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■動物園生まれのイヌワシの野生復帰へ「南三陸イヌワシ野生復帰プロジェクト 実施計画書」が国のイヌワシ保護増殖事業計画の適合認定を受ける

2025-07-23 15:22 掲載 | 前の記事 | 次の記事

「南三陸イヌワシ野生復帰フォーラム」

公益財団法人日本自然保護協会と南三陸地域イヌワシ生息環境再生プロジェクト協議会は、2025年7月16日、「南三陸イヌワシ野生復帰プロジェクト 実施計画書」が「種の保存法」の規定に基づく国のイヌワシ保護増殖事業計画に適合している旨の認定を環境大臣から受けたと発表した(参照:日本自然保護協会「プレスリリース」)。「南三陸イヌワシ野生復帰プロジェクト 実施計画書」は、動物園で生まれたイヌワシを南三陸地域で野生下に復帰させるために策定した計画。

同計画は、2023年8月に設置した専門家を含めたワーキンググループが、国内外のガイドラインに則り、(1)野生復帰の必要性の検討・評価、(2)野生復帰の実施可能性の検討・評価、(3)実施計画をとりまとめたもの。

今後、2026年6月頃に予定している動物園で生まれたイヌワシの第1回目の野生復帰に向けて本格的に準備を開始する。同計画は、2029年までに3回の野生復帰を予定している。併せて、2014年から10年以上にわたり取り組んできたイヌワシが狩りをすることができる環境の再生を継続していく。

イヌワシは、環境省第4次レッドリストにおいて絶滅危惧ⅠB類に分類される絶滅危惧種。かつて、南三陸地域に4つがいが生息していたが、2009年以降、次々に消失し、現在つがいが確認されていない。全国的にも、生息環境の悪化等による分布域の縮小、繁殖成功率の低下およびつがい数の減少が確認されている等、本種の安定的な存続が危ぶまれる状況にある。

同計画で実施されるイヌワシの野生復帰は日本初の取組み。野生復帰技術の確立や、イヌワシの生存率・分散についての知見の蓄積、イヌワシ個体群の補強など、イヌワシの保全を進めるための多くの重要な成果が期待できる。

イヌワシ野生復帰ワーキンググループは以下の通り(敬称略、肩書は2023年8月時点)。

  • 井上剛彦(極東イヌワシ・クマタカ研究グループ代表)
  • 小松 守(秋田市大森山動物園長)
  • 佐藤太一(株式会社佐久 専務取締役)
  • 出島誠一(公益財団法人日本自然保護協会)
  • 内藤アンネグレート素(京都市動物園 日本学術振興会特別研究員PD)
  • 山崎 亨(アジア猛禽類ネットワーク会長)
  • 鈴木卓也(事務局、南三陸地域イヌワシ生息環境再生プロジェクト協議会長)
  • 野口将之(事務局、公益財団法人日本自然保護協会)

また、東日本大震災以降、南三陸地域は自然環境の保全を重視した地域づくりを推進してきた。イヌワシの生息環境再生も、官民の森林管理者が連携し、地域の林業振興や多様な森林利用の推進と併せて取り組んできたもので、同計画は生物多様性の回復と同時に、地域産業の振興を目指した日本のネイチャーポジティブ実現に寄与する取組みとなっている。

同計画を説明するフォーラムが南三陸町で開催される。

§南三陸イヌワシ野生復帰フォーラム~イヌワシ・アゲイン!野生復帰への挑戦

  • 日時:2025年7月30日(水)18:30~20:30
  • 場所:マチドマ
  • 南三陸町役場1F
  • 内容:
    • なぜ南三陸で野生復帰が必要なのか?
    • 鈴木卓也(南三陸地域イヌワシ生息環境再生プロジェクト協議会)
    • 南三陸イヌワシ野生復帰プロジェクトについて
    • 野口将之(公益財団法人日本自然保護協会)
  • 参加費:無料(事前申込み不要)
  • 主催:南三陸地域イヌワシ生息環境再生プロジェクト協議会、公益財団法人日本自然保護協会
  • 共催:南三陸町、南三陸町教育委員会