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■乳生産記録から簡易に乳用牛のエネルギーバランスを推定する式を開発 農研機構/北海道立総合研究機構

2024-12-19 16:43 | 前の記事 | 次の記事

個体のエネルギーバランスを推定する式

農研機構と北海道立総合研究機構は、2024年12月17日、共同で日本のホルスタイン種泌乳牛のエネルギーバランスを簡易に推定する式を開発したと発表した(プレスリリース「乳生産記録から簡易に乳用牛のエネルギーバランスを推定する式を開発」)。

ホルスタイン種牛は乳量が多いことで知られているが、乳生産には非常に多くのエネルギーを必要とする。1日当たりの乳量は分娩後から2~3か月後(泌乳前期)にかけて一気に増加するが、食べる量は急には増えないため、餌からのエネルギー供給が必要量に追いつかず、エネルギーバランスが負に傾く。このような負のエネルギーバランスは乳用牛の健康に悪い影響を与え、ケトーシスなどの周産期病のリスクを高めるとともに、繁殖性の低下にも繋がるとされている。しかし、酪農現場でのエネルギーバランスの測定は個体ごとの採食量を把握する必要があるなど、手間がかかるため困難である。

同研究では日常的に収集されている乳用牛群検定記録を用いて、個体のエネルギーバランスを推定する式を開発した。また、この式から算出したエネルギーバランス推定値を用いて遺伝的な能力推定を可能にした。推定されたエネルギーバランスは初産の泌乳前期には親からの遺伝の程度を示す遺伝率が十分大きく、遺伝的な改良が可能である。

さらに遺伝的に泌乳前期のエネルギーバランスが悪い牛は繁殖性が低い牛であることを明らかにした。すなわち泌乳前期のエネルギーバランスを遺伝的に改良することで、繁殖性の向上が期待できることがわかった。今回の成果により、エネルギーバランスが良い個体の選抜や交配による遺伝的な改良の推進が期待される。

  • 発表論文
  • A Nishiura, O Sasaki, T Tanigawa, A Kubota, H Takedaand, Y Saito.
  • Prediction of energy balance from milk traits of Holsteins in Japan. https://doi.org/10.1111/asj.13757
  • Animal Science Journal. 2022.93:e13757.
  • A Nishiura, O Sasaki, T Yamazaki, S Yamaguchi, K Hagiya, S Nakagawa, H Abe, Y Nakahori, Y Saito, R Tatebayashiand, Y Masuda.
  • Genetic relationship of energy balance predicted from milk traits with fertility in Japanese Holsteins. https://doi.org/10.1111/asj.13968
  • Animal Science Journal. 2024. 95:e13968.