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■愛玩動物看護師の国家資格に向けて 国の取り組み

2019-08-27 18:17 | 前の記事 | 次の記事

 2019年の第198回国会(常会)で犬、猫などの愛玩動物を対象とした動物看護師の国家資格を規定する議員立法の「愛玩動物看護師法」が成立し、同年6月28日に公布された。3年以内、遅くとも2022年6月27日までには施行される。

 この法律を所管するのは農林水産省と環境省。両省ともWEBページ上に今回の法律の解説を掲載している。

・農林水産省「愛玩動物看護師」
http://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/doubutsu_kango/index.html

・環境省「愛玩動物看護師法」
http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/kangoshi/index.html

 本法律について農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課の担当補佐にお話しを伺った(2019年8月21日・農林水産省内にて)。以下に概要を紹介する。

§法律ができた背景

 法律成立の背景や法律の主旨は農林水産省及び環境省の「愛玩動物看護師」のWEBページ冒頭に記載がある。愛玩動物の診療における獣医師と動物看護師のチーム獣医療提供体制の整備や動物看護師によるしつけ等の活動の充実が求められている。今後ますます重要性が増していくことが想定される愛玩動物を対象とした動物看護師の資質向上などを目的に、愛玩動物看護師の国家資格制定ということになった。関係者が動物看護師の教育において、高位平準化に取り組んできたことも背景にある。

 なお、管轄が2省にまたがっているが、通知、省令、政令などのルール作りや運用については、両省で分け隔てなく所管していく。

§スケジュール

 附則第1条ただし書で、法の一部の規定(指定試験機関に係る部分)は公布の日から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行すると規定されている。獣医師国家試験は農林水産省内に獣医事審議会が設置され、国が直轄で国家試験を実施している。愛玩動物看護師国家試験の場合は、国に代わり試験事務を行う機関を指定することができ、その指定を受けた機関が「指定試験機関」である。まずはそれらに関することが省令で決まっていくことになる。

 それ以外については公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日から施行すると規定されており、法律の施行に必要な政令、省令、通知などが今後、決まっていくことになる。法第30条で、国家試験は毎年1回以上行うと規定されているが、附則第7条で施行日の属する年は試験を行わないことができると規定されている。法律が2022年までに施行されることから、その翌年の2023年には最初の国家試験が行われる。

§受験資格

 大学(短期大学を含む。)で農林水産大臣及び環境大臣により指定された科目を修めて卒業した者や都道府県知事が指定した養成所で必要な知識・技能を修めた者などが受験していくことになるが、5年以上の実務経験を有する人たちは、講習会と予備試験を経て受験資格を得る道がある。講習会と予備試験についてもこれから決められていく。

http://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/doubutsu_kango/attach/pdf/index-2.pdf

 本試験、講習会、予備試験などについて詳細が決まれば、両省はスムーズに情報を公開していく。

§愛玩動物看護師の業務の範囲

 獣医師法第17条に「獣医師でなければ、飼育動物(牛、馬、めん羊、山羊、豚、犬、猫、鶏、うずらその他獣医師が診療を行う必要があるものとして政令で定めるものに限る。)の診療を業務としてはならない」と規定されている。ここに指定されている動物種については獣医師が独占的に診るとするものである。愛玩動物看護師法で規定される対象動物は、法第2条で獣医師法第17条に規定する飼育動物のうち、犬、猫その他政令で定める動物と規定されている。その他政令で定める動物は、これから決められていく。

 業務は法第2条で「診療の補助及び疾病にかかり、又は負傷した愛玩動物の世話その他の愛玩動物の看護並びに愛玩動物を飼養する者その他の者に対するその愛護及び適正な飼養に係る助言その他の支援」と規定されている。これらの業務のうち、診療の補助は国家資格を有する者のみの独占業務となる。

 なお同第2条で診療の補助は「愛玩動物に対する診療の一環として行われる衛生上の危害を生ずるおそれが少ないと認められる行為であって、獣医師の指示の下に行われるもの」と規定されている。

 また国家資格であるので当然有資格者の質の担保がなされるべきであるが、獣医師と異なり卒後教育については法律に規定されていない。

インタビューを終えて

 日本獣医師会や動物看護師の養成機関の長年の取り組みにより今回の法律が成立したといっても過言ではないだろう。長年取り組んでこられた関係者の方々に敬意を表したい。

 法第41条では「愛玩動物看護師は、その業務を行うに当たっては、獣医師との緊密な連携を図り、適正な獣医療の確保に努めなければならない」と獣医師との連携について明文化されており、動物病院におけるチーム獣医療が一層進むであろう。よりよいチーム獣医療が社会の要請でもあり、獣医師もそれに応えなければならないと言える。

 国家資格を持たない者は、愛玩動物看護師と混同するような紛らわしい名称は使えなくなる。その例として「動物看護師」が挙げられている。スタッフの名称や業務内容についても獣医師は適正に管理することが必要となる。

 獣医師の責務は増すが、それに応じて社会的評価もより向上するであろう。

(インタビュー・構成:松本 晶)