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麻布大学は、2025年6月20日、獣医学部動物繁殖学研究室の影山敦子特任助教、柏崎直巳教授、伊藤潤哉教授と岡山大学、徳島文理大学、理化学研究所、東京大学、マサチューセッツ大学の共同研究グループが、マウス卵子を用いた研究により、受精後の正常な胚発生には卵子内への亜鉛の取り込みが重要であることを明らかにしたと発表した(参照:麻布大学「プレスリリース」)。
現在、不妊症が大きな社会問題となっており、体外受精などの生殖補助医療技術が不妊治療に用いられているが、出産まで至る割合は低いことが知られている。体外受精後の受精卵(胚)が途中で発生を停止することや染色体異常を起こすことなどが原因と考えられているが、詳細は明らかとなっていなかった。一方で成人女性の約半数が、必須ミネラルの一つである亜鉛が不足した状態であり、亜鉛が体内で不足すると妊娠しにくい状態をもたらすことも知られているが、亜鉛の詳細な役割はわかっていなかった。
同研究グループは、卵子内の亜鉛の役割に着目し、卵子の細胞質内に取り込まれた亜鉛が、受精後の正常な胚発生に欠かせないことをマウス卵子や個体を用いた解析により、世界で初めて明らかにした。研究成果は、米国の国際学術誌「eLife」に2025年6月3日付で掲載された。