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■シンポジウム「口蹄疫再考」日本獣医学会

2024-09-19 17:33 | 前の記事 | 次の記事

シンポジウム「口蹄疫再考」の座長を務めた帯広畜産大学の山田 学先生と小川晴子先生

第167回日本獣医学会学術集会では、2024年9月13日、司宰機関(帯広畜産大学)企画のシンポジウム「口蹄疫再考」が開催された。

2000年に宮崎県と北海道で口蹄疫が発生した際は、事前に中国や韓国で発生があった。昨年、韓国で口蹄疫が発生している(「アジアにおける口蹄疫の発生報告状況」)。この状況のなか、2000年に発生があった十勝の地で、口蹄疫の現状やその特長、発生当時の状況と対策、現在の防疫体制についての討議がなされた。

発表演題と演者は以下の通り。

  • 近隣諸国における口蹄疫の現状と対応
  •  深井克彦先生(農研機構動物衛生研究部門)
  • 口蹄疫の早期摘発のための臨床症状と肉眼病変、組織学的特徴
  •  山田 学先生(帯広畜産大学)
  • 2000年に発生した北海道十勝の口蹄疫について
  •  三上祐二先生(元十勝家畜保健衛生所、共立製薬株式会社)
  • 口蹄疫の水際防疫と防疫資材について
  •  吉田英二先生(農林水産省動物検疫所)

深井克彦先生は、口蹄疫の特長として感染力の強さを第一にあげた。臨床症状が発現する前にウイルスの排出が始まり、全ての排泄物や分泌物にウイルスが存在することがその大きな理由。また、7種類の血清型のうち、血清型Cは2004年のケニア発生以降発生がなく、研究者間では「血清型Cは撲滅したかもしれない」との話がでているとのこと。その他、近隣諸国の状況として、2023年の韓国の事例、2022年に32年ぶりに発生となったインドネシアの事例などを紹介した。

山田 学先生は、口蹄疫の詳細な特長を豊富な病変、病態の写真とともに紹介した。発熱においては、足までが熱くなることに注意を払うべきとのこと。境界明瞭な水疱形成が病態の特長であり、口腔内、吻部、蹄周囲皮膚などにできる。舌にもできるが、なぜか舌の裏にはできない。ウイルスは表面に感染し、水疱の表面のみが剥がれる。その部分の出血はほとんどなく、炎症反応もない。水疱の液体や上皮中にウイルスが存在し、診断に利用される。瘡蓋の中にもウイルスはしばらくあり、抗原陽性となる。

三上祐二先生は、2000年に本別町で発生がみられた際、十勝家畜保健衛生所の所長を務めており、その対策を取り仕切った。講演では、輸入粗飼料などの疫学調査を始め、発生から清浄化までの流れや防疫資材の経費などについて詳細に紹介した。また、その後に起こった「口蹄疫損失補償等賠償事件」のことにも触れた。

吉田英二先生は、国の検疫体制を具体的に紹介した。近隣諸国からの出国時の注意喚起には、国外航空会社の協力を得ているとのこと。国内で感染症が発生した際の防疫支援も動物検疫所の役割のひとつ。都道府県の装備を補うということで、大型の防疫資材や口蹄疫、鳥インフルエンザのワクチンを備蓄している。利用する場合は、都道府県は動物検疫所の横浜本所に連絡する。また職員の派遣も行う。

装備されている大型資材は以下の通り。

  • 電気殺処分機
  • 移動式レンダリング装置
  • 移動式焼却炉
  • 盛土用法面保護資材
  • 泡殺鳥システム
  • 除染テント
  • 広域防除機
  • 移動式(組立式)車両消毒機