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福岡県では、ワンヘルスセンター設置へ向けての構想が具体化している。福岡県は、ワンヘルスの課題に対応するための拠点「ワンヘルスセンター」の設置を発表していた。県のWebサイトには専用ページ「ワンヘルスセンター」も設けられた。
「保健環境研究所」と「動物保健衛生所」が中核施設となるワンヘルスセンターは、みやま市の保健医療経営大学跡地に2027年度中に開設される予定。2024年度末までに設計を終了し、2025年度から2027年度にかけて、建築、外構の工事を行う。
人の健康や環境保全に関する調査・研究を行う「保健環境研究所」が移転・建設され、家畜、愛玩動物、展示動物、野生動物の保健衛生を一元的に担う「動物保健衛生所」(筑後家畜保健衛生所)が新設される。ワンヘルスの専門家の育成も行っていくことになるが、福岡県の獣医師求人広告の内容は、それを見据えたものとなっている。
2024年5月28日に行われた「令和6年度第1回福岡県ワンヘルス推進協議会議事録」から新施設の概要を紹介する。
・保健環境研究所
保環研研究棟、ワンヘルス棟、屋外のワンヘルス体験、学習・研究ゾーンからなる。
研究棟の設計は1月に終了。地上6階建ての免震構造。環境配慮のため「ZEB Ready」以上を目指し、災害時の安全性を考慮したBCP(business continuity plan)対策を実施するものとなる。取り扱う検体や保管される情報の重要度に応じて、セキュリティレベルが区分される。
ワンヘルス棟は、旧保健医療経営大学の既存建物を改修し、屋内のワンヘルス体験学習ゾーン(仮称)や保健環境研究所とワンヘルスセンターの管理部門が置かれる。研究棟とは2階渡り廊下でつながる。
屋内のワンヘルス体験学習ゾーン(仮称)は、生物多様性豊かな1960年代の筑後地域の里地里山および田園・掘割地帯の景観・生態系を再現する。生物多様性保全の観点からの調査研究やワンヘルスの教育・啓発を実施する。
・動物保健衛生所
筑後地域の家畜保健衛生業務は従来どおり継続し、新たに、県内の愛玩・展示・野生動物を対象に、人獣共通感染症、薬剤耐性菌、家畜伝染病の調査・研究等の動物保健衛生業務を行う。
動物を診療する診療獣医師からの保健衛生の相談に対応するほか、保健環境研究所をはじめとする関係機関と連携し、ワンヘルスに関する県民への教育や普及啓発等のワンヘルスの推進を行う。
人獣共通感染症、薬剤耐性菌、家畜伝染病の検査に必要な検査室を整備する。バイオセーフティーの確保のため、検査室等は家畜とそれ以外の動物それぞれ専用に設け、検査材料や職員の導線の分離で施設内の交差汚染を防止し、また、消毒、廃棄処理、排水処理を適切に行い、周辺環境に影響を及ぼさないようにする。
庁舎は、耐震性、耐火性能、耐浸水性を確保し、緊急時の安全性確保や機能継続に対応するほか、防疫敷材、備蓄倉庫を整備し、家畜伝染病発生時の迅速な初動防疫に備える。
職員の作業導線を考慮したり、安全な検査体制のための機器、例えば、大動物搬入のためのクレーン等の整備など、労働安全衛生に配慮した職場環境とする。職員の連携の強化のため、全職員共有の執務室とする。
建物は鉄筋コンクリートの3階建て。3階は機械室となる。付属建物として、車両消毒ゲート、公用車車庫、廃棄物保管庫、駐輪場を設置し、延べ床面積は約3,000平方メートル。
旧保健医療経営大学の既存建物を改修し、防疫資材、備蓄倉庫および会議室を整備する。
環境への配慮として太陽光発電を設置し、エネルギー消費効率の高い空調機械、断熱材や断熱効果の高いガラスを採用。彫りの深い窓や庇で直射日光が室内に入るのを軽減する。できるだけ自然光を採り入れ、明暗を感知して照度を調整する照明システムや人感センサーで点灯する照明等を採用する。
災害対策として、庁舎の耐震性能を十分に確保し、停電に備えて非常用電源を設置し、72時間稼働できる燃料を備蓄する。