HOME >> JVM NEWS 一覧 >> 個別記事
日本獣医倫理研究会(JAMLAS)第27回研究会が、2024年11月10日に行われ、能登半島地震で被害を受けた動物病院による緊急報告が行われた。
講演したのは石川県七尾市の希望の丘どうぶつ病院の山口 潤先生と新潟市西区のこばり動物病院の水上浩一先生。
希望の丘どうぶつ病院は能登半島の七尾市にある。高台にあり、かつ駐車場が広く、震災後の1月1日から余震がある程度は減った1月3日までは私設の避難所のような状態であった。特に動物連れの方が多く、山口先生は飲料水、食料、トイレのケアをしつつ、自院の片付けを行った。1月4日にはスタッフ全員と連絡がとれ、病院の方針や方向性を話し合い、病院を継続していくにあたっては、災害動物医療研究会などを通じて触れていた事業継続計画(BCP)が大いに役立った。
3月まではがむしゃらに動いて毎日を過ごし、特に最初の2晩は徹夜の状態。やがて気持ちは茫然自失、そう状態、幻滅などの経過を辿った。
能登半島の復興はまだまだで復旧にもいたっていないのが実情。動物病院は内壁や外溝に被害が出ているが、工事業者の目途すら立っていない。そのような中、山口先生は診療以外の時間は復旧のボランティア活動に費やしているとのこと。
こばり動物病院のある新潟市西区は液状化現象が起きた地帯。こばり動物病院も25cmほど傾いてしまった。建物にひびはなく自動ドアも作動している状態であったが、被災建築物応急危険度判定で「危険」と判定された。実際には建物の使用禁止などにはならず、駐車場に設置したコンテナの仮設診療所で獣医療を続けたのち、建物の床の傾斜を修繕して、現在は使用している。
水上先生の震災後の状態は、1週目はがむしゃらに動き、2週目には疲れに気づいた。3週目には進まない行政対応に心がくじけそうにもなり、4週目になり自身の考えをまとめたとのこと。廃業も頭をよぎったが、動物病院の継続を決めた。やはりお金は重要であり、少なくとも最初の1か月をやりくりする資金を持っていることが必要だろうとのこと。「なりわい再建支援補助金」は、申請手続きが複雑で手こずる。被災証明書は容易に発行されるが、「罹災証明書」の発行はなかなかなされなかったとのこと。公益社団法人日本獣医師会の義援金を受け取るにも「罹災証明書」が必要だった。
地面の液状化により下水が壊れ、復旧していない地域もあり、トイレが使えずに仮設トイレを置いている住宅もあるのが現状。