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■ランピースキン病の防疫対策強化へ 農林水産省

2025-03-28 17:01 掲載 | 前の記事 | 次の記事

農林水産省は、2025年3月26日、食料・農業・農村政策審議会「第71回家畜衛生部会」を省内会議およびオンラインで行った。議題は「ランピースキン病の発生と対応」と「令和2年度の家畜伝染病予防法の一部を改正する法律の施行の状況」。

ランピースキン病は、2024年11月6日に福岡県で初事例がみつかった後、福岡県と熊本県で22例の発生がみられた。2025年2~3月に発生はみられていないが、韓国での発生状況や、ベクターであるハエ、蚊、ダニの活動が盛んになる時期を迎えるにあたり予断は許さない状況である。

同疾患は「届出伝染病」であり、「家畜伝染病」と異なり、まん延防止のための殺処分や移動制限などへの強制的な対処はできず、今回の発生事例でもまん延防止措置は支援や指導にとどまり、自主淘汰がスムーズにいかない事例がみられた。そこで、同疾患を「家畜伝染病予防法」の「第62条の疾病の種類に指定」としてもよいかどうかが今回の部会で問われ、了承された。第62条の疾病の種類に指定されれば、期間を限定して、「家畜伝染病」と同等の防疫対応が法的に可能となる。

今後は、家畜衛生部会の牛豚等疾病小委員会で、見直しの方針の議論が進められ、都道府県への意見照会、パブリックコメントを経て、結果を家畜衛生部会に報告。諮問への答申を得て、政令を改正する。7月下旬を目指している。

今回の部会会議においては、「殺処分の対象はどのようになるのか」「予防的にワクチンを接種することはできないか」「農家の現場に情報はいっているのだろうが、知らない農家も多い」「農家のメンタルケアにも留意して欲しい」「動物園動物への対応はどうなるのか」などの意見があった。

なお、3月19日に行われた第4回ランピースキン病対策検討会の議事は以下の通りまとめられている。

  1. 昨年11月に国内で初めて発生したランピースキン病について、防疫対策要領に基づいた防疫対応を検証した。
  2. 発生直後から行った、発症牛の自主とう汰、同居牛等の出荷自粛、ワクチン接種、ベクターである吸血昆虫対策等は、まん延防止対策として、それぞれ有効と考えられた。
  3. 一方で、自主とう汰への協力が得られず、発症牛が地域に残存したことや、発生農場や周辺地域でのワクチン接種の遅れが、発生拡大につながったと考えられる。
  4. このため、今後の防疫対策を強化するためには、発症牛のとう汰を含め、必要な措置を発生地域で迅速かつ確実に実施できるようにすることが必要である。
  5. なお、今回のウイルスは従来想定していた吸血昆虫だけでなく、牛間の接触などでも感染が拡大した可能性が考えられ、感染力が高く短期間のうちに地域で拡大していることから、感染拡大を防ぐためには、発生初期から強制力のある措置を行うことが必要である。
  6. また、これから吸血昆虫の活動が盛んになり、発生リスクが高まることから、改めて吸血昆虫対策を徹底することが望ましい。
  7. 本病に関する防疫対応等については、今後も必要に応じて、これまで得られた知見や今般の発生状況等を踏まえ、速やかに検討していくこととする。

・「家畜伝染病予防法」第62条

家畜その他の動物について監視伝染病以外の伝染性疾病の発生又はまん延の徴があり、家畜の生産又は健康の維持に重大な影響を及ぼすおそれがあるときは、政令で、動物及び疾病の種類並びに地域を指定し、1年以内の期間を限り、第3条の2、第5条から第12条の2まで、第3章の規定及びこれに係るこの章の規定並びに第4章の規定(第36条の2の規定を除く。)の全部又は一部(家畜以外の動物については、第5条から第12条の2までの規定を除く。)を準用することができる。

2 農林水産大臣は、前項の政令の制定又は改廃の立案をしようとするときは、食料・農業・農村政策審議会の意見を聴かなければならない。