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■高病原性鳥インフルエンザウイルス 6週間で4種類の遺伝子型のウイルスが侵入 農研機構

2025-01-29 17:40 | 前の記事 | 次の記事

2024年シーズンの流行初期(10~11月)に国内の家禽から分離されたHPAIウイルスの遺伝子型分類と発生分布

高病原性鳥インフルエンザが猛威をふるっている。農研機構は、2024年シーズンの国内の家禽で発生した11事例目までのウイルスゲノムの遺伝子型を発表した(参照:農研機構プレスリリース「2024年シーズン初期に家きんで検出された高病原性鳥インフルエンザウイルスの特徴」)。

遺伝子型は4種類に分類され、4シーズン連続して検出されている1種類の遺伝子型に加え、新たに3種類の遺伝子型が含まれていた。シーズン初期の6週間で4種類の遺伝子型のウイルスが家禽に侵入していることになる。

2024年シーズンは、10月17日に家きんでシーズン初となる高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)の発生が報告され、2025年1月22日までに42の家禽飼養施設で発生している。

農研機構は、2024年10月の初発から11月末までの6週間に家禽で発生した11事例から分離されたH5N1亜型HPAIウイルス計11株の全ゲノム解析を行い、4種類の遺伝子型(G2d-0:8株、G2d-5、G2d-6、G2c-13:各1株)に分類されることを明らかにした。

遺伝子型G2d-0は2021年シーズン以降、国内で4シーズン連続して検出されている。また、9月30日に北海道の野鳥から検出されたウイルスも同型。これらのウイルスは2024年シーズンに渡り鳥によって運ばれてきたと推測される。

その他3種類の遺伝子型は、2024年シーズンに新たに同定された遺伝子型で、一部の遺伝子分節が国内外の野鳥で検出された鳥インフルエンザウイルスやHPAIウイルスに由来していた。これは、カモなどの野鳥集団で感染を繰り返すことで、HPAIウイルスに遺伝子再集合が起こった結果、新たに出現したと考えられる。

また、2024年シーズンに分離された遺伝子型G2d-0の代表ウイルス株について、鶏の自然感染経路である経鼻接種による感染実験を行ったところ、高い致死性を示し、病原性はこれまでのシーズンに分離された同型株と明確な差異は認められなかった。

2024年シーズン11月までに分離されたウイルス株の推定アミノ酸配列解析の結果、代表的な抗ウイルス薬への耐性および哺乳類でのウイルス増殖に関連する変異は見つかっておらず、これらのウイルス株が直ちに人での流行を引き起こすリスクは低いと考えられる。

秋に国内で越冬する渡り鳥により持ち込まれたウイルスは、渡り鳥の間で春先に繁殖地へ北帰するまで保持され、渡り鳥の移動にともないウイルスも国内の各地に移動すると推察される。このような状況を踏まえ、発生の低減に向けて、国内家禽飼養施設へのウイルス侵入防止対策の徹底と疾病の早期発見に一層努める必要がある。

農研機構は、「動物衛生高度研究施設においてHPAIウイルスのウイルス学的性質に関する研究を迅速に推し進めることで、診断体制を含む国内の高病原性鳥インフルエンザ防疫体制の一層の強化につなげます」とコメントしている。