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横浜市立大学医学部眼科学 馬場智子医師、目黒 明特任教授らの研究グループは、2026年1月19日、麻布大学 印牧信行名誉教授、髙橋広樹助教との共同研究により、犬の緑内障発症に関与する遺伝子として「SIX6」を初めて明らかにしたと発表した(参照:横浜市立大学「プレスリリース」)。
SIX6遺伝子は人の緑内障における主要な感受性遺伝子として知られており、この結果は、緑内障の発症において、人と犬の間に種を超えた共通の遺伝的背景が存在することを示している。これらの知見は、犬の緑内障の発症予測や早期診断に貢献するだけでなく、人の緑内障の病態解明や新たな治療法開発にもつながる重要な基盤となる。
研究成果は、2026年1月6日、眼科の主要国際雑誌「Investigative Ophthalmology & Visual Science」に掲載された。
- Genetic link across species: SIX6, a major human glaucoma gene, confers susceptibility to glaucoma in Shiba-Inu dogs
- Satoko Baba, Akira Meguro, Nobuyuki Kanemaki, Aoi Maeda, Hiroki Takahashi, Masaki Takeuchi, Lisa Endo, Eiichi Nomura, Jutaro Nakamura, Yuki Mizuki, Shun Kanasashi, Takuto Sakono, Norihiro Yamada, Nobuhisa Mizuki
研究では、緑内障の発症頻度が高い犬種である柴犬とシー・ズーを対象に、SIX6遺伝子が緑内障の発症に関与するかを包括的に検証した。
柴犬109頭(緑内障49、非緑内障60)、シー・ズー57頭(緑内障18、非緑内障39)を対象に、SIX6遺伝子領域を網羅する19か所のSNPを解析した。
柴犬において「rs851962234」と呼ばれるSNPが緑内障と有意な相関を示し、このSNPのリスクアレルを保有することで緑内障の発症リスクを約3.5倍高めることが分かった。
シー・ズーではrs851962234のリスクアレルを保有すること自体が稀であり、このSNPと緑内障との関連は認められなかった。このことは、犬種ごとに緑内障に対する遺伝的背景が大きく異なることを示す。
犬の眼組織におけるSIX6遺伝子の発現解析では、網膜組織で特に高い発現が確認された。SIX6は視覚情報伝達に関わる神経網膜の恒常性維持に重要な遺伝子として知られており、この機能的背景と一致する結果。これらの知見は、SIX6のSNPが網膜神経細胞の脆弱性に影響し、緑内障発症に寄与する可能性を示唆するもの。
今回の研究により、人の主要な緑内障遺伝子であるSIX6が犬においても緑内障の発症に関与することが明らかになった。緑内障の発症頻度が最も高い柴犬では、SIX6の遺伝子のSNP検査(遺伝子診断)を行うことで、若齢期から緑内障の発症リスクを把握し、早期診断や定期的な眼科検査の判断に役立つ可能性が示された。また、今回得られた知見は、人と犬の両者において緑内障発症メカニズムの解明や有効な治療法の開発に貢献することが期待される。
※用語「SNP」:single nucleotide polymorphism(一塩基多型)の略。DNAの特定の一つの塩基が他の塩基に置き変わることで生じる変化で、その塩基配列の置換が生物集団内で1%以上の頻度で存在する場合にSNP(スニップ)と呼ぶ。SNPは最も多く存在する遺伝子多型であり、疾患の罹り易さ(疾患感受性)や医薬品への反応の違いなどに関わることがある。