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■豚熱発生から2年 防疫対応状況を総括 清浄化を目指して

2020-09-04 15:44 | 前の記事 | 次の記事

飼育豚での発生の経過(資料1より)

飼育豚へのワクチン接種地域(2020年8月31日現在、資料5-2より)

第60回牛豚等疾病小委員会の様子。左は挨拶を述べる伏見啓二 審議官

農林水産省は、2020年8月31日、「食料・農業・農村政策審議会 家畜衛生部会 第60回牛豚等疾病小委員会」(座長 津田知幸先生)を同省の会議室で開催した(当日の配布資料https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/eisei/usibuta_sippei/60/index.html)。

豚熱が発生してからほぼ2年が経過したこともあり、今までの総括、最近の情勢が発表された。

§飼養豚での発生

2018年9月9日の岐阜での初事例以降、愛知、三重、福井、埼玉、長野、山梨、沖縄の8県で58事例が発生。約16万6千頭が殺処分された。

2019年9月24日にワクチン接種を決定、10月15日に防疫指針を改定。10月25日からワクチン接種を開始。

2020年3月12日の沖縄での発生を最後に新規発生はない。

§福島県も飼養豚のワクチン接種へ

ワクチン接種県は現在24都府県(群馬、埼玉、富山、石川、福井、長野、岐阜、愛知、三重、滋賀、静岡、山梨、茨城、栃木、千葉、東京、神奈川、新潟、京都、奈良、沖縄、大阪、兵庫、和歌山)となっている。接種推奨地域内の初回接種はすべて終了している。

福島県は、近接する県の野生イノシシの陽性発見地点、地形要因から接種推奨地域とはなっていなかったが、2020年8月20日に群馬県片品村(県境から20km)で捕獲されたイノシシのPCR検査結果が陽性であったことを受け、福島でも飼養豚にワクチンを接種することとなった。今後、福島県がプログラムを作成し、それを委員会で検討して実施となる。ワクチン接種推奨地域(防疫指針で規定)は拡大設定されることになった。

§野生イノシシのCSF遺伝子検査

47都道府県で実施されている。2020年8月26日時点で、陽性事例は17都府県でみられた。2018年9月13日~2020年8月26日に死亡イノシシ1,859頭、捕獲イノシシ17,651頭を検査し、2,618頭が陽性であった。未発生地域での検査拡充が提言された。

また、検体を利用してASF遺伝子の検査も実施されている。3,836検体で遺伝子検査を実施。すべて陰性である。

§OIEの清浄国からはずれる

日本は2007年4月から豚熱のステータスは清浄国であった。発生から最長2年間の一時停止期間があったが、その間で収束とはならず、2020年9月3日に清浄国ステータスが消失した。この消失により、非清浄国からの輸入解禁要請(台湾からの豚肉の輸入解禁要請など)に対して有利な立場がとれなくなる。

清浄国になるための主な要件は以下の通りであるが、具体的な期限の目途が立つ状況にはない。

  • 過去12か月間、飼養豚で豚熱の発生がない。
  • 過去12か月間、飼養豚へのワクチン接種が行われていない(マーカーワクチンを除く)。
  • 過去12か月間、飼養豚でサーベイランスが実施されている。
  • 感染イノシシが国内にいる場合、飼育豚と野生イノシシの群が適切な措置により分離されている。

§清浄化に向けて

農林水産省では、清浄化に向けて、1.感受性動物対策、2.飼養豚-野生イノシシ遮断対策、3.野生イノシシ対策を3本柱としている。野生イノシシでの豚熱が撲滅しない限り飼育豚へのワクチン接種を止めることは難しいと判断されている。

清浄化ステータスの早期再設定のためマーカーワクチンへの切り替えを検討している。販売されているマーカーワクチンは今回の野外株感染豚との区別が困難で使用できず、動物医薬品検査所での開発が進んでいる。9月2日にはその概要が発表された(https://www.maff.go.jp/nval/tyosa_kenkyu/kenkyuu_20200902.html)。9月14日からオンラインで始まる日本獣医学会学術集会(https://www.meeting-jsvs.jp/163)でも研究発表される。また現行のマーカーワクチンを使用し、より綿密な検査で野外株との区別を行うことも選択肢としておくべきとの意見もあった。

野生イノシシ対策は、1.サーベイランス強化、2.捕獲の強化、3.経口ワクチン散布、4.法改正での対応(サーベイランス、経口ワクチン散布の家畜伝染病予防法への位置づけを2021年4月に施行)など。イノシシへの経口ワクチンも今年度から2022年度の事業で国産の開発が進んでいる。事業を請け負っているのは、農研機構、共立製薬株式会社、県立広島大学。

小委員会ではその他、ASFゾーニングを適用したハンガリーからの生鮮豚肉の輸入再開、フランスにおけるASF発生時のゾーニング適用に係るリスク評価が討議された。

また翌日の9月1日に農林水産省は「農林水産省豚熱・アフリカ豚熱防疫対策本部」を同省内の講堂で行った。会議は非公開。9月2日の日本農業新聞は対策本部での江藤拓農相の発言を記事にしている(https://www.agrinews.co.jp/p51788.html)。