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■細胞寿命を半永久化した馴化培地でウシ体外受精卵の品質向上 農研機構

2025-01-29 17:57 | 前の記事 | 次の記事

開発したシステム

不死化ウシ卵管上皮細胞。左:通算細胞分裂回数21回、右:161回(不死化とされる少し手前)

ウシ体外受精卵の作出の流れと本成果の活用ポイント

農研機構は、2025年1月10日、高品質なウシ体外受精卵の作出に適した馴化培地を安定生産できるシステムを開発したと発表した(参照:農研機構プレスリリース「細胞寿命を半永久化した馴化培地の開発によりウシ体外受精卵の品質向上に成功」)。

§発表論文

このシステムが成立するために不可欠な3つの要素、(1)不死化牛卵管上皮細胞株の樹立、(2)馴化培地による発生促進効果の確認、(3)馴化培地に含まれる有効因子の分離という課題をそれぞれ解決した。体外受精卵の品質向上による受胎率の向上につながる技術として期待される。

体外受精卵による受胎率は30年以上40%程度に留まっており、体外受精卵による受胎率向上が長年の技術的課題。そのためには、体外受精卵を母胎内での受精環境に近い環境で培養することが有効な対策の一つと考えられており、その方法として、受精の場である卵管から採取した卵管上皮細胞を増殖させて作製した培地(馴化培地)を利用することが試みられてきた。しかし、培養した卵管上皮細胞の寿命が短いため、培地を安定生産することが根本的な課題であった。

今回農研機構は、細胞の寿命を半永久化した不死化ウシ卵管上皮細胞(不死化細胞)株を樹立し、この細胞株を使った馴化培地を持続的に生産するシステムを開発するとともに、作製した馴化培地に体外受精卵の品質を向上させる効果があることを確認した。

受精卵の品質の判定には、既存の報告で最も有効と考えられる受精後2日間の正常な発生様態に基づく「四指標」(①卵子と精子を同じ培地に入れてから27時間後までに第一分割が始まっている、②31時間後に2細胞期である、③31時間後に断片や突起がない、④55時間後に8細胞期以上である)を採用し、不死化細胞による馴化培地によって四指標を満たす受精卵の割合が増加すること、さらに馴化培地中に含まれる物質のうち、超遠心分離したときに沈降する物質を他の培地へ添加しても四指標の達成を促進する効果があることを明らかにした。この沈降物は培地添加物として受精卵生産の現場でも利用しやすいと考えられる。