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■【寄稿】書籍紹介『人類の健康はどこへ向かうのか-持続可能な社会を考える健康のサイエンス』書籍紹介兼ねつつプラネタリー/ワンヘルス眺む
- 編著:東京大学医学部健康総合科学科
- 発行:2026年8月4日・東京大学出版会
- 判型・ページ数:B5判・184ページ
- 定価:2,970円(本体2,700円+税)
- 詳細:https://www.utp.or.jp/book/b10160787.html
- 浅川満彦(酪農学園大学名誉教授/野生動物の死と向きあうF/Vetsの会代表)
- mitsuhikoasakawa(アットマーク)gmail.com
本書概要と個人的注目点]
本書『人類の健康はどこへ向かうのか』は三つのパート、すなわちヒトと環境の科学、ひとが生きることを支える科学および社会と人の健康をつなぐ科学と大枠が提示され、各部それぞれに六つから九つの章が包含されている(注:第1・2部で人表記差異、章数は計19、章題は出版元URL目次参照)。編著者の東京大学医学部健康総合科学科は看護師養成等いわゆるコメディカル人材養成や当該領域科学に特化した教育単位で、本書はそこで展開される入門的講義副読本として編集された。
コメディカルとは医師・歯科医師の指示の下に業務を行う医療従事者を指し、comedicかparamedicをヒントにした和製英語で既に厚生労働省厚生白書にも見えるなどすっかり定着した。なお、獣医学/獣医療におけるVetrinary Paraprofessional(VPP)に相当するが、まず、強調したいのはコメディカルのような純粋な(人の)医療系分野で、プラネタリーヘルスという理念が正規教育項目として明記されていた点である。
たとえば、第4章「生態学的健康決定要因とプラネタリーヘルス」(橋爪真弘 国際保健政策学教室教授 担当)の中で、自然環境変化が人間健康やウェルビーイングに及ぼすリスクが論じられ、かつ、そこではワンヘルスに関しても、感染症発生と伝播・拡大に密接に関連すると言及されていた。そして、持続可能な社会形成のためにはプラネタリーヘルス/ワンヘルス相互に補いながら連携する必要性が結論付けられていた(p.29)。両理念が医学系教書上に明記されること自体、稀事だと感じ注目したのだ。ただ、希と書いておいてなんだが、丸善出版から出たばかりの『人類学の百科事典』上でプラネタリーヘルスダイエットという項目を見たばかりであった。その執筆者は「人の未来」研究所附属奥沢診療所 山本太郎 医師。なので、プラネタリーヘルスは医学分野で既に定着した理念で、単に私の認識不足かも。ここ3回、日本臨床微生物学会総会・学術集会に招聘された際、この理念を何度か耳にし、その参加報告を文永堂出版web版JVMに寄稿した拙稿「医学・獣医学・保全生態学の学際分野「保全医学Conservation Medicine」の標的はワンヘルスとして、そのpatientは?-後編」、結語で「ワンヘルス(保全医学)と向き合うと覚悟を決めたのなら地質学的時空間を眺めるような視点で対峙しないとダメ。ましてプラネタリーヘルスならばよりその視点が要る。」と失礼なことを書いた。関係者にとってはさぞや御不快であったと思う。この場を借り謝罪したい。
関連し本書内に記されたワンヘルス的な他の項目探索に戻る。19章「普及と実装の科学-エビデンスを社会に還元する」(佐々木那津 精神衛生・看護学教室准教授 担当)に、軽度風邪症状にある患者様全てに抗生物質投与を反省されていた(p.143)。ご存知のように、抗生物質耐性菌AMR問題は獣医領域においてワンヘルス研究の重要モデルである。新たな医獣連携を期待させるような内容であった。
以上のように、ワンヘルス(およびプラネタリーヘルス)は、感染症コントロールに主眼が置かれる理念で、章題の中には熱帯病やパンデミック等のキーワードが見えるので、是非、御覧いただきたい。
本書刊行時の個人的事情と絡めた雑感
本書は医療関係者のみならず、両理念に関わる獣医師にとっても刺激の源泉となるはずだが、私如き一門外漢がこのような教科書刊行の情報を知ることは不可能であった。だが、東京大学出版会PR誌『UP』上で偶然目にし、幸い、同会・光明義文氏の格別なる御取り計らいで入手し得た。考えるに、光明氏には何度もお世話いただいた。書き手人生の戦友だと勝手に思い込んでいるが、何もお返ししていない。もはや、通り一遍の謝辞では足りないが、忘れないうちに明示させていただく。
個人的なことが続き大変恐縮するが、最後にもう一つ。本書存在を知り得た丁度その時はワンヘルスに関する拙著(浅川・村田 2016)が出た直後であった。
その主題は当該理念の和製漢語保全医学で、本媒体でも御紹介いただいた(「新刊『君たちの保全医学 地球環境を守るために知り・学び・変わる』」)。何しろ耳慣れないワード。数多読者からdeepな疑問・感想等を期待しつつ迎撃準備中であった。その理論武装の具体的な中身とは、新顔の複数類似理念(五十音順)エコヘルス(あるいはエコロジカルヘルス)、グローバルヘルスおよびプラネタリーヘルスとワンヘルスは、古顔のパブリックヘルス(公衆衛生)、さらには獣医学/獣医療でお馴染みのアニマルへルス(動物衛生)等とどの点で決定的に異なるのか!を明確に回答することだった。
複数の近似観念何々ヘルスと青天の霹靂
しかし、この課題を沈思黙考しつつ用意していたまさにその時、身内からの奇襲ともいえる事態で途切れた。2026年夏に突如生じた福岡県議会を巡る一連の問題からワンヘルスへの社会的袋叩きが開始されたのだ。
この原稿と向きあっている現在もワンヘルス批判は続いている。私はnoteという寄稿プラットフォームに時々雑文を載せている。そこで、試しに掲載寄稿文を上記ヘルスの内、五つで検索した(2026年9月19日閲覧)。その結果を参考資料として以下に示し、本稿を閉じたい。事態が起きる前、ワンヘルスはせいぜい200程度であったが、約2か月で5倍となった点は刮目すべきだろう(一方、プラネタリーヘルスの方も900と中々健闘はしているが…)。とりわけ、獣医系で盛んにフューチャーしてきたワンヘルス、これから本書タイトルではないが、はたしてどこへ向かうのか…。
付録 寄稿プラットフォームnote上に寄稿された何々ヘルス関連寄稿数
