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浅川満彦
酪農学園大学
2024年11月15日の北海道新聞・読者投稿欄に藤巻裕蔵氏(帯広畜産大学名誉教授)からの投書「地域猫 小動物の脅威にも」が掲載された。非常に刺激的な内容であったので、皆様、特に北海道在住の皆さんに様々な思いを惹起させたのではと想像する一方、現在でも藤巻氏が「舌鋒鋭く、なおも衰えず」と確認させて頂き、個人的には安堵した。
さて、1993年に「北海道獣医師会雑誌」(37:119-123)に藤巻氏による「野生動物の保護と救護を考える」が掲載された。30年以上の北海道獣医師会々員歴である方々のうち、野生動物の救護にいささかでもご関心があるのならば、鮮明に憶えていらっしゃるかと思う。この前年、日本獣医師会は「野生動物等救護対策事業」を正式に発足させ(日本獣医師会.1992.野生動物の救護について.獣医畜産新報45:165参照)、また、(当時)環境庁も各自治体に「鳥獣保護センター」設置を指示した。このような救護活動への強大な追い風が吹きまくっていたにも関わらず、敢えて、水をさすようにこの活動の問題点を理路整然と指摘されたが、これはあたかも今回の投稿と類似しているようだ。
まず、「地域猫活動」は、それ自体素晴らしく、一点の陰りもない行為のはずだったが、実は野生小動物を盛んに捕食し、自然生態系に強い負のダメージを与えている危険性があるとのこと。この意見を目にし、動物好きである数多くの当該新聞読者は、さぞや暗い気持ちになったであろう。加えて、昨今、動物愛護法が強化され、それが追い風にもなったと考えられるが、長年の悲願であった道立愛護センターも設置された。要するに大変盛り上がっている最中、水を浴びせた点で、前述した救護の流れに類似しているのである。
続けよう。ご指摘のようなノネコ(ノラネコおよび飼ネコも含め)が与える影響は全世界の鳥類生態学、外来性哺乳類学、保全生態学などの研究者がもはや常識として語っている。一方、投書にあったように、無軌道な増殖をしないようそのようなネコには不妊去勢術が施されている。ならば、少なくともこの活動には、どこかで獣医学・獣医療が関わっていることは皆さんも気が付いたはずだ。もちろん、それにはお金もかかるから、税金も投入されているのだろうとも容易に想像しよう。そうなると、活動のゴーサインはかなり高次の決定機関(環境省・道庁など)により出されたと御考えになるのは自然である。
読者の方にお願いを。関連行政機関や一般の方々など広範に呼びかけ、「地域猫活動」をあまり深刻なものととらえず、気軽に話せる語り場をどなたか設けていただけないだろうか。またぜひともこの記事を拡散していただきたいものである。