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5月21日の「食料・農業・農村政策審議会 第35回家畜衛生部会」では、特定家畜伝染病防疫指針が討議された。
特定家畜伝染病防疫指針は、1.牛疫、2.牛肺疫、3.口蹄疫、4.牛海綿状脳症、5.豚コレラ、6.アフリカ豚コレラ、7.高病原性鳥インフルエンザおよび低病原性鳥インフルエンザの7つが設けられている。指針は最新の科学的知見や国際動向を踏まえて、3年毎に検討され、必要に応じて変更される。
家きん疾病小委員会で議論された「高病原性鳥インフルエンザおよび低病原性鳥インフルエンザに関する特定家畜伝染病防疫指針」と牛豚等疾病小委員会で議論された「口蹄疫・牛疫・牛肺疫に関する特定家畜伝染病防疫指針」の見直し案が承認され、農林水産大臣に答申することとなった。今後、パブリックコメントを経て、改訂されることになる。
主な変更点は以下の通り。
- 高病原性鳥インフルエンザおよび低病原性鳥インフルエンザ:
- 検査のための採材数を増やすことへの変更や採取した全ての検体の一部を検査材料として農研機構動物衛生研究部門に運搬することが明記された。疑似患畜への認定の規定が変更された。
- 口蹄疫:
- 農研機構動物衛生研究部門が実施する口蹄疫に関する研究を国は推進することを明記。都道府県による抗原検出キットの使用に関する条件が明記され、抗原検出キットが陽性となれば疑似患畜とすることが追記された。また発生前の準備、病性判定時、発生後の原因究明など、死体の処置も含めて野生動物対策・対応が明記され、また「野生動物対応マニュアル」が作成された。
- 牛疫:
- 現行ではELISAによる抗原検査が規定されているが、牛疫の撲滅に伴いキットの輸入ができなくなり、国内での製造もないため、指針からELISAが削除された。
- 牛肺疫:
- 家畜防疫員が農場に立ち入る症状として、「複数の家畜の四肢の関節に急速な腫脹がみられ、また、首の前方への伸長及び屈曲が困難である」が追記された。解剖検査時のデジタルカメラで撮影される所見が追記された。
- 牛豚等疾病小委員会 委員長の津田知幸先生は、口蹄疫の防疫指針の変更で「より適切で迅速な初動対応ができ蔓延防止が計られることになる」と述べた。
- 中林正悦 臨時委員(有限会社中林牧場 代表取締役)は、生産者の名誉にかけての発言として、「口蹄疫に関する特定家畜伝染病防疫指針」の基本方針にある「都道府県は、家畜の所有者への指導を徹底するとともに、…」「都道府県の行う家畜の所有者への指導や…」の「指導」という表現は違和感があり、「情報の提供」としたほうがよいと発言した。津田知幸先生も「(早期発見・早期撲滅のためには)農家と都道府県が一体となり取り組み、農家も地域ぐるみで、皆が意識の統一をもつことが大切」と述べた。事務局の動物衛生課は「情報提供に努める」という表現を用いて文章を変更するとした。
豚コレラの防疫指針は、2018年11月にも改訂されたが、発生が続いており、さらに改訂が検討される。またアフリカ豚コレラの防疫指針も改訂が検討される。牛豚等疾病小委員会で検討された後、秋に行われる予定の家畜部会での承認を経て、答申される。主な変更事項案は以下の通り。
- 豚コレラ:
- 農林水産大臣が指定する症状(特定症状)を呈している豚等の届出を受けた際の都道府県の対応を追加。疫学調査のための殺処分前の同居豚等の採材に関する規定の追加。移動制限区域の解除のための検査回数、時期等の検討。移動制限区域内の豚等について、飼養密度の増加等により衛生状態が劣悪になった場合のと畜場への出荷条件の検討。疫学関連家畜および疫学関連家畜飼養農場の範囲および確認検査の再検討。
- アフリカ豚コレラ:
- 遺伝子検査を都道府県の家畜保健衛生所で実施することについて検討。検査を行う場合の具体的な症状、解剖所見等について追記。患畜および疑似患畜の定義の見直し。