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環境省は、2020年8月12日に「第7回 動物の適正な飼養管理方法等に関する検討会」をTKP新橋カンファレンスセンター ホールで開催した。委員を集めて会議室で行われた。議題は適正な飼養管理の基準の具体化で、東京大学の武内ゆかり先生を座長に2018年3月から2年半、7回の討議を経て、報告書「適正な飼養管理の基準の具体化について」がまとめられた(https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/tekisei.html)。今後は以下のスケジュールで施行となる。また検討会は施行に向けて、基準の解説等を検討していく。
- 2020年秋 中央環境審議会動物愛護部会で基準案の報告、審議
- パブリックコメント(1か月間)
- 2020年内 中央環境審議会動物愛護部会 審議会に答申
- 2021年6月1日 施行
討議されてきたものは、改正動物愛護管理法において明示するように規定された動物取扱業者の飼養管理における遵守基準の具体化で、ガイドラインの作成や具体的な数値。その数値を科学的知見に基づいたものにするために、検討会委員や事務局は膨大な資料と向き合ってきた。第7回検討会では、まず冒頭に小泉進次郎 環境大臣が挨拶を行い、委員の先生方への謝辞の後、改正内容を詳細に述べ、具体的なデータやファクトがまだ不足している面があるとも語った。そして「この取りまとめが動物愛護行政にとって、真の動物愛護の精神に立脚した新たなスタートになるように、これからも共に頑張ろうではありませんか」と締めくくった。
§基準案の3ポイント
- 悪質な事業者を排除するために、事業者に対して自治体がレッドカードを出しやすい明確な基準とする。
- 自治体がチェックしやすい統一的な考え方で基準を設定
- 議員立法という原点と動物愛護の精神に則った基準とする。
改正内容の概略は以下の通り。
基準
- 飼養施設の設備構造・規模、管理関係
- 運動スペース分離型(ケージ飼育等)、運動スペース一体型(平飼い等)それぞれの数値を示した具体的な基準が定められた。複数飼養は、親や他の個体との社会性を養う重要性を考慮するが、個体に外傷が生じるような闘争等が起こる組合せでの飼養は認めない。原則として金網の床材としての使用を禁止する。ケージや訓練場に錆、割れ、破れ等の破損がないことを義務付ける。
- 従業者の員数関係
- 親と同居している子犬・子猫は含めないとして、従業員1人当たり犬の場合は繁殖犬15頭、販売犬等20頭まで、猫の場合は繁殖猫25頭、販売猫等30頭までとする。犬と猫の双方を飼養する場合は、上記を踏まえ、それぞれの飼養頭数の上限を設定する。
- 飼養・保管の環境管理関係
- 動物の健康に支障が出るおそれがある状態(寒冷時や高温時に動物に発現する状態)を禁止する。温度・湿度計の設置を義務付ける。臭気により環境を損なわないように清潔を保つことを義務付ける。自然光や照明による日照サイクルの確保を義務付ける。
- 疾病等に係る措置関係
- 1年以上飼養する個体は、定期的な(年1回)獣医師の健康診断を義務付ける。繁殖個体は、雌雄ともに繁殖に関する診断を受けることを義務付ける。
- 展示・輸送方法関係
- 長時間連続して展示を行う場合には休息ができる設備に自由に移動することが可能となる状態を確保することを義務付ける。ただし、上記の状態を確保できない場合は、6時間おきに休憩(展示を行わない時間)を設けることを義務付ける。輸送後2日間以上その状態を観察することを義務付ける。
- 繁殖回数・方法関係
- 犬の生涯出産回数は6回までとし、かつ雌の交配は6歳まで(満7歳未満)とする。満7歳時点で生涯出産回数が6回未満であることを証明できる場合は、交配は7歳まで(満8歳未満)とする。
- 猫の雌の交配は6歳まで(満7歳未満)とする。満7歳時点で生涯出産回数が10回未満の場合は、7歳まで(満8歳未満)とする。年齢や出産回数にかかわらず、繁殖に適さない個体は交配を認めない。必要に応じて獣医師等による診療や助言を受けることを義務付ける。帝王切開を行う場合にあっては、獣医師に行わせるとともに、実施した獣医師による出生証明書と母体の状態に関する診断書(次回の繁殖に対する指導・助言)の交付を受けることを義務付ける。
- その他(動物の管理)関係
- 不適切な被毛、爪等の状態を直接的に禁止する(被毛に糞尿等が固着した状態、毛玉で覆われた状態、爪が伸びたまま放置されている状態等)。人とのふれあいの実施(散歩や遊具を用いた活動等)を義務付ける。分離型の場合は、1日3時間以上、一体型の基準と同一以上の広さを有する運動スペース等に出し運動させることを義務付ける。清潔な給水の確保を義務付ける。
動物の適正な飼養管理方法等に関する検討会のメンバーは以下の通り(敬称略)。
- 座長:武内ゆかり(東京大学大学院教授)
- 委員:磯部 哲(慶応義塾大学大学院法務研究科教授)
- 加隈良枝(帝京科学大学准教授)
- 佐藤衆介(八ヶ岳中央農業実践大学校畜産部長)
- 渋谷 寛(渋谷総合法律事務所所長、弁護士)
- 水越美奈(日本獣医生命科学大学教授)