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■豚抗病性改善指標の in vitro評価系創出

2019-05-09 20:26 | 前の記事 | 次の記事

研究チームの目指す養豚像
従来のワクチンと飼養衛生管理に加えて、イムノバイオティクスと抗病性育種により病気に強い養豚を実現する。

 2019年5月9日に行われた記者発表で東北大学の北澤春樹先生は、「イノベーション創出強化研究推進事業」に採択された研究課題「豚抗病性改善指標のin vitro評価系の創出」の概要を発表した。

 大きなテーマは「病気に強い養豚を実現する技術開発」。北澤先生らの研究グループは従来より豚のゲノム解析の国際プロジェクトに参画していたが、そこで得られた成果を元に生存率や腸炎発症率との関連が示唆される3つの遺伝子を同定し、また世界で初となる家畜対応型のイムノバイオティクスの選抜・評価系を構築した。しかしこれらの成果をさらに推進していく上での実際的な評価と選択のためには、有用なin vitro(試験管内)解析系が必要である。

 そこで、今回採択された基礎研究では、「豚の自然免疫応答解析を可能とする細胞株の樹立」と「腸管の構造と機能を試験管内で再現するミニ腸管の活用」にまず取り組む。それにより有効性評価が加速できる。基礎研究の目標は、(1)抗病性遺伝子とイムノバイオティクスの病原体感染抑制機能のin vitro評価系の構築、(2)それにより抗病性に関連する3遺伝子について病原体感染抑制効果を確認し、(3)また抗病性サポートするイムノバイオティクス菌株を2株同定することである。それらの成果を得て、選抜による育種などを行い、2028年度以降の事業化と普及を予定している。成功すれば年間約672億円の経済効果があると研究グループは試算している。

 研究グループとそれぞれの分担は次の通り。

・東北大学(研究総括)

  1. 小腸上皮細胞分離培養と評価系への応用
  2. 抗病性イムノバイオティクスの選抜系構築

・農研機構動物衛生部門

  1. 豚ミニ腸管作成方法の確立
  2. 豚病原体を用いた抗病性評価系の構築

・農研機構生物機能利用研究部門

  1. 豚免疫担当細胞の分離培養系の確立
  2. 免疫遺伝学を用いた抗病性評価系の構築

・岐阜県畜産研究所

  1. 抗病遺伝子の遺伝型が異なる豚由来組織の提供
  2. 現場農場における抗病性に関わるin vivoデータの収集