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■JCVIM2025 「研究アワード」受賞コメント 長尾乙磨先生

2025-03-18 16:23 掲載 | 前の記事 | 次の記事

長尾乙磨先生と愛犬のアルル

日本獣医内科学アカデミー第21回学術大会で研究アワード(文永堂出版アワード)を受賞した長尾乙磨先生にコメントをいただいた。

受賞研究テーマ:

「正常胆嚢および胆嚢粘液嚢腫罹患胆嚢由来オルガノイドを用いた陰イオンチャネルの機能評価」

長尾乙磨(東京大学獣医内科学研究室)

このたびは、第21回日本獣医内科学アカデミー学術大会にて研究アワードにご選出いただき、誠にありがとうございます。また、本大会の準備、開催にご尽力いただいた実行委員の皆様、審査員の皆様、文永堂出版の皆様に心より感謝申し上げます。

私が研究を行ってきた「胆嚢粘液嚢腫」は犬において頻発する胆嚢疾患であるものの、その発症機序は未だ特定されていません。これまで複数の疫学研究が行われており、私の所属する獣医内科学研究室からも発症のリスク因子を報告してきました。また、症例の胆嚢組織を用いた研究により、胆嚢粘膜上皮での陰イオンチャネル機能の低下が発症に関与する可能性を私たちは報告しています。しかしながら、それらのリスク因子と胆嚢粘液嚢腫発症の関連を検討できる実験系が存在しないことが、病態解明への大きな障壁となっていました。

そこで私が着目したのが、臓器由来幹細胞から作り出される「オルガノイド」でした。本研究では世界で初めて犬の胆嚢オルガノイドを作製し、陰イオンチャネル機能の評価を行いました。その結果、胆嚢粘液嚢腫由来オルガノイドにおいて陰イオンチャネル機能の低下が示され、その発症との関与が強く疑われました。今後は胆嚢オルガノイドを用いて、陰イオンチャネル機能低下の原因の特定、発症リスク因子と陰イオンチャネル機能の関連を探索していく必要があります。

私はこの春、東京大学を卒業し、新たな挑戦としてアメリカで人医学研究のポスドクとしてのキャリアをスタートします。人医学研究で培った技術と知見を活かし、将来的には再び獣医学研究に貢献できるよう邁進していきたいと考えています。