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第15回獣医学教育改革シンポジウム(公益社団法人日本獣医学会と司宰機関である農研機構動物衛生研究部門の共催)が、2019年9月10日、第162回日本獣医学会学術集会において行われた。シンポジウムは2部構成で、第1部は「国際認証取得への道のり」、第2部は「世界標準の獣医学教育-Necropsy/Biosecurity-」。
欧州獣医学教育機関協会(EAEVE:European Association of Establishments for Veterinary Education)の認証取得に関する第1部の演題と演者は以下の通り。
- 「EAEVA認証取得へ向けたVetJapan Southの取り組み」
- 有村卓朗先生(鹿児島大学)
- 「VetNorth Japanの欧州獣医学教育認証への取り組み」
- 川本恵子先生(帯広畜産大学)
- 「酪農学園大学における欧州獣医学教育認証(EAEVE)への取り組み
- 鈴木一由先生(酪農学園大学)
北海道大学-帯広畜産大学共同獣医学課程はVetNorth Japan、山口大学-鹿児島大学共同獣医学部はVetJapan Southと称し、EAEVEの認証取得に取り組んできた。それぞれの連絡・担当係となるリエゾンオフィサーは、苅和宏明先生(北海道大学)、川本恵子先生(帯広畜産大学)、奥田 優先生(山口大学)、有村卓朗先生(鹿児島大学)が務めている。
この両グループは、8年間にわたる取り組みを経て、2019年6月、7月に最終の現地審査を終えている。この後、本審査が行われ、2019年12月11日に結果が出る。シンポジウムでは、有村先生と川本先生は今までの経緯や苦労話などを解説した。人員体制の強化と合理化、施設の新設や改修、カリキュラムの見直しや強化、外部組織との連携強化、学部運営会議への学生の参加、Hands-on実習の強化など様々な改革が行われた。中には痛みを伴う改革もあったり、日本とEAEVEのギャップに悩んだりもしたとのこと。申請の過程で指標が変わって必須となった馬の24時間診療体制づくりに帯広畜産大学はとても苦労したと川本先生は述べた。両先生とも、事前審査の前に行った非公式審査がとても有効であったと述べている。また最終審査においては、学生の審査員もおり、その学生審査員による独自の視点での調査もあったとのこと。
続いて鈴木先生が酪農学園大学がEAEVE認証取得の取り組みを開始したことについて述べた。私立大学として初めての試みである。同大学では先行する4大学やリエージュ大学での情報収集の上、2019年10月28日~31日に事前審査を受けることが決定している。その結果を受けて認証取得を目指すかどうかを大学が判断し、取得を目指す場合は2022年秋の認証が目標となる。
鈴木先生は「EAEVEが求める獣医療は食の安全安心や豊かな暮らしなどであり、同じく国際認証機関である米国AVMAほど臨床の比重が大きくなく、日本の大学に合っていると思う。先行する4大学との大きな違いは学生数である。定員120名に評価基準にあった教育を行っていく体制を整えなければならないが、実現できればその卒業生に大きな武器を手渡して卒業させることができる」と述べた。またこれまでの過程で同大学を評価基準に照らし合わす作業を行ってきたが、「うちの(酪農学園)大学(の素晴らしさ)を見直した」とも語った。
座長の堀内基広先生(北海道大学)は「認証を取得するということだけでなく、大学は継続して教育改善をしていくことができる組織であるべきで、その際には海外の動向をみていくべきであろう。これからも情報を発信していくので、これが日本全体の流れとして進んで欲しい」と述べた。
同じく座長を務めた佐藤晃一先生(山口大学)は「EAEVEは毎年5月~6月に総会が開かれている。会員外でも参加でき、また現地での相談もできる。ぜひ参加していただきたいし、その際には(私が)窓口にもなります」と他大学に呼びかけた。
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