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■イヌの薬物代謝の個体差における原因の一端を解明

2026-05-27 15:09 掲載 | 前の記事 | 次の記事

理化学研究所、鹿児島大学、昭和薬科大学、東京大学、日本動物高度医療センター、ITEA株式会社、麻布大学の共同研究グループは、2025年10月29日、119犬種 6,344頭のゲノムデータを網羅的に解析し、イヌの主要薬物代謝酵素であるチトクローム P450(CYP)2B6(CYP2B6)の遺伝子における11種類の遺伝的バリアントを同定し、その遺伝子機能への影響を評価したと発表した(参照:理化学研究所「プレスリリース」)。

研究成果は、イヌCYP2B6における薬物代謝の個体差や犬種差が遺伝的要因によって規定されることを初めて明確に示した大規模研究であり、創薬研究および獣医療の両分野において、種を超えた薬物代謝の多様性理解に新たな道を開くもの。

共同研究グループは、これらのバリアントのうち 275番目のグルタミン酸が欠失するスプライスバリアントや、74、83、145、151番目のアミノ酸が置換するミスセンスバリアントは、麻酔薬プロポフォールの代謝能に影響を及ぼすことを実験的に確認した。また145番目のアミノ酸置換を伴うバリアントでは、分子ドッキング・シミュレーションにより、還元酵素部位に構造的変化を生じ、代謝活性を低下させることが示唆された。

研究成果は、「Drug Metabolism and Disposition」オンライン版に掲載された。

<共同研究グループ>

  • 理化学研究所生命医科学研究センター基盤技術開発研究チーム
  • 桃沢幸秀 チームディレクター
  • 水上圭二郎 研究員
  • 碧井智美 テクニカルスタッフ Ⅱ
  • 理化学研究所生命医科学研究センターファーマコゲノミクス研究チーム
  • 莚田泰誠 チームディレクター
  • 福永航也 上級研究員
  • 鹿児島大学共同獣医学部
  • 宇野泰広 教授
  • 後迫玄城 大学院生
  • 昭和薬科大学薬物動態学研究室
  • 山崎浩史 教授
  • 村山典恵 講師
  • 東京大学大学院農学生命科学研究科
  • 富安博隆 准教授
  • 本阿彌宗紀 特任助教
  • 日本動物高度医療センター
  • 辻本 元 科長
  • ITEA株式会社東京環境アレルギー研究所
  • 阪口雅弘 所長
  • 麻布大学獣医学部小動物内科学研究室
  • 久末正晴 教授

(所属、肩書は2025年10月29日現在)

◆発表者のコメント

福永航也先生

イヌはヒトの薬剤開発における重要なモデル動物ですが、薬物代謝能の個体差や犬種差の要因は十分に解明されていませんでした。今回、私たちは CYP2B6遺伝子の多様なバリアントを特定し、薬物代謝の違いを分子・タンパク質レベルで明らかにしました。この成果は、犬種ごとの安全な薬剤設計に役立つだけでなく、ヒトの薬理遺伝学との比較を通じ、前臨床試験の精度向上にも貢献します。今後、こうした知見を積み重ね、ヒトと伴侶動物双方における精密医療の実現を目指したいと考えています。

宇野泰広先生

イヌをはじめとする動物たちの適正な薬物治療を目指して日々研究に取り組んでいますが、この研究成果は、その目標への重要な試金石となり、動物医薬品の開発や、薬物治療における個別化医療の実現に貢献するものと期待されます。

山崎浩史先生

組換え P450と P450還元酵素を調製し、その酸化酵素の機能解析を行う薬学領域の技術が、獣医学領域においてもこのように共同研究として展開でき、動物病院の獣医さんや飼い主さんたちにも微力ながらも薬学の立場から貢献できることを大変うれしく思います。