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国立感染症研究所ウイルス部の吉河智城先生は、2019年10月18日、「令和元年度動物由来感染症対策技術研修会」で、SFTSについて講演した。その概要を紹介する。
まず冒頭で国立感染症研究所ウイルス部の各室の担当について触れた。同部には5室があり、それぞれ以下の担当となる。
- 1室→外来性ウイルス
- 2室→節足動物媒介性ウイルス
- 3室→神経系ウイルス
- 4室→ヘルペスウイルス
- 5室→リケッチア・クラミジア
吉河先生は1室に所属する。人のSFTSはその性質からこの室が担当となっている。なお、動物に関しては全て獣医科学部の担当である。
SFTSは中国での発生例が2011年に初めて報告された(N Engle J Med 2011,364:1523-1532)。土着的に発生しているのは中国、日本、韓国、ベトナム(2019年に初例)である。日本では2013年に初例が報告されたが(J Infect Dis 2014,209:816-827, PMID 24231186 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24231186)、それ以前から定着していたと思われる。発生は西日本に偏っているが、東日本でも野生動物の抗体調査から安全とは言い切れない。発症、死亡例は50代以上、特に60代以上が多く、高齢は致命率・発症のリスクファクターと言える。
伴侶動物においては2017年に第1例が発見されて以来、猫120頭、犬7頭で確認され、致命率は猫で60~70%、犬で29%となっている。発症動物から獣医療関係者への感染も確認されているが、それを防ぐには、防護具をきちんと使用するしかない。なお、N95マスクを使用することが望ましいが、それが難しい場合は少なくともマスクは使用すべきで、またアイガードを忘れてはならない。
国際感染症センターのホームページ(https://www.dcc-ncgm.info/topic/topic-sfts/)にSFTSの診療の手引きほか、詳細な情報が掲載されている。
またウイルスがどうやって運ばれているかは不明であるが、吉河先生は「渡り鳥が運んでいる可能性がある」と述べた。
なお、SFTSウイルス名について、最近、名称を定義する国際機関が「Huaiyangshan banyangvirus」と改称したとのこと。