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ロイヤルカナンジャポンは、2019年7月21日、28日の両日に猫の保護施設(シェルター)を対象とした衛生管理や栄養管理に関するセミナーを実施した。4年目を迎える同セミナーには、21日(日)の大阪会場に56名、28日(日)の東京会場に過去最多となる107名が来場した。
セミナーでは、国内外でのシェルター事情に詳しい帝京科学大学アニマルサイエンス学科准教授の山本和弘先生(獣医学博士)が「アニマルシェルターの感染症対策」について、また、ロイヤルカナンの獣医師の齊藤千絵先生がシェルターでの猫の食事管理や療法食について解説した。
山本先生による講演では、先進事例としてドイツや英国のシェルターの取組みを紹介しながら、集団飼育の施設における感染症対策として、病原菌を「付けない(持ち込まない)」、「増やさない」、「やっつける」の3つの観点から、施設のゾーニング(区域分け)の徹底や、限られた設備で可能な感染した猫の隔離方法、排泄から24時間以内にトイレを片付ける、使い捨て手袋を使うといった具体的な対策について説明した。
また、アニマルシェルターの運営における、保護から、検疫、回復、維持・馴化、里親への譲渡までの各ステップのなかで注意すべきチェックポイントについて、解説した。
さらに、限定された地域で一定期間に疾病が予想以上の頻度で発生する「アウトブレイク」について、日本のシェルターで実際に起こったパルボウイルスの事例をもとに、隔離や消毒といったコントロール方法やワクチンによる予防の重要性について、「シェルターは、人や動物の出入りが激しく、『クロスコンタミネーション(交差汚染)』のリスクが高い。不明な場合は(その動物が)病原菌を持っているという前提で対応することが重要」と山本先生はコメントした。
続いて、齊藤千絵先生による講演では、シェルターでの猫の食事管理について解説。猫の体重を定期的に量り、1週間で2%以上減っていたら速やかに動物病院を受診したほうがよいこと、また、3~5日間以上(個体差有り)絶食すると、エネルギーを作るために脂肪が急激に肝臓に溜め込まれ、命を落とすこともある深刻な病気、「肝リピドーシス」を発症する危険性があることなどを説明した。
猫が餌を食べてくれないケースは珍しくないため、その予防として、
- ストレスを与えないこと、
- 不快な経験と関連して記憶した食物は避けるようになる(食物嫌悪症)などの猫の食性を理解すること、
- 猫のハンターとしての本能的な欲求を満たすためペットボトルや製氷皿などの手作りおもちゃなどを利用しながらフードが食べられるような工夫をする
といった提案がなされた。また食べない場合の対策としては、
- 嗜好性が高く、消化に配慮した高カロリー食などを利用すること、
- フードを人肌程度に温めること、
- 食器の素材や配置を見直すこと
などが紹介された。
さらに、猫に多い下部尿路疾患の症状、特に多頭飼育環境の猫に多い「特発性膀胱炎」の予防として、尿を薄めるために有効なウェットフードの活用や水を飲んでもらうための工夫、おしっこを我慢させないためのトイレ環境についても述べた。
また、ロイヤルカナンでは、今回、猫のシェルター運営者に感染症と衛生・栄養管理について参照してもらう資料として「保護施設にやってきた猫が健康に過ごすためのガイドライン」を制作し、セミナー参加者に配布した。
(資料・写真提供:ロイヤルカナン ジャポン)