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環境省は2019年9月5日、同省の会議室で「中央環境審議会第51回動物愛護部会」を開催した。
明治大学名誉教授の新美育文先生を部会長とする委員のメンバーは以下に記載してある。
https://www.env.go.jp/council/14animal/meibo14.html
また議事経過と配布資料は以下に記載してある。
https://www.env.go.jp/council/14animal/51_1.html
議題のメインは2019年6月に公布された「動物の愛護及び管理に関する法律等の一部を改正する法律」に関して、同法の施行に向けて、改正の概要の説明と意見徴取などが行われた。その他に「愛玩動物看護師法」の制定についての説明なども行われた。
「動物愛護管理法」の施行は3段階、公布から1年以内2020年6月までに施行する事項、次に2年以内2021年6月までに施行する事項、さらに3年以内2022年6月までに施行する事項とに分かれている。
公布から2年以内に施行しなければならないのは、「環境省令等で定める動物取扱業者の遵守基準」と「出生後56日を経過しない犬・猫の販売規制」であり、3年以内に施行しなければならないのは、「マイクロチップの装着・登録義務等のマイクロチップ関連の事項全般」である。
上記以外については、2020年6月までに施行される。
1年後の施行に向けて、今後、動物愛護部会は2020年3月までに5回開催され、議論を深める。都道府県における指針策定も考慮し、2020年4月の「改正動物愛護管理基本指針」の公布を目指す。
主な改正内容は以下のとおり。
- 動物の所有者等が遵守すべき責任規定を明確化
- 第一種動物取扱業による適正飼養等の促進等
- 登録拒否事由の追加
- 環境省令で定める遵守基準を具体的に明示
- 犬・猫の販売場所を事業所の限定
- 出生後56日(8週)を経過しない犬または猫の販売等を制限
- 動物の適正飼養のための規制の強化
- 適正飼養が困難な場合の繁殖防止の義務化
- 都道府県知事による指導、助言、報告徴収、立入検査等を規定
- 特定動物(危険動物)に関する規制の強化
- 動物の虐待に対する罰則の引き上げ
- 都道府県等の措置等の拡充
- 動物愛護管理センターの義務を規定
- 動物愛護管理担当職員の拡充
- 所有者不明の犬猫の引取りを拒否できる場合の規定
- マイクロチップの装着等
- 犬猫の繁殖業者等にマイクロチップの装着・登録を義務付ける(義務対象者以外には努力義務を課す)。
- 登録を受けた犬猫を所有した者に変更届出を義務付ける。
- その他
- 殺処分の方法に係る国際的動向の考慮
- 獣医師による虐待の通報の義務化
- 関係機関の連携の強化
- 地方公共団体に対する財政措置
- 施行後5年を目途に必要な措置を講ずる検討条項
§幼齢動物の販売
幼齢の犬や猫の販売は2021年6月を目途に、現行の「49日」から「出生後56日を経過しないもの」となる。ただし、天然記念物として指定されている犬(秋田犬、甲斐犬、紀州犬、柴犬、北海道犬、四国犬)は例外規定で、現行の「49日」のままである。
§動物の殺処分
動物の殺処分については、「国際的動向に十分配慮」ということが「動物の殺処分方法に関する指針」に盛り込まれる。委員からは自治体での殺処分方法のみならず、(開業獣医師などによる)安楽死も含めて「動物の死に対する向き合い方」について討議し、世論形成を行っていくべきで、それに当たっては専門家集団である日本獣医師会に期待したいとの発言があった。
§虐待
動物虐待については、罰則が以下の通り厳しくなる。
- 愛護動物をみだりに殺したり傷つけたもの:
- 現行 2年以下の懲役または200万円以下の罰金
- 改正 5年以下の懲役または500万円以下の罰金
- 愛護動物をみだりに虐待したもの。愛護動物を遺棄したもの:
- 現行 100万円以下の罰金
- 改正 1年以下の懲役または100万円以下の罰金
虐待の内容については、従来から認識されていた「積極的(意図的)虐待」に加えて、ネグレクトも虐待に含めることになる。環境省では、虐待について過去の事例から以下のように示している。
- 積極的虐待(やってはいけない行為を行う、行わせる):殴る、蹴る、熱湯をかける、暴力を加える、酷使することなど。身体に外傷が生じる恐れのある行為だけでなく、心理的抑圧、恐怖を与える行為も含む。
- ネグレクト(やらなければならない行為をやらない):健康管理をしないで放置、病気を放置、世話をしないで放置など。
獣医師はみだりに殺された、傷つけられた、虐待されたと思われる動物を発見した場合は、遅滞なく都道府県に通報することが義務化される。委員からは「今までは通報が努力義務だったことも知らない獣医師も多いのでは。これからどのように周知していくのか」との問いかけがあった。環境省からは、「虐待の判断も含めて日本獣医師会の力も借り、自治体とともに検討し、周知していきたい。自治体職員のスキルアップのための研修や情報の共有に務めている」と述べた。また別の委員からは、「県の職員だけで対応していくのは無理がある。市区町村が実際の住民の窓口であり、そこに人員が確保されることが望ましい」と意見した。新美委員長は「獣医師の協力を得るための動きやすい体制を構築すべき」と述べた。