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公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)は、2025年7月24日、国内でペットとして人気のある9種の爬虫類に関する取引状況をまとめたレポート「問われる日本の責任~日本市場で人気の9種の爬虫類に関する取引調査」を発表した。
爬虫類は、世界的に最も商業利用されている脊椎動物群と言われ、国際的な爬虫類の取引は、今や数十億ドル規模に達している。その一方で規制も研究も不十分なのが現状で、違法取引や乱獲が横行している。世界的にみると日本の爬虫類市場の規模は欧米に次いで大きく、日本は生きた爬虫類の輸入量で世界第2位に位置する(2022年)。
2025年11月に開催されるワシントン条約第20回締約国会議(CITES CoP20)では、過剰な利用を防ぐため、ペット目的で利用されている爬虫類も複数が附属書掲載提案をされている。爬虫類のペット利用は日本も大きく関わっているため、WWFジャパンはこの度、日本で人気の爬虫類9種に関する取引に焦点をあてた調査を実施した。
§調査概要
- 調査時期:2025年3月
- 対象種:日本市場で頻繁に観察される爬虫類9種
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- コバルトツリーモニター Varanus macraei
- サバンナモニター Varanus exanthematicus
- サルバトールモニター Varanus salvator
- クロヨロイトカゲ Cordylus niger
- ネッタイヨロイトカゲ Cordylus tropidosternum
- アカメカブトトカゲ Tribolonotus gracilis
- モトイカブトトカゲ Tribolonotus novaeguineae
- トッケイヤモリ Gekko gecko
- ホルスフィールドリクガメ Testudo horsfieldii
- 分析手法:上記9種の取引状況を把握し、以下の調査・情報解析を行った。
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- 国際取引動向(日本の位置づけ):
- UNEP-WCMC CITES取引データベース(2000~2023年)
- 日本の市場取引:
- オンラインスポット調査(2025年3月12~18日、41ウェブサイト)、実地スポット調査(ナゴヤレプタイルズワールド、2025年3月29日、90業者以上)
- 違法取引状況:オープンソースの押収データ
- 商業的な繁殖の可能性:
- 学術文献、オープンソースの情報
日本は調査対象となった9種の爬虫類のうち、6種が輸入量で世界トップ5に入っており、そのうち4種は輸入量が世界第2位だったことが明らかになった。これは、日本が国際的な爬虫類取引において非常に重要な市場であることを示している。
クロヨロイトカゲは、種としての合法的な輸入の記録が一切ないにもかかわらず、国内で流通していることが判明した。
絶滅危惧種であるコバルトツリーモニターは、生息国インドネシアの法律で野生捕獲個体は輸出が認められていないにもかかわらず、「野生捕獲」と記載された個体が日本市場に流通していることが確認された。野生で捕獲された個体が、ロンダリング(合法的に輸出可能な繁殖個体であるとして偽って取引されること)されている可能性も明らかになった。
トギアンモニターなどのサルバトールモニターの旧亜種については、生息国による輸出が報告されておらず、「サルバトールモニターの亜種」と偽って輸入している可能性がある。
ワシントン条約未規制種のアカメカブトトカゲとモトイカブトトカゲの野生捕獲個体が大量に流通していることが明らかになった。モニタリングがなされないまま捕獲割当が増加するなど、過剰利用されている可能性が高い。
日本の爬虫類ペット市場の拡大が、野生動物の過剰・違法な取引を助長し、種や生態系に影響を及ぼすことが強く懸念されている。調査結果は、日本が国際的な爬虫類取引において責任を負っていることを示すと同時に、持続可能で合法的な取引を保証する市場へ早急に変容する必要性を明らかにしている。
WWFジャパン 自然保護室 野生生物グループの若尾慶子さんは以下のコメントを発表した。
日本の爬虫類ペット市場を長年モニタリングしていますが、依然として合法性や持続可能性に疑問がある取引がなされ、かつ市場が拡大していることは甚だ遺憾です。野生動物の取引に関与している事業者には、生物多様性回復の重要性が叫ばれる今日において、取引による合法性の担保はいうまでもなく、透明性のある、野生の個体群に悪影響を及ぼさない持続可能な取引の実現を期待します。
日本のワシントン条約管理当局・科学当局(経済産業省・環境省)においても、持続可能な野生動物の利用を声高に主張するだけでなく、輸入国として、合法性や持続可能性に疑義がある場合は、輸出国に照会する、ロンダリングを防ぐためのサイズ制限を導入するなど、生物多様性の損失を防ぐ努力をさらに支援し、国際条約における日本のコミットメントを果たすため、積極的にその責任を果たすことを求めます。
- WWFジャパン活動記事:
- 「問われる日本の責任:CITESCoP20を前に9種の爬虫類取引調査から見えてきたこと」