイコの利用を

2021-02-01 19:10 | 前の記事 | 次の記事

「福岡県“One Health”国際フォーラム2021」の講演で、山口大学の度会雅久先生が「山口大学における医学・獣医学連携のワンヘルス研究拠点」のテーマで講演。分野横断的連携の必要性、医学部と獣医学部の連携、自然宿主と病原体の多様な関係性について述べた。

度会先生は、気候変動や災害、開発などにより病原体は新たな自然宿主と遭遇し、共生能力とともに増殖能力も増強させたのではないか、すなわち自然宿主の多様性が病原体を進化させたのではないかと予測し、研究を進めている。

その実験において節足動物媒介感染症の感染モデルとしてカイコを利用することについて触れた。

カイコ活用の利点として飼育や取り扱いが容易、逃亡のリスクが低い、安価、倫理的問題の対象外、生物学的な基本情報が豊富といったことがあり、マウスに代わる実験動物として注目し、実験系の確立を目指している。

現在、野兎病菌の感染実験にカイコを用いている。カイコの血体腔に病原体(野兎病菌、陰性コントロールとしての大腸菌、陽性コントロールとしての黄色ブドウ球菌)を注入。生存率や体内菌数を測定したところ、野兎病菌はカイコに病原性を示さず、体内菌数は一定を保つ、すなわち共存することが分かった。これにより、マダニ体内での野兎病菌の共生機構の解明を進めている。

度会先生の講演動画は28分58秒